Turn31.勇者『現実世界の異人たち』

 恵の言葉に、僕は目を丸くしてしまう。

 思考が停止し、思わずこの言葉を繰り返す。

「この世界の人間じゃない……?」

「う、うん」

 僕の唖然とした態度が、恵には予想外だったようだ。もっと共感を受けるとでも思っていたようで、途端に困ったような表情になってしまう。

「あ、でも、分からないなら、大丈夫だから……」

「まさか、君も魔王に何かをされたのかい?」

「君も? 魔王……やっぱり!」

 恵は僕の言葉に、瞳を輝かせた。どうやら、彼女が求めていた答えを僕は口にしていたらしい。


 そして──恵の目が潤んだ。

──かと思えば、大粒の涙が彼女の瞳からボロボロと溢れた。

「えっ!? どうしたの!?」


「勇者……様……」

 恵は泣きながら、僕の手を取って跪いた。

「どうぞ、私をお助け下さい。勇者様……」


 突然、恵が泣き崩れたので、僕は相当に焦ってオドオドとしてしまうばかりだった。

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