第116話 その頃、薬師と侍は。
「ふっっっっっっっっっ-----…………」
場所はそう、何故かこの国、セザーリアの王が住まう城。
世界が変革する中で発生するイベント政変諸々色々、煽りを食らった僕らは、あと一歩でケルガラに行けたのに、本当に何故なんだか城に呼び出されたんだ。
「---ざけるなよッッッ………………!?」
そしてポニテ侍がブチ切れてた。
「いや、僕に当たらないでよモノムグリちゃん。カルシウム足りてないの?」
「斬り殺すぞ貴様ァ!」
「煩いなぁ、殺ってみなよ。これでも僕だって到達者の一人だよ? 八つ当たりで殺しに来るなら、相応の覚悟しておくれよ」
僕はこの世界に倣って、ネトゲ特有のひらがなネームだったモノムグリちゃんを、気持ちカタカナで扱うようにした今日この頃。まぁ口頭において余り意味は無いんだけど、この世界にログインしてる間だけ何故か身に付けてる言語で書類を書く時とか、色々ね?
まぁ、そんなどうでも良い事は、脇に置いとこう。そんなことよりもさ、僕らは最高にイライラしてるんだ。
「大体、君が
「やめろォっ! それはっ、誹謗中傷だぞっ!」
「いや、ノノンちゃんに割りと深めのガチ恋してた分際で誹謗も中傷も無いでしょうが」
あのワールドエレメントとか言う、金の狼の仲間である運営勢が最近、勢いに乗って様々な事をしてる。
水準がとても低いこの世界のレベル平均を上げるために、連続したワールドイベントを開いてるのがその最たるものだ。お陰で僕らは船に乗れなくなった。
元々の交易が少なかったのも有るけど、ワールドイベントのボスが海にも出たのは痛かった。痛過ぎた。
件のモンスターは既に討伐されたけど、二体目が居ないとは限らない。そのせいで長期便は軒並み運行を見合わせ、ケルガラ行きの便が一つ残らず欠航した。
僕らは、目的地の目の前で足踏みしてるうちに、目的地が遠のくなんて稀有な体験をしたんだ。
「て言うか、そろそろ怒鳴るのやめなよ。
そして僕らが城に呼ばれた理由の一つ、
そんな世界規模のアプデに巻き込まれた僕…………。
そう、僕だよ。巻き込まれたの僕なんだよ。
このクソ鬼ポニテ侍、
お陰で色々あって城に呼び出されて、ユノスケくんとサユちゃんからは引き剥がされるし、踏んだり蹴ったりだよ全く。
「ああ済まない
「?」
「
「♪︎♪︎♪︎」
デヘデヘとだらし無く笑うポニテ侍に、トテトテと近寄ってギュッと抱き着いたのは、偶然出会ってしまった
年齢を聞けば首を傾げるが、何歳設定なのかを問えば、にぱっと笑って指を六本立てた幼女。つまり六歳なのだろうね。
髪は肩甲骨辺りまで伸びたウェーブヘアーで、色は褐色ベースに黒のメッシュが入った結構パンクな見た目をしている。
虎耳に虎尻尾、おまけに名前が
着ている服は、出会った頃は何の変哲もない麻のワンピースだったのに、モノムグリちゃんと契約してからは見事な仕立ての着物に変化した。虎柄では無く、屏風の虎に纏わる刺繍なんだと思うけど、とにかく見事な物だよ。
そして内面、性格については見た目と違って引っ込み思案の人見知り。それと求める代償は虚言の禁止だ。
「
「?」
「ああ、ロリコンって言うのはね、
「待て
「モノムグリちゃん莫迦なの? 虚言禁止の代償を契約した自覚ある?」
たぶん「私は違う」って言おうとしたモノムグリちゃんは、
と言うか、それを口に出来なかった時点で、本当にロリコンなのが確定したじゃん。このロリコンめ。
「…………で、
『そう。でも返事を書くの面倒だからなるべく話しかけないで』
「あははは君って居候の自覚無いよね? 連れてるだけで利点ゼロどころか揉め事ホイホイな存在の癖に、さすがに態度が大き過ぎないかい?」
それでもう一人、僕らの仲間には
名前は
灰色に黒の虎模様が入った着物を着た、これもやっぱり幼い女の子。こっちは七歳設定だそうだよ。髪は黒に灰色のメッシュで、コンセプトは
さて、契約前には代償を教える事が出来ないらしいんだけど、普通に
まぁこの子、僕らにくっ付いて来るだけで契約を要求して来ないから今のところ問題ないんだけどさ。
そうなんだよ。この子って契約してないんだよ。なのに何故か着いてくる。
いや、なんか調べると
モノムグリちゃんは自分がロリコンじゃないって事以外はほぼ嘘をつかないし、
そんな感じで、モノムグリちゃんは
「おいオブラート、
「ロリコンは黙ってなよ。契約もせず武器としての役目も果たさないなら、せめて質問くらいには答えなよってだけだろう?」
「この冷血漢め! そんなに損が嫌なら、
「なら面倒事も全部君が引き受けてね? 僕もう帰っていいよね?」
「いや待てそれは話しが違うぞオブラート。今の拙者は嘘が言えん。貴族と喋ったら罵ってしまうぞ」
分かり易く今一度、僕らの状況を整理しよう。
まずモノムグリちゃんは
その総数が幾つあるか分からない、国も確保したがってる強力な武装の一つを、モノムグリちゃんが個人で所有してる。
これは良いんだ。別に、ワールドエレメントが所有を保証してるし、世界に様々な手を出し始めた奴らの不興を買う度胸なんて、この国の貴族には無い。
しかし
「あまり虐めるなオブラート。城に呼ばれた件は確かに
うん。そう、城に呼ばれた理由は
ただそうなったきっかけは、港町の周辺で人助けをしたら、この国の第四王女だったって話しなんだ。
目的地に向かう丁度いい船が中々見付からないので、路銀稼ぎと暇潰しを兼ねて、傭兵業で港町周辺のモンスター狩ってた僕とモノムグリちゃん。ついでにユノスケくん。
そしたら、ラノベの異世界テンプレよろしく、モンスターに追われる馬車を見つけた。見捨てる理由も無かったから駆け付けたけど、その時には潰れるまで走った馬がもう手遅れで、駆け付けた時点で馬車が横転してた。
モノムグリちゃんが速攻でモンスターの首を刎ねたので危険は無くなったが、それでも横転した馬車の中なんて、どんな酷い怪我をしてるか分からない。
だから僕は、急いで【薬師神】を発動しながら駆け寄って、中にいる全員を薬と魔法で即座に癒したんだ。
そしたら、その馬車の中に居たのが色々あって遠出してたこの国の第四王女だったって言う、本当に異世界テンプレみたいなオチだったのさ。
その時は感謝してくれたし、お城に呼んでお礼もしたいと言われた。だけど、正直僕らにとって片手間で解決出来るような事で
だから僕らは、「お礼は要らない。面倒事は嫌いだから、出来れば僕らの事は忘れてくれるのが、一番のお礼かな?」ってハッキリ言ったのに、あのクソ女速攻で国に報告しやがった!
その時にはもう
僕らだって
「はぁ、それを言われたら僕も弱いけどさぁ。でも
だから僕も、きっかけと言えばサユちゃんの時みたいに【薬師神】と魔法で速攻パパっと治したのは事実だよ。それは認める。
だけどその後、クソ女の報告を受けた国が動いて、港町に軍と使者がやって来た時に、ハッキリと「
「あの状況で渡せるかッ! 私の趣味趣向は関係なく、ぞろぞろと軍人引き連れて来るような莫迦共に、
「まぁそれは僕も同意するけどね。アレは無いわぁ」
僕とモノムグリちゃんも、結構頭に来る扱いを受けたので、もう二人揃ってコイツら皆殺しにして逃げようかって考えてたけど、何とか我慢したんだ。
だってユノスケくんとサユちゃんは普通の子達だからね。僕らが暴れた余波が二人に行くのは本意じゃない。
サユちゃんはもちろん、ユノスケくんだって最近頑張ってて、僕も多少の愛着くらいは湧くんだよ。
ユノスケくんさ、つい先日やっっっと双閃を発動させてさ、もう飛び跳ねて喜んでたんだ。
そんな彼らの邪魔は、したくないよねぇ。
「はぁ、クソ女助けなきゃ良かったねぇ」
「そう邪険にするな。アレは明らかにお前を慕ってるだろう」
「願い下げだよ。僕らは忘れて欲しいって言ったのに、一番面倒な形で裏切る様な女なんて、暗殺依頼受けたらロハで仕事するくらいさ」
て言うか現地民との恋仲とか、もしそうなるとしたら相手はサユちゃんだよ。
あんなに辛い旅路だったのに文句も言わずに着いてきて、才能が無いにせよ僕の技も懸命に学んでる。可愛くてしょうが無いよね。クソ女とは雲泥の差だ。
と言うかその前に、いい加減にノノンちゃんと会わせておくれよ! そろそろあの「にぱぁっ」って笑う顔が恋しいよ!
「…………ユノスケ達は大丈夫だろうか」
「こっち来て国の陰謀に政争に巻き込まれるよりはマシでしょ。双閃使えるようになったユノスケくんなら、腕もそう悪い訳じゃない」
「ふんっ、まだ未熟に過ぎるがな」
「君の基準はノノンちゃんでしょ? 比べる相手が悪過ぎるじゃないか。ユノスケくんは頑張ってるよ」
面倒事が渦巻く城に行かざるを得ないと分かった僕とモノムグリちゃんは、ユノスケくんとサユちゃんを僕らから切り離した。
あの港町に残して、出来れば船に乗ってケルガラを目指すようにと言いおいて、そして僕らの可愛い弟子に、二人分の伝言を託して。
「だから、せめて二人が国を出るまで面倒事は嫌だよ。もうあの侯爵に向かって『おいハゲ』とか言わないでね」
「仕方なかろう! 今は嘘が言えんのだ!」
「いや
いやね、要求される代償って単一じゃなくて色々あるらしいのは分かってるから、嘘が言えない事とは別に、『思った事は口に出したくなる』代償欲求とかってリスクの方が悪かったんだろうけどさ?
でも初対面の相手に『おいハゲ』って言いたくなるような人間性がそもそも問題でしょうよ。莫迦なのキミ?
あーあ、サユちゃんに会いたい。この際ユノスケくんでも良いよ。
この弟子レズクソ女と二人で缶詰の状況を何とかして欲しい。
はぁ、ラノベよろしく、一国の姫なんて助けるモンじゃないよ。マジで。
◇
「で? 音沙汰無いって舐めてんの? 流石の僕だって言葉が崩れるってものだよ?」
城に来て早五日、未だに謁見すら叶わない。僕は相当イライラしてた。
「何が『流石の僕も』なんだ。ぬしは研いだ刀よりキレやすい痴れ者だろうが」
「煩いよロリコン侍」
「ふっ、もはやその言は通じんぞ。開き直ったからな。拙者はロリコン侍、しかして紳士で在らねばならぬ」
「これ即ち無念無双って? 莫迦なのかい?」
-コンコン…………。
ほぼ幼児の
「は? もしかして今の消え入りそうなノックが謁見の使者とか言わないよね?」
「いやまぁ確かに、使者ならもう少し自信を持てと喝を入れたい程に小さいノックだったが……。取り敢えず開ければ分かるだろう」
ちなみにだが、僕とモノムグリちゃんは同じ部屋で生活してる。
だってログアウトしちゃえば気にする事ないしね。僕もこのロリコンポニテを女として見てないし。
「じゃぁ対応任せたー」
「いや、ぬしが出ろよ! 拙者は今嘘が付けぬと言ってるだろう!」
「来客対応くらい問題無いでしょ。て言うかモノムグリちゃん、普段からそんなに嘘言わないじゃん」
僕は全部モノムグリちゃんに押し付けて、自分はベッドの上にゴローンと体を投げ出した。
はぁー暇。逃げ出さないようにって外出許可すら出ないからね。キレそう。
僕は気が短いのに、まだ暴れてないだけでも割りと奇跡だよ?
「む、ぬしは…………」
「おっ、お久しぶりです……」
え、いま何かクソ女の声聞こえなかった? うわマジかよ嫌だ面倒臭い。寝たフリしよう。
「おいオブラート。ぬしに客…………、は? あぁっ? まさか今のさっきで寝たのかっ?」
「あらっ、お休みですの?」
嫌だよ寝たフリするよ。ソイツとマトモに喋れる訳無いじゃない。
この面倒事を笑顔で持ってきたクソなんだよ? 罵って良いなら起きるけどさ。
「…………うふふっ、愛らしい寝顔ですわねっ」
「……? そうか?」
煩いよロリコンポニテ弟子レズクソ侍! 心の底から溢れる疑問を顔に出すな!
「あの、お聞きしても?」
「む? 答えれる事なら答えるが、一国の姫に答えられる事など、拙者は知らんぞ?」
「いえ、あの…………。オブラート様には、そのっ、想い合って居らっしゃる方などは……?」
少なくともお前以外だよ! 早く帰れクソ女。
「む? どうだろうな。サユ殿との仲は悪く無さそうだったが、深い仲とも言えん。拙者たちはそもそも、愛弟子を追い掛けて旅をしていたからな」
「…………ほぅ、そうなのですね」
ラブコメよろしく、「良かったぁ」と小声での呟きが入る。
いや僕もモノムグリちゃんも到達者の体だからね。その程度の呟きなら普通に拾うし、「え、なんだって?」とか言わないし。
「…………あの、そのお弟子様は、どちらに居らっしゃいますの?」
「オブラートが言うには、ケルガラに居るらしい。詳しい事はまだ分からんのだが、王都に行けば会えるのだそうだ」
そんなこんな、何故かクソ女とモノムグリちゃんがソファに座って喋り始めた。
……いや帰れよ。なんで居座って雑談初めんだよ。僕起きれないじゃん。
はぁ。もう良いよ。僕はここで寝たふりして、
…………うん、可愛いね? あどけない寝顔に癒されるよ。
少しロリコンの気持ちが分かったかも知れない。……いやごめんやっぱ分からないわ。むしろこんな無垢な存在を汚せる意味が分からない。
ノノンちゃんならキャラ年齢的にただの同棲愛だけどさ、モノムグリちゃんって確か二十後半か三十くらいじゃなかった? 流石に正確な年齢は知らないけど。その年齢でロリコンは完全に「もしもしポリスメン?」だよ?
「--それで、著名な回復魔法の使い手をお呼びしたのですが、父の容態は一向に良くならないのです」
「ふむ、拙者らの謁見が放置されてるのは、そんな理由があったのか。確かにそれでは、謁見どころでは無いな」
あ、気が付いたら話しが進んでる。なんだって?
回復魔法? 父の容態? なに王様怪我でもしてるの?
「しかし王女よ、それなら尚更に、なぜ我々に言わない? 病の類ならば、そこで寝コケてる阿呆を頼れば一瞬だぞ?」
あ? 怪我じゃなくて病気なの? なんで病気に回復魔法使ってんの莫迦なの? て言うかヤだよ何で僕が。既に一回助けて裏切られてんじゃん僕達。なんでモノムグリちゃんそんなソイツと仲良く出来るの?
絶対アレじゃん。助けたら騒がれるパターンじゃん。もはやラノベの固有テンプレ入ってんだしさぁ。「国一番の
僕は薬師だけど、誰でも彼でも無条件に救いたい莫迦じゃ無いよ。
僕はね、助けたい奴だけ助けたくて薬師やってんだから。
「でも、ご迷惑では……?」
「こやつは腐っても薬師だぞ?」
「…………良いのでしょうか、そのっ、こんなにも甘えてしまって」
だから良くないって言ってるでしょうが。寝たフリで言ってないけど。
なんでモノムグリちゃんはクソ女をそんなに気に入ってるの?
……もしかして守備範囲?
え、待ってそいつ、十五歳くらいに見えるよ? モノムグリちゃん、君ってロリコンじゃないのっ!?
もしかして、ただ守備範囲がクソ広いだけのガチレズっ!?
いや待て、ロリコンなら性犯罪の足がけだが、ただの同性愛者だったなら何も言うまい。
別にそれなら性犯罪じゃないし? 現在進行形でデヘデヘしてる
ノノンちゃん相手にはロリコンを見事に隠し切ったみたいだから、手は出てないだろうし?
「流石にこいつも、一国の王が危篤とあらば立つのではないか?」
は? いや莫迦なのモノムグリちゃん? 絶対に嫌だけど?
国の王が何だってのさ。僕なんか薬師の神だぞコノヤロウ。
そも、君だって悪辣の姫君を経験してから貴族嫌いじゃなかったっけ?
あのイベントでモノムグリちゃん、結局最後はノノンちゃん一人が正しく正義だったけど、最初は『拙者の弟子をッ、可愛くて無垢で純真なののんを、よくも、よくも騙してッ、洗脳してくれたな悪辣の女王がぁッ!』ってノノンちゃん救う為にブチ切れ参戦して、同じくブチ切れ参戦してて精神がスペックに直結してたノノンちゃんから返り討ちにさてたし。
で、終わってみたら騙されてたのはコッチで、モノムグリちゃんはクソ貴族の陰謀で『たった一人で心優しい親友を救わんと世界を敵に回した自慢の弟子を妨害し邪魔したクソ師匠』ポジションにさせられて、それはもう貴族嫌いになった。
たぶん、ノノンちゃんより貴族嫌いになってるはずなんだよね。
ノノンちゃんはウリウシーラ並に誇りの有る相手なら敬意くらいは抱くし、そこまで行かなくても、ちゃんと信念を持った貴族には好意的だった。
でもモノムグリちゃんは騙されて利用された側だし、善良な貴族を見ても『本当か? こやつ、善良な面をして本当はクソ貴族なのでは無いか?』ってほぼ全員疑うようになったし。
だから、しっかりバッチリ騙してくれたクソ女は、モノムグリちゃん的にアウトなはずなんだけどなぁ?
「回復魔法の使い手とやらは、病の種類は分かってるのか?」
「いえ……。こんな症状は、見たことも無いと…………」
「ふーむ、詳しい経緯が分からんことにはなぁ……」
いやおかしいでしょ。詳しい経緯が分かっても仕事するの僕じゃん。
なんで君がそんな悩ましげなの? ぶっ殺すよ?
て言うか、経緯分かってないの? 今それ聞いてたんじゃ無いの?
まぁどっちにしろ病気なら、回復魔法も治癒魔法も、物によっては全く意味が無いし、適当な人選では無いからねぇ。なんで回復魔法使いなんて連れて来たのか知らないけど、人選ミスでしょ。
少なくとも、世界の判定でNPC扱いの現地人にはさ?
ジワルドでもそうだけど、回復魔法ってのはスタミナとか気力とか、あとは麻痺とか毒とか、『目に見えない状態の変化』を復帰させる魔法だ。
そして治癒魔法は、怪我や骨折、変形、壊死なんかの『目に見える変化や欠損』の復帰が効果範囲になる。
紛らわしいんだけど、ジワルドでは色々あってこの二つは線引きされてるんだよね。
それで、回復魔法も治癒魔法も、いや面倒だから医療魔法とでも纏めるけど、医療魔法に共通する性質は『復帰』なんだ。
つまり、どれだけ辛い症状でも瀕死でも、体がその症状を『正しい状態』扱いしてると、医療魔法は意味が無い。
病気なんて物はね、かなりの種類が『体が正しく機能したからこそ発生する病』だってあるのさ。もちろん先天性の症状も治せない。
お酒を飲み過ぎて臓器を壊したなら魔法でも治せるけど、逆に体の機能が正常に動いた結果なら、ただの風邪さえ治せない。
風邪ってさ、ウィルス性も細菌性も、どっちにしろ体がそれを追い出して殺そうとしてるから発熱や咳、痰や鼻水、物によって下痢なんかの症状も有るんだからね。あれ全部、悪い物を外に追い出したり免疫でぶっ殺す為の機能だからね。
正しく機能してる体を『復帰』させることは出来ないさ。強いて言うなら回復魔法で体力と気力を補って補助するくらいが精々。まぁ普通の風邪なら体力と気力が増したら治せちゃうけどさ。
「いっそ、プレイヤー化して一回殺してみるのはどうだ? リスポーンすれば病も治るのでは無いか? 政治屋ならパワレベの弊害など薄いだろう。経験値薬なら融通するぞ?」
「…………えっ!?」
とんでも無いこと言い始めたよあの鬼ポニテクソ侍。
「えと、あのっ、こ、殺すのですか…………?」
モノムグリちゃん、キミ莫迦なの? もちろん有効そうな手だけど、『治る為に一回死ね』って一般人からすると狂気の沙汰だからね?
ほらクソ女が流石に真っ青になってんじゃん。いきなり経験値薬とか言われても普通の人はそんなもの知らないよ。レベルカンストしか生み出せない秘薬だよ?
「まぁ、オブラートを使うかプレイヤー化するか、どちらにせよミケルリール殿の父上は治ろう。その阿呆には拙者から伝えておく」
は? だから嫌だって。
むしろ治してまた、『お礼が〜』とか騒がれるくらいなら、国王が死ぬのを待ってドサクサで逃げ出す方が良いじゃないか。
だってクソ女の親だよ? 助けても音速で裏切るゴミだよ?
僕らがほっといて欲しいってお願いしても笑顔で無視して軍を連れて来たクズだよ? 助けても得なんて無いじゃん。
確かに恩を売ってさ、色々と
でも、権力使って会いに行ったり呼び出したりしたら、絶対にクソ面倒じゃん。ノノンちゃんだって貴族嫌いなのに、僕らに言うことを聞かせたいクソ貴族達のアレコレにノノンちゃんが巻き込まれるかも知れない。
それに指名手配されたら、サユちゃんとユノスケくんにも迷惑が掛かる可能性もある。
だからまぁ、僕らは可能な限り穏便に、ここを静かに出ないといけない。
国際指名手配犯が遊びに来るとかノノンちゃん可哀想だし、想い人が指名手配犯とかサユちゃんも可哀想だろう?
だから今は逃げ出せないんだよ。
逃げて良いなら、とっくに逃げてる。僕もモノムグリちゃんも、この城を警備してる雑魚程度なら障害にもならない。
ただそうすると、王城から許可無く逃げ出したとかで指名手配されるかも知れない。
それすら跳ね除ける力は確かに有るけどさ、世界的にもレベル平均を上げている世界でそんな事をすれば、後々大変な事になりそうだし。
…………お、
寝惚け
すると
うん、可愛いね。これはロリコンになりそうだ。いや成らないけどね。
しかし
でも普通に娘とか孫的な可愛さなんだよね。飛びっきり可愛いけど、別に劣情は催さない。欲情しないし、興奮はしない。
うーん、やっぱりロリコンの気持ちは分からないなぁ?
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