Turn61.勇者『目的地へ』
「はぁー! 空気が美味しいねぇー」
駅に下り立った園田紫亜が大きく伸びをしながら深呼吸をする。
「おい。油売ってないで、なんか荷物持てよ」
伊達村信がムスッとした表情で紫亜を窘めた。
紫亜は不服げに口を尖らせる。
「いいじゃないのー、別に。大自然に感動する時間をくれたって……」
「まだ自然の多いところに辿り着いてねぇだろう!」
コンクリートの壁に覆われた駅のホームからは山の頂きがちょこんと見える程度であったので、伊達村が突っ込む。
「えー、力があるんだから、男の人が運べばいいじゃないのー」
「働かざる者、食うべからずだ!」
伊達村が顔を真っ赤にして怒鳴るので、紫亜はチェッと舌打ちをしつつも、布袋の一つを手に取った。
「誰よ、あんな堅物を呼んだの。空気悪いわ……」
紫亜のボソリとした呟きに、すぐに隣に居た伊達村が「聞こえてるぞ!」と反応する。
そんな二人のやり取りを見て、僕は不知火に尋ねたものだ。
「あの二人、仲悪いの……?」
「まさか! 幼馴染だから、仲良いくらいだよ。だいたい、伊達村を誘ったのは紫亜さんだし」
「ああ、そうなんだ」と僕は頷いた。喧嘩するほど仲が良いと言う奴であろう。
「おーし。じゃあ、キャンプ場に行って、西崎さんと合流するとするぞ!」
両手に荷物を抱えた伊達村が仕切り、僕らはキャンプ場を目指して移動することにした。
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