第132話 念願の普通。
セザーリア六日目。今日はヨシヨシのお務めがお休みです!
「休みだァー!」
「わ〜い!」
「ノノ母様ぁ、遊ぼ〜?」
「こらこらアルペちゃん、違うでしょ? 私は母様じゃなくて、姉様でしょ? ね?」
「………………?」
「……? ノノ母様、どうしたのぉ〜?」
「ちくしょう! 本気で何言ってるのか分からないって顔して! つぶらな瞳がっ、この……! て言うかクルリちゃんまで母様って呼ぶしッ!?」
「「ノノ母様ぁ〜♡」」
お部屋でのんびり朝八時。私は早速可愛い双子ちゃんから言葉のノックアウトされた。
なんで? なんで私は母様と呼ばれるん?
「ねぇルルちゃん、なんでかなぁ?」
「ノンちゃんが悪い。あれは頭おかしくなるって、あたしはちゃんと言ったのに」
「いや、だってさ、いつも通りに抱き締めて、頭をよしよーしって撫でてるだけだよ?」
「違う違う違う! もうそこから違うもん! よしよーしの所だけ声がぜんっぜん違うもん! なんでノンちゃん無自覚なのっ!?」
「えぇ、いや、まぁちょっと優しい気持ちでよしよーしって言ってるけどさ、そんなもんじゃない?」
「怖い怖い怖い! あたし段々ノンちゃんが怖くなって来た!」
「えやだ悲しいつらい。ルルちゃんまって、怖がらないで? 怖がられたら、またヨシヨシしちゃうよ?」
「やだぁー! あれ、本当に洒落にならないからねっ!? それに、ノンちゃんが『撫で撫で』じゃなくて『ヨシヨシ』する時って、なんかこう、魂が直接触られてる感じがするんだよ! それがネームドスキル入るともっと強くなるの! あとあと、ノンちゃんは自分をお母さんじゃないって自分で言うのに、何でちょいちょいお母さんになろうとするっ? 何でなの! なんか最近ノンちゃん、ちょっとおかしいよ!」
「え、いや、だって、その時はちょっと楽しいんだもん。甘えてくれるルルちゃん可愛いし。……ヨシヨシ楽しくない? ルルちゃんもやってみれば?」
て言うか、ルルちゃんもズルくない? やだーって言うくせに、昨日の夜は結局また、私にヨシヨシされたくなって甘えて来たじゃん。
なんで私だけおかしい人みたい言うのさ。
「て言うか、魂が触られるって何?」
「えっとね、こう、……分かんない。どう言えばいいの?」
「いや、私に聞かれても……」
「あのね、ノンちゃんが『ヨシヨシ』の方をする時はね、こう、頭とか背中を撫でられてても、胸の奥とか、頭の中とかを直接触られてるような、そんな気持ちになるの」
「…………え、こわっ。それ、痛いの? 辛い?」
「ううん。なんか、凄い気持ち良いの。えと、えっちな感じじゃなくてね? こう、幸せな感じで、すっごい気持ち良いの。でも、気持ち良すぎて頭が変になるんだぁ。えと、幸せ過ぎて、死にたくなる感じ?」
な、なんだそれは。私はヨシヨシで、いったい何を成してるんだ?
こわっ、なに? 幸せで死にたくなる? それは天使なの? 悪魔なの?
いやいやいやいや、ルルちゃん流石に言い過ぎでは? お話し盛ってない?
「タユは別に、いいと思うけどなぁ……」
「ほらルルちゃん、タユちゃんはヨシヨシしても普通じゃん。やっぱり私がおかしい訳じゃないよ」
「違うよ! タユ先生は元々すっごく甘えるじゃん! 慣れてるだけだよ!
うん。まぁ、それはね?
私もビックリしてる。
「ねっ。代償がこんなに軽くなるなんて、ビックリだねっ?」
「本当だよね。私、正気の
「…………うちの子たちって、マトモなの
三人でしみじみする。
私が昨日の晩に、
それでも、ただ代償が消えた訳じゃなくて、代償を糧にする効率が凄まじく上がった状態なのだ。
なおかつ私のヨシヨシによって生じるらしいバブみ? を代償に変換してるおかげで、ちゃんと代償は食べれてる。だから飢えの心配は無い。
そんな訳でまぁ、今日の私って、凄い久しぶりに下着が乾いてるんだよね。凄いよ、パンツって本来ならこんなにサラサラだったんだね?
あ、
そして、まぁその代償解放の代償として、
私以外って言うのは、自分に代償解放のオギャりバフを付けられないからだ。私が発動者なので、私に付くのはバブみバフのほうだ。たぶん、
ふふふ、でも私一人が幼い姿で、お姉ちゃんみたいになってるお嫁さんに可愛がられるのも悪くないぜ!
「…………うん、でも、ノンちゃんのおかげで、あたしたち、初めてちゃんと恋人とお嫁さんになれてる気がするね」
「そだねぇ。私とルルちゃんが二人だけの関係だった時は代償とか無かったけど、あれはアレで付き合いたてのテンションで舞い上がってて、全然マトモじゃ無かったもんね」
「いや、代償はあったよ? あたしのネームドスキルの効果。今もその『元に戻らない』代償は流石に緩和出来ないみたいだけど、それでも馴染んだからね。……まぁあの時は、ノンちゃんの言う通り確かにまだマシだったのに、それでもお薬とかスキルとか、色々と頭おかしいことしてたもんね」
「それで、そこにタユが入ってっ、すぐにイナバたちも来たもんねぇ」
「「そのあとアルリ〜」」
「そだね。二回目のイベント当日に二人も入ったから、なんか凄い速さでハーレム増えたもんね」
普通だったらアレだよね。ラノベ的に言えば一章進む毎に一人か二人ペースで増えるヒロインが、ダンジョン事変後にわっさぁーって集まった感じがする。
だって七人ですよ?
「あれだね。ノンちゃん、普通の顔してたけどやっぱり代償重かったんだね。ところ構わず幼女食べたがってた時のノンちゃんは、やっぱりちょっと、どこかおかしかったもん」
「んー、まぁ程度の差は有るかもねぇ? でもさ、私って別に、今でも可愛い幼女居たら食べたいよ?」
「そこは自重して欲しい」
「こんな嫁でごめんなさい」
「ふふふ、でも、それを言うならシルちゃんもだよっ? タユ、シルちゃんがちょっとおかしかったおかげで、お嫁さんになれたんだもんっ」
「それもそだね。ノンちゃんがあたし以外の人に色々されてる姿も欲しいとか、ちょっと頭おかしかったよね」
「ふむ、狂気も善し悪しって事かなぁ。ダンジョン事変の後遺症でもあるし、仕方無かった面はどうしてもあると思うよ。……まぁでも、こうやって落ち着いてお話し出来るのは本当に良かったね。昨日までなら、時間が空いたらとにかく個室に入って皆と気持ち良いことしたかったし」
ルルちゃんと付き合いたての頃は、デートとかもちゃんとしたいって、自分で言ってたのになぁ。
やっぱ、自覚してないだけで……、いや、自覚出来なかっただけで、色々と頭の螺子が吹っ飛んでたんだろうね。
「うん、この国来て良かったよ。未だに私のヨシヨシだけ特別視されるの納得して無いけど、【抱擁聖母】が手に入ったのは本当に良かった」
「いやノンちゃんは自覚してよ。そろそろ自覚してよ、お願いだから。ねぇノンちゃん、頑なに『バブみ』と『オギャり』って言葉避けてるの、あたしちゃんと気が付いてるからね?」
「……くっ、私を良く見てくれるお嫁さんで幸せですよまったく!」
ふっかふかのソファに座って、私の膝の上にゴローンと寝っ転がるアルリちゃんを撫で撫でしながら、今の自分と昨日までの違いを自覚していく。
そして頑なに避けてた話題をお嫁さんにぶち込まれて、逃げられない私。
「だってさー! バブみとかオギャりとか分かんないもん! なにっ? バブみってアレでしょ、要するに母性でしょ? 無いよ! まだ無いよ! 私に母性なんてまだ無いよ! 早いよ! まだだよ! 流石にまだ身に付いて無いよそんなもの!」
「いや、有るんだけどなぁ。どうしたらノンちゃんは自覚してくれるんだろう」
「だよねぇ。ノノちゃん、すごくしっかりしてるし、頼りになるし、甘やかしてくれるし、でも怒るところは怒ってくれるし、とってもお母さんなのにねぇ」
「いやいや、頼りになるとか、しっかりしてるって、それどっちかって言うと父性じゃね? それ母性なの?」
「ノンちゃん、知らないの? 母は強しって言うんだよ? あたしのお母さんとかまさにそうじゃん」
「ごめんそれ言われたら何も言えないわ」
確かにシェノッテさんは強いわ。当たり前にしっかりしてて、芯があって、私みたいな規格外でも頼りにしたくなる人だし、甘やかすところはしっかり甘々のとろとろにしてくれるし、でもちゃんと怒って、叱ってくれる。
うーん、つまりあれが母性なの?
「えと、ノノちゃんっ? べつに、母性とか父性って、正解が一つだけって事は無いと思うよっ? ノノちゃんにはノノちゃんの母性があると思うもんっ」
「それはそう。おかげであたし、ノンちゃんのお母さん二人攻撃で、本当に頭がおかしくなりそうだったんだからね。て言うかあれ何? 耳だけだと完全にお母さんだったんだけど。ノンちゃんって実はお母さんだったの?」
「待て待て待て待て、『お母さん』って単語がしっちゃかめっちゃかだわ。シェノッテさんを指してるのか私の推定バブみ的な何かを指してるのか、ややこしくて分からないわ」
取り敢えず、私の口にはシェノッテさん住んでなかったよ、大丈夫。あの後ちょっと怖くて、ちゃんと鏡で確認したからね。
いや居る訳無いんだけどさ。自分でも心配になるレベルだったからね。
いやさぁ、我ながらあれ、名演だったでしょ。自分でもビックリしたもん。
「で、なんなのアレ? 本当にお母さんそのものだったんだけど。あたし凄く混乱したんだからね?」
「うん。混乱してるなーって思いながらヨシヨシしてたよ。また今度したげるね?」
「………………ぅゆ」
はい可愛い。
「まぁ、種明かしをすると、私が持ってる夥しい数のスキル郡だと思うよ。なんか、【抱擁聖母】使ってヨシヨシしてると、特定のスキルが勝手に起動する仕様だって書いてある」
「なにそれ。え、お母さんの真似が出来るようになるスキルってなに?」
「んーと、『詐欺』、『演技』、『共感』辺りかなぁ? 数が多過ぎて、普段使わないスキルはフォルダ分けしてポイしてるから、ちょっと自信ないや。…………私っていまスキル幾つ持ってるの?」
「いや知らないけど。……て言うか、え? まってノンちゃん?」
「詐欺?」
「あ、えっとね、もちろんジワルド時代の話しだけどね? 私って実は、結構悪い事もしてるんだよ。もちろんNPC相手には絶対にやらなかったけど、プレイヤー相手には結構好き放題してた時期もある」
もちろん最低限のモラルは守ったロールプレイだけどね?
私はお嫁さんに達に軽く説明する。
例えば詐欺スキルだけど、これは相手に対して心象が良くなる動作や仕草、言動が分かるようになる感じのスキルで、練度を上げまくるとマジでカルト宗教立ち上げて儲けられるようなスキルだ。
「ほぇ、ノンちゃんって実は悪い人なんだ?」
「知らなかったの? 私はルルちゃんって可愛いお嫁さんの心を盗んだ悪党なんだよ?」
「…………んふっ、えへへ。でも好きぃ♡」
「私もすきぃ〜♡」
「タユもぉー♪︎」
「「アルリもぉ〜☆」」
あ、詐欺スキルに付いてだけど、これ別に物を盗んだり騙し取る為に使ってたスキルじゃなくて、
こう、良い感じの獲物に近付いて「美味しい狩場があってねぇ〜? 私はもう次の狩場に行くから、良かったどうだぁ〜い〜?」みたいな感じでキルゾーンにプレイヤーを誘導してから、夥しい数のモンスターで轢き殺したりとかしてた。
もちろん本当にやる時はこんな大根演技じゃなくて、もっとちゃんとしてたけど。
「うわ、なにそれエグっ……」
「ノノちゃんっ、悪い子だぁ〜♪︎」
「でっしょ? まぁ、その時の私は、どっちかって言うと
今更だけど、PKとはプレイヤーを殺す事を目的にゲームを遊ぶ人の事と、その行為の略称。そしてPKKとはPKを殺す事を目的にゲームを遊ぶ人と、その行為の事だ。
プレイヤーを殺す行為を
ついでにMPKは自分の手は汚さないでモンスターを使ってプレイヤーを殺す事と、それを行う人の事。これも使い方はやっぱり同じ。
それで、私があえて今PKを名乗ったのは、『PK自体はやってないけど、色々な人から恨まれて疎まれてる、良い感じの迷惑なプレイヤー』を対象にしてたので、だからPKK寄りのPKな訳だ。
「じゃぁノンちゃん、正義の味方だったの?」
「まっさかぁー! ルルちゃん、殺しは殺しだよ。そこに正義なんて大義名分は存在しない。迷惑なプレイヤーだって、それでもPKには手を出して無かった訳じゃん? なのにそれを理由にPKを正当化するつもりなんて、私には無いんだよ」
「じゃぁノノ母様は、なんでそんなことしたの〜?」
「教えてぇ〜?」
もうノノ母様呼びの矯正は諦めた方が良いのかな。
まぁいいや。PKの理由かぁ、そうだなぁ。
んー、特に「これ!」って理由が一つだけある訳じゃ無いんだ。色々な理由があったよ。
それに一時期だけって訳じゃなくて、気分転換で山賊したりもあったし。
「色々なパターンの殺し方を勉強したかったのも有るし、単純にPKってプレイングを経験したかったし、暗殺系のスキルも覚えたかったし、短剣術の練習にもちょうど良かったり、あとはそうだなぁ…………。あぁ、私怨もあったね。過去に私のレイド戦を邪魔して来たクソを一年後に思い出して後ろからぶっ殺して復讐した事もあったし、初心者時代の無知な私にゴミを売り付けて、有り金をボッタくったクソ商人プレイヤーを強くなった後に探し出して血祭りにあげたこともあるし…………」
「あ、あたしが思ったよりもノンちゃんが色々やってる……」
「ノノちゃんやっぱり悪い子だぁ〜♪︎」
「「悪い子ぉ〜♪︎」」
思い出すと、私も色々とやってるなぁ。
面白いところでは、例の『エフェクトピンク・セクシーハート』を作る時に色々とクソプレイヤーを探して来ては人体実験もしたよ。
ジワルドに存在するあらゆる呪いが好きで好きでしょうが無い魔女さんを筆頭に、呪いに詳しい系プレイヤーを掻き集めて、呪い同士の相性と関係性とか、装備の形状による効果の低減、呪いの移乗は可能か否か、何をするとどう変化するのか、解呪に対する抵抗はどう高めるか、とにかく調べて調べて試して試して…………。
「そうして出来上がったのが…………」
「うっふん芸人さんなんだねっ」
「その通り」
「あたし、一周まわってその人に会いたくなったんだけど」
「私が死ぬ頃にはかなり改心してたので、ただの面白い人になってたよ」
「余計見たいよその人」
昔話も弾んで、お嫁さんと恋人に囲まれてワイワイ喋るの超楽しい。
なんかさ、ケルガラでは経験した事が無いレベルで穏やかな時間なんだけど。もうこっち移住しちゃおうかな?
ファストトラベルあればルルちゃんとタユちゃんの里帰りも楽だしさ。このお城の人はヨシヨシ飢饉で可哀想だしさ。
あー、でも民宿は続けたいなぁ。黒猫亭は想い入れ出来ちゃったもんなぁ。
んー、もう、このお城の人たちさ、ローテーション組んで黒猫亭まで旅行に来たらいいのに。そしてらいっぱいヨシヨシしてあげるよ?
黒猫亭でも皆にヨシヨシしようかな? 探索者さんって、田舎から出て来て頑張って、それで故郷にはもうご両親が天寿をまっとうしてるってタイプの人も少なく無いしさ。
そんな人達に、お母さんですよーってヨシヨシしてあげたら、喜んでくれないかぁ。
「…………なんか、ノンちゃんがまたお母さんやろうとしてる顔してる」
「流石にちょっと、心配だねっ? ノノちゃんって【抱擁聖母】の代償が自覚出来ないから、結構バンバン使ってるよね?」
「そのうち世界中のお母さんになるんじゃないの?」
「待って待って、変なこと言わないで。私は普通だってば。ちょっと寂しがってる人にヨシヨシしようかなって思っただけだよ」
「ほら、ノンちゃんが無自覚お母さん化してるよ」
「ノノちゃん、知らない人のお母さんになるより、タユたちを甘やかしてね?」
「もちろん!」
ぐへへお嫁さん可愛い。
あ、気が付いたらアルペちゃんが寝落ちしてる。クルリちゃんもこっくりこっくりしてる。私の膝の上は眠くなっちゃうのかな?
よしよーし、よしよーし…………。
よし寝た。クルリちゃんにもトドメを指したぜ。
「タユ先生、今の見た?」
「流れるようなヨシヨシだったねっ?」
「もう毎日毎日、たくさんヨシヨシしたからね。既に私は、呼吸をするようにヨシヨシ出来ちゃう領域に居るよ? 二人もしてあげようか?」
私が両手を広げておいでーってすると、ルルちゃんは照れて視線を逸らす。タユちゃんは良いのかなぁってにこにこして飛び付いてくる。
タユちゃんはいい子ですねぇ。いっぱいヨシヨシしてあげますよー?
「えへへぇ♡」
「よしよーし、よしよーし……」
「……むぅ」
あら、ルルちゃんが拗ねちゃった。ほらルルちゃんもおいでー?
なんだかんだ言っても、ルルちゃんだって私にヨシヨシされるの大好きな癖に、素直じゃ無いんだからもう。
ほらほら、素直になれたいい子には、いっぱいヨシヨシしてあげますよー?
とろとろの甘々ですよー?
「むぅっ……」
「はい捕まえたー♪︎ 可愛い可愛いルル赤ちゃんには、たくさんヨシヨシしてあげますからねぇ」
タユちゃんもルルちゃんも、よしよーし、よしよーし。
えへへぇ、私のお嫁さん可愛いなぁ。幸せだなぁ。
二人とも三十分くらいヨシヨシしてあげた。
ちょっと短いけど、その分甘々にしてあげたから、今日はタユちゃんまで真っ赤になっちゃった。
「えへ、えへへっ、やっぱりちょっと、恥ずかしいねぇ」
「うゆっ……」
「もっと甘えて良いんだよー?」
「今は、もう良いのっ。これ以上ヨシヨシされたら、タユは本当に赤ちゃんになっちゃうからっ」
「あたしも、もぅ、だいじょぶ……」
あらら、遠慮しなくて良いのになぁ。
良いんだよ? いっぱいヨシヨシ、したげるよ? 赤ちゃんになって良いんだよ?
「これでバブみが分からないって、ノンちゃんそれは流石に嘘でしょ」
「流石にねっ、タユだってちょっと分かってきたよ?」
「…………あのね、残念な事にね、本当に分からないんだ」
「マジかよノンちゃん……」
「いや、バブみもオギャりも、私も自分がオギャる側なら分かるんだよ? ほら、私が初めてルルちゃんと出会った日のこと覚えてる?」
「忘れる訳ないんだけど?」
「わっ、わっ、それ聞きたいなっ。二人はどんな風に出会ったの?」
あの日、当時はぶっちゃけ目を逸らしたい悪夢でしか無かったけど、今ならばもう「記念すべき日」って言え…………、無いな。うんごめんちょっと強がった。
お父さんとお母さんに会えなくなった日が記念すべき訳無いよ。うん。
まぁ、とにかくあの日だね。意味の分からない場所で、状況で、何が怖いのかも分からなくなっちゃった私を、シェノッテさんが優しく抱き締めてくれたあの日。
シェノッテさんに諭されて、何が怖いのか、自分の心が何を想っているのかを自覚して、大泣きした私をぎゅっと抱き締めて、見知らぬ他人でしか無い私が泣き止むまで、ずっと優しくしてくれたあの温もりを覚えてる。
「要するに、あれが母性でしょ? ちょっとカルチャー的な違いは有るかもだけど、あれがバブみとオギャりの関係の本質でしょ?」
「……うん、まぁ、そうかも?」
「わぁ、シルちゃんのお母さんって素敵だねぇ」
「本当に、シェノッテさんには感謝してるんだ。たぶんあの日に、私がシェノッテさんにオギャら無かったら、私はもっと早くぶっ壊れて、ケルガラの何処かで消えてたんじゃないかな」
「まってノンちゃん。それについては流石あたしのお母さんって鼻高々だけどさ、あの日の尊い光景をオギャりとかバブみって言われるの、あたしなんか嫌だよ」
「うん、正直私もちょっと嫌だ」
でも、そう大きく間違っては無いでしょ?
だからさ、あの日のあれがバブみとオギャりの本質だとするなら、私がここ最近やってるヨシヨシ活動なんて、マジでちょっとした握手会みたいなもんじゃん?
確かにあの時感じた安心感をモデルに活動してるところはあるけども。
「せやろか?」
「せやろかぁ?」
「んふっ、ふふはっ、待って二人してそれ止めてよっ、笑っちゃうからっ、誰に習ったのそんなネタ……!」
「ぺぺくん」
「ぺぺさんだよっ」
「だよねぇ。やっぱりぺぺちゃんだよねぇ」
ルルちゃんはまだしも、タユちゃんまでやるのは反則だよっ。ふふ、腹筋がっ……。
「とにかく、ノンちゃんがあの日の想い出が基準だから自分のヨシヨシの評価が低いのは分かったよ。でも、あたしから見るとあの日のノンちゃんと、ヨシヨシ活動で泣いてる人達って大差無く見えるよ」
「えー、ほんとにござるかー?」
「ござるござる」
「わっ、ユノスケさんだね」
「んふふッ……! 待っ、ござるネタまで通じるの笑うんだけどッ。ぺぺちゃんどこまで広めてるのさっ? ふふひっ、ろ、ログイン時間が全然無い癖にぃっ……!」
もう、こんなに私を笑わせた罰として、ぺぺちゃん次会った時は、全力でヨシヨシの刑に処すからね。
ぺぺちゃん妖精だからちっちゃいし、赤ちゃんみたいに可愛がるには丁度良いのでは?
練習相手が居たら、私もオギャらせる側からバブみとオギャりを理解出来るかもしれない。
「ところでさ、ノンちゃんのその詐欺スキルとかって、どこまで通じるものなの? そのスキルであたしに『自分をお母さんだと騙し通した』訳でしょ?」
「んぇ? んー、じゃぁ、実際に食らってみる?」
なんかそう言う事になった。
という訳で、詐欺スキルの実践です。
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