第107話 実装、代償装・幼神。



「ふむ、何やら想い入れが深いご様子!」

「まぁ、ね。時と共に忘れかけてたけど、この後悔を思い出せて良かったよ。ありがとうね」


 なんか、私に足りなかった何かを補充出来た気がする。


「それで、夜刀神やとのかみと同じカテゴリーの武器が実装されるの?」

「そうですともっ! まぁ夜刀神やとのかみを含めて、ある程度はダウングレードしましたけどね? いやぁ、向こうだと能力がAIと直結してる形だったので修正が難しかった見たいですが、こっちならワタクシたち、一応神様ですからねっ!」


 ほぉ、あれから実装され無かったのはそう言う理由なんだね。

 AIって事はやっぱりインテリジェンスウェポンだったのか。

 だとしたら、あの悲しみは本物だったんだ。私の勘違いじゃなくて、気を通して感じたあの心は本当に夜刀神やとのかみが抱いた絶望だったんだ。


 助けたかった。助けたかっ--…………。


「いや待って、今なんて言った?」

「ふぉっ? ですから、ワタクシたちは一応神様--」

「そこじゃねぇわッッ! バーラ今、って言ったッ!? じゃぁつまり、リワルドに夜刀神やとのかみを実装するのっ!?」


 お前らポンコツ神の事なんかどうでも良いんだよオラァン!


「ええ! しますとも、しますとも! せっかく向こうに基礎データが残ってるんですから、使わない手はありませんよ! 他の子達は全部新造したので夜刀神やとのかみだけシリーズ外の一点物ですが!」

「マジかよ次のイベント本気で私省いたらブチ切れるからな」


 やった、やった! 夜刀神やとのかみを助けられるチャンスがまた来るんだ!

 よっしゃ任せろ今度こそ絶対に助け出してみせるからなぁ!


「あ、楽しみにして頂いているところ申し訳ありませんが、流石に例のボスなんか実装したら、リワルドが滅びますのでね。頑張れば普通に倒せるレベルになってますよ? ダウングレードしましたし」

「いや良いことじゃん。私は別に活躍したかった訳でも無いし」

「いえ、でもそれだと黒猫様が夜刀神やとのかみを手にする確率も下がりますよ? どこに出るかはランダムですし、流石にそこまでは贔屓できませんから」

「良いよ別に。私はどうしても夜刀神やとのかみを自分の物にしたかった訳じゃないし、夜刀神やとのかみが助かるならそれで良い。ただその一助くらいにはなりたいから、マジで今回私をハブったら本気の本気で暴れるからね?」


 ふひひ良かったね夜刀神やとのかみ、もうあんな悲しい慟哭上げなくて良いんだよ。触れ合って良いんだからね。


「あ、て言うかその新カテのアイテムを詫びに持ってきたんだっけ? どうせなら夜刀神やとのかみを連れて来てくれれば良かったのに」

「いえいえ! 夜刀神やとのかみはダウングレードしたとは言え、それでも新造した他の子よりも力が強いのですよ! いくらお詫びと言っても、イベントの目玉であるトップアイテムをパチッてくるなんて流石に無理です! アイテム担当のピンクにワタクシが殺されますよっ!」


 いや良いよ。バーラと夜刀神やとのかみを交換なら、こっちアドしか無いし。ゲーマーならアドバンテージは確保して行け?

 しかし、話しにちょいちょい出てくるアイテムのピンクとやらは、姿を見せないのだろうか?


「むぅ。そのピンクちゃんとやらに、何か賄賂とか…………」

「あぁ、でしたら簡単ですよ。ピンクはこの国の第二王女と同じ類の輩でありまして、そして布教もしたがってる莫迦ですから」

「えっ、何する気…………」

「黒猫様たちの夜を動画化して販売--」

「ごめん私が悪かったから許して兎さん。もう無理は言いません」


 ふざけんなよっ! システムメニューが使える人全員に見られる女優業なんて出来るかよ!

 せめてマイルドな百合だけにしろよ! なんでグッショグショのヌルヌルになってる動画を世界公認で公開されなきゃ行けないんだよ! 実質死刑宣告じゃないか!


「そうですか? お許し頂けたらピンクの莫迦は喜んで夜刀神やとのかみをこっちに流しますが……?」

「いや無理だよ。ジワルド仕様のクソボスで実装されて誰も助けられないなら考えるけど、誰でも頑張れば助けられる状況で公開処刑は流石に…………」


 ごめんね夜刀神やとのかみ。イベントまで待っててね。

 もし私が関われないくらい遠くで夜刀神やとのかみを持ったボスが倒されても、挨拶くらいには行くからさ。

 その時は友達になろうね? その為なら国家権力にも喧嘩売るくらいはするからさ。

 良く考えたらバーラたちワールドエレメントが自信を持って世に送り出す新アイテムだもんね。国宝とかになってたら普通じゃ会えないもん。

 その時はありとあらゆる手段を用いて、私は夜刀神やとのかみに会いに行くよ。


「ふむ。でしたらまぁ、夜刀神やとのかみではありませんが、新アイテムのお披露目と行きましょうかねぇ。ピンクの自信作ですよ!」


 私が意気消沈してると、タルトを食べ終わって出されたお茶も飲み干したバーラが、目の前の器を退けてテーブルにスペースを作った。

 そしてフカフカのお腹に手を突っ込むと、「ぬぽんっ!」って感じで新アイテムとやらを三個、……いや取り出した。こいつ、アイテムポーチが腹に直結してるの? ぺぺちゃんも背中の羽に直結してるけどさ、取り出すモーション要らなくない?


「これがリワルドで新しく実装される新装備です!」


 そして、バーラが取り出したのそれは、三匹の愛らしい獣だった。


「新カテゴリー、『代償装だいしょうそう幼神おさながみ』ですっ!」


 バーラが『装備』だと言ってのけるその子たちは、テーブルの上に座った純銀の仔犬と、純金の仔狐と、純白の仔兎。


「………………装備とは?」

「装備でございますよ?」

「いやペットじゃん。もふもふじゃん」


 正直クッッッッソ可愛いよ。お目々がクリクリ。

 潤んだ瞳で私達を見る仔犬と仔狐と仔兎は、もうビックリするくらい可愛い。超可愛い。

 この子達が貰えると言うなら喜んで貰うさ。今日から溺愛確定だよ。毎日甘やかしてメロメロのドロドロにして私たち無しじゃ生けて行けないもふもふにしてあげる。

 一メートル離れるだけで寂しくて泣いちゃうくらいに依存させて、私たちが毎晩ギッシギッシとベッドを揺らしてる時も傍において、いつでも何処でも可愛がれるように準備してあげるね?

 はぁぁ可愛い。ほら可愛い。仔犬がペロって鼻を舐める仕草に心臓を貫かれる。仔兎がテシテシと後ろ脚で頭を搔くの手伝ってあげたい。不安と怯えで丸くなっちゃう仔狐なんか、私を母だと勘違いするくらいに甘々に溶かしてあげたい。


「はぁかわよっ」

「ふあふあだねぇ」

「もふ、もふふだねっ。可愛いなぁ……」

「これは、凄まじい愛らしさですね。……まるで愛される為に生まれてきたようです」


 四人が異口同音にもふもふを褒める。いやマジで可愛い。


「お気に召して頂けたようで、嬉しく思いますよっ! さぁ君たち、このお三方さんかたが今日から契約者になるんだぞ。代償との相性は良さそうだろう? それぞれ一番好きな人と契約しなさい」


 バーラがそう言うと、三匹の毛玉は私たちを見て、見て、じーっと見て、悩んで、悩んで、目を潤ませて困ってしまった。

 はい可愛い。けどなんだ、嫌がられてる? でも可愛い。


「おや、これは予想外ですねぇ? いや、むしろ予想通り?」

「どゆこと? ちゃんと教えてよ。私そう言う『多くは語らず匂わせて終わる意味深キャラ』ムーヴ嫌いだよ」

「ああいえ、この子達は皆様用に新造されたので、元々相性がピカイチなはずなんですね。で、今は皆様と相性が良すぎて、誰を選んで良いのか分からない状態です」


 は? じゃぁなに、つまり私たちが好き過ぎて一人を選べないってこと?

 はぁぁああ可愛い! 何それ可愛い! 好き!


「選べないならもう全員で良くない?」

「あははは、流石に今更武器の仕様は変えられませんよっ! 幼神おさながみが契約者に選べるのは一人! 代償を契約者以外に肩代わりして徴収することも出来ますが、契約出来るのはただ一人なのです!」


 なんかさっきから「代償」ってワードをちょいちょい出してて気になるけど、まぁ強い装備に代償が必要なのはある意味当然だよね。

 物語でもゲームでも、古今東西津々浦々つつうらうら、どんな業界でも大体そうだ。支払う代償がキツイほど、多いほど、装備は強くなるし能力も強まる。創作の定番と言うか、もはや不文律であるとさえ言える。

 ジワルドでもリワルドでも、武術スキルの技名を口頭にて宣言すると威力があがるのも同じ理屈だ。世界に宣誓して、相手に手札を公開して、戦いの呼吸を自ら乱して、それを代償とする。だから威力が上がる。

 それに武術スキル以外にも、色々と代償を支払うと威力や効率が上がるシステムが結構ある。

 ショートカットしない呪文も、詠唱の後に魔法名を叫ぶと威力が微増する裏技がある。と言ってもほんの一パーセント以下だから、節数が五十を超えるくらいの魔法じゃないと誤差レベルどころか無意味ってレベルなんだけどね。

 まぁ今は良いや。幼神おさながみに話しを戻そう。


「じゃぁもう私たちから選ぶ? 選べないくらいに私たち全員が好きって言うなら、それでも良いでしょ」

「あ、だったらあたし、同じ兎だし--……」


 もう勝手に進めちゃおうと私が提案して、ルルちゃんがじゃぁ縁があるからって仔兎を選ぼうとした。

 しかし当の仔兎ちゃんは何やら決心して、ぴょこぴょことテーブルを歩いてタユちゃんの所に行った。

 他の仔はまだ選べないらしいけど、仔兎ちゃんだけは自分で契約者とやらを選択したんだろう。


「…………え、あたし振られた? ぅえっ、凄い悲しい」

「あ、あ、へこむルルちゃんも可愛いよっ……」


 しょんぼりするルルちゃんを撫でてニッコリする私。当の仔兎ちゃんも、その様子を見て申し訳なさそうにしてる。可愛い。


「振られた訳じゃないよ。ルルちゃんも私の事が一番好きでしょ? でもタユちゃんの事も大好きじゃん。仔兎ちゃんもタユちゃんが一番好きだっただけで、ルルちゃんの事も好きだよきっと。……そだよね?」


 タユちゃんを選んで、タユちゃんに抱っこされた仔兎ちゃんに聞いてみると、コクコクと何回も頷いてくれた。可愛い。


「ほら」

「うぅ、あとであたしにも抱っこさせてね?」

「みんなで仲良くしようね。……じゃぁ、君たちはまだ選べない? 私たちで選んでいい?」


 もうご機嫌な私は、ニッコニコしながら仔犬ちゃんと仔狐ちゃんに聞く。すると二匹はさっきの仔兎ちゃんみたいに何度もコクコク頷いて、「さぁ選んで!」と言わんばかりにアピールした。

 二匹ともテーブルの上にコロンと寝転がって、毛並みの薄いお腹を見せてくる。はぁどちゃクソ可愛い。


「んー、ノンちゃん選んで? あたし最後の子と仲良くする」

「あ、土壇場で選べなかったの引き摺ってるんだね……。そうだな、じゃぁ私はこの、ルルちゃんみたいな毛並みのワンちゃんにするね?」


 ルルちゃんは銀白い毛並みが可愛い女の子で、あえて言うなら白銀の髪と毛並みだ。

 このワンちゃんはルルちゃんと違って完全な純銀。もうギンッギンに銀色の毛並みだけど、それでも銀には違いない。仔兎ちゃんだってルルちゃんを彷彿とさせる純白だけど、そもそも兎だからね。色が違ってもルルちゃんを彷彿とするよ。


「さぁおいでワンちゃん。今日から私がママですよー?」

「じゃぁあたしは、狐ちゃんだね。よろしくね? 仲良くしてね?」


 そう言うと、選ばれた二匹がそれぞれ、よちよちと私たちの所に歩いてきて、もう我慢出来なかった私はその半ばで抱っこしちゃう。

 ルルちゃんも同じく仔狐ちゃんを抱っこして、みんなで撫でたり頬擦りしたりと可愛がる。いやもう本当に可愛いんだけど。

 毛並みふわっふわ。お目々くりくり。肉球ぷにゅぷにゅ。超可愛い。


「お気に召して頂けたようで何よりです!」

「いやホントに、この子が詫び品って言うなら、もう何でも許すよ私」

「見てノンちゃん、タユ先生、この子あたしの指なめてるよっ! かぁいいっ、ちゅぱちゅぱして赤ちゃんみたい!」

「かぁいいねぇ……。えへへぇ……」


 もうメロメロだ。私たちにメロメロにして甘々のドロドロにする前から、私たちがやられてる。つまり両想いじゃん? やったぜ。


「では、契約するのにその子たちとキスして頂けますか?」

「何その素敵イベントまじかよ。私ピンクと仲良くなれそう」


 せっかくなので、私たちは「せーのっ」とタイミングを合わせて、抱っこしてる可愛いもふもふの唇にキスを落とした。

 せぇーのっ、「ちゅっ♡」とね。…………すると?


 -ポーン。


 システム音が脳内で鳴った。何かシステム的な処理が発生したようだ。

 そして音を聞いた次の瞬間、私たちが抱っこしていたもふもふがふわぁぁあっと光り、徐々に姿を変え始める。

 え、え、待って待ってもしかして成長とかする感じ? ヤダヤダ待ってBボタン連打させてっ!?

 進化ノー! 成長NO! ベイビーのままで良いんだよ待って本当に待っ--…………。


「……わぅ♡」

「〜〜くぅ♪︎」

「---!」


 え、なにごと?


「………………は?」

「えっと、女の子になっちゃった……」

「はぅっ、かぁいいねぇ!」


 そう、私たちが抱っこしていた三匹のもふもふは、燐光が引いた頃には変身して、愛らしい女の子になっていた。

 歳は多分、六歳か、七歳くらい? まだ私判定で幼女と呼べる女の子だ。

 そして見た目はそれぞれ、犬と狐と兎の特徴を持った半獣の姿をしていて、元の髪色等はそのまま。容姿その物は契約者となった私たちとかなり似ていて、髪型等は私たちと同じになってる。

 瓜二つとかソックリと呼べる程では無いけど、血縁者かなって言われたら納得するくらいには似てる。

 例を出すなら、フィルたんとロアにゃん程は似てないけど、二人とタユちゃんを比較したら、それよりは似てる。

 全員それぞれが美しい着物ドレスを着ていてめちゃくちゃ似合ってるし、相変わらずお目々がくりくりで可愛い。


「…………幼神おさながみってこういう事?」

「ですです! 可愛いでしょう? システムの主従欄を見て頂ければ詳細が分かりますよっ! メニューが使えない方々には、本人たちに聞けば筆談してくれますし!」


 言われたので見てみる。抱っこしたまま何倍にも大きくなったから体勢が変わっちゃったけど、それでも未だに抱っこし続ける私の胸に、甘えるようにスリスリと頬を擦る可愛い幼女の頭を撫でながらメニューを思考で操作する。


 【+主従リスト】

 ・軍狼『レギオンヴォルフ』【ポチ】

 ・麗鸞『マギアビューテ』【ツァル】

 ・銀熊『アルジェントヘアー』【アルジェ】

 ・勝鼠『スペリオルリーガル』【ウィニー】

 ・精霊馬『コンタクトエア』【ベガ】

 ・爆殺牛『フルバーストデッド』【ホルン】

 ・樹虎『ブロッサムシャドウ』【ロッサ】

 ・獅子鷲『ニアグリフォン』【リフ】

 ・疾風竜『エアリアルハートドラゴン』【ロッティ】

 ・城塞竜『フォートリアドラゴン』【グラム】

 ・万象竜『ハイマットフルドラゴン』【リジル】

 ・代償装・幼神【恋濡こいぬ

 【+婚姻関係】

 ・【初恋銀兎】シルル・ビーストバック

 ・『飲み姫』タユナ・フリーデンス・ビーストバック


 おっほ、みんなの種族名とか久々に見たわ。て言うかタユちゃん、公式で『飲み姫』認定されてるじゃんマジかよゴメンちょっと笑う。

 いや凄い飲むもんね。美味しそうに飲むもんね。そりゃ飲み姫だよ。うん。


「……えと、この恋濡こいぬって、君のこと?」


 私はまだスリスリしてる可愛い幼女に聞いてみた。すると女の子は幸せそうな顔で頷いて、またスリスリする。

 まってクソ可愛い。ぶち犯したい。て言うか恋濡こいぬってなに? 名前可愛くない?

 濡れる程の恋ってこと? それで仔犬だから恋濡こいぬ


「いやめっちゃ可愛い。なんかドキドキしてきたんだけど」


 一応、バーラが言ってた代償なる物が気になったので、主従リストの恋濡こいぬちゃんを脳内でタップ操作、詳細を表示する。


 ◆代償装・幼神『幼杖おさなづえ恋濡こいぬ】』

 代償・常濡とこぬれ『恋愛関係、婚姻関係、肉体関係を持つ相手、又は性欲対象に対して契約者と恋濡こいぬは常に発情し、契約中は常に局部が浸潤し続ける。契約者と恋濡こいぬのどちらかが二日以上の時間を発情対象と性交せずに過ぎると、契約者と恋濡こいぬは暴走する』

 権能・感度増大

 神格招来・グレイプニル


「また十八禁か! ピンクお前は頭がおかしい!」

「あははは同意しますっ!」


 私は恋濡こいぬちゃんの能力を見て叫び、バーラは笑って同意した。

 なんだこれ、妙にドキドキすると思ったら、私これ恋濡こいぬちゃんとお嫁さんたちに今発情してる状態なのかっ!?


「…………あれ? でも私って基本そうじゃない? あ、これ私ノーリスクじゃん」


 相性が良過ぎるってそういう事か莫迦野郎。

 私って基本的にお嫁さんの近くに居たらドキドキしてるし、お腹きゅんきゅんしてるから関係無いわ。強いて言うなら恋濡こいぬちゃんの代償を解消する必要が加わったくらいだわ。

 ただ神格招来ってなんだろね? グレイプニルってのは、あの有名なフェンリルを縛った縄の事だよね。

 …………ああ、「濡」とフェンリル、なるほどそういう事かぁ。理解したわぁ。


「皆様にお渡しする幼神おさながみは、恋神こいのかみシリーズと言いまして、まぁ代償にその手の事を求める代償装なんですよね。手っ取り早いのは契約者が解消してしまうことですが、別に他の誰かに宛がって貰っても構いませんよ」

「莫迦言うな恋濡こいぬちゃんは私の恋濡こいぬちゃんだぞ誰にも渡さんっ! 」


 恋濡こいぬちゃんに触れていいのは私とお嫁さんだけだ!


「……あれ? 皆様ってことは、ルルちゃんとタユちゃんの子も?」

「ん。ノンちゃん見てこれ」

「タユもっ」


 ルルちゃんとタユちゃんがメニューを他者にも表示する設定を使って私にそれを見せる。勿論私も気になり過ぎるので、同じように私のメニューも表示設定にしてから、二人と契約した幼神おさながみちゃんの能力を確認した。

 するとそこには、十割桃色に染まった代償と能力が記載されている。


 まず、狐の幼女になった女の子から。


 ◆代償装・幼神『幼刀おさながたな恋無離こいなり】』

 代償・距離泣き『恋愛関係、婚姻関係、肉体関係を持つ相手、又は性欲対象に対して契約者と恋無離こいなりは常に極度の接触を求め、契約中は常に距離に応じた極度の悲壮感に襲われる。契約者と恋無離こいなりのどちらかが全ての対象者から五時間以上離れると、契約者と恋無離こいなりは暴走する』

 権能・効能模倣

 神格招来・五穀豊穣飯綱舞ごこくほうじょういづなまい


 なるほど。効果はひとまず置いといて、名前の由来は稲荷いなりかな?

 仔稲荷で恋無離こいなりなのか。神格が五穀豊穣ってことは、稲荷大神いなりおおみかみだもんね。多分あってるでしょ。

 よし次、兎の幼女ちゃんカモン!


 ◆代償装・幼神『幼刀【恋舐魔こいなば】』

 代償・喘舌暴飲ぜんぜつぼういん『恋愛関係、婚姻関係、肉体関係を持つ相手、又は性欲対象に対して契約者と恋舐魔こいなばは常に発情し、契約中は発情対象の体液を経口摂取したい激しい欲望と発情対象をねぶり続けたい願望に襲われ続ける。契約者と恋舐魔こいなばのどちらかが二日以上の時間を発情対象の体液を経口摂取せずに過ぎると、契約者と恋舐魔こいなばは暴走する』

 権能・刺激増大

 神格招来・仙薬杵柄


 こっちは多分、因幡の白兎が由来? 仔因幡で恋舐魔こいなば

 んー、でも神格が仙薬と杵柄? もしかして玉兎金烏の玉兎ぎょくとも混ざってる? 分からんなぁ。

 まぁ良い。とりあえず、全部読んだ上で感想を言わせて欲しい。


「噂のピンクさんとやらは、リワルドをエロゲーにでもしたいの?」


 だってこれ、たぶんだけど権能って私たちに与えられる能力的なアレだよね?

 それなら、なんで恋濡こいぬちゃんと恋舐魔こいなばちゃんの権能が感度増大と刺激増大なんだよ。こんなの完全にエロスキル…………、ん?

 いや待て待て待て、もしかしてこれ、権能って言うくらいだから汎用性は高いのか? だとしたら、もちろんそう言う行為にも利用できるんだろうけど、本来の使い方は違うのかも知れない。

 恋舐魔こいなばちゃんの刺激増大は、攻撃した時に相手が感じる痛覚とかも増大出来るのかも知れないし、閃光で目潰しとかする時も目が受ける刺激を増大して効果を上げたり…………。

 なら感度増大って言うのは、周囲から感じる気配とかを増大して索敵とかに使える感じかな? 他にも肉体の操作感度を上げたり、もし仮に電子機器とかあったら電波の感度上げたりとか…………。


「あ、もしかして超強い?」

「おっほぉ! 下ネタに惑わされずに本来の力にお気付き頂けましたかっ!」

「やっぱそれ、その手の使い方を意識させてるの確信犯かよ」

「まぁ一見ふざけた代償に見えますが、でもそれは皆様だから言える事ですよ? 特に恋舐魔こいなばなど、もし皆様ほどの深い関係になかったなら、恋人に体液を定期的に飲ませろだなんて、破局してもおかしく有りませんからね? 恋濡こいぬ恋舐魔こいなばは常時発情ですし? 生活が壊れますよ」

「………………そっか、そうだよね。私なんかはクソロリコンの性犯罪者モドキだから、恋濡こいぬちゃんを直接相手にする選択肢もあるけど、普通だったら最低でも恋人が居ないとダメなのか」


 あ、そう言われると、とんでもなく重い代償に思えて来たぞ。

 ルルちゃんの恋無離こいなりちゃんなんて、恋人が居なかったら「うわあの人エッロ!」って思った相手にでも、ところ構わず代償が発動してストーカー化しちゃうんだもんね。

 恋人が居たとしても、私たちみたいな特殊な生活をしてる恋狂いじゃなかったら、普通に自分の時間くらい欲しいし、互いに仕事や用事だってある。

 それをなに、五時間別行動で暴走? え、こわっ……。

 暴走の程度にもよるけど、代償にそった内容の暴走でも、普通に暴力的な行動に出るタイプだとしても、どちらにせよ洒落にならない。私とタユちゃんなんか、代償に合わせた暴走だったら何やらかすのさ。道行く幼女犯し始めるの?

 ぽ、ポリスメーン! 早く来てぇ!


「えぇマジかよこっわ……」

「ちなみに、契約者が負うべき代償と、手に入れる権能。そのどちらもが元々幼神おさながみの物です。つまり幼神も同様の代償を支払ってますし、幼神が自分で権能を使う事も出来ます。あとは色々とマスクデータも有りますが、今明かせる仕様についてはメールボックスに送っておきますね? 幼神本人たちは喋れませんが、必要なら筆談も出来ますので」


 ふむ。仕様については絶対に読もう。これ私達だからほぼノーダメージだけど、普通なら人生が壊れるレベルの代償だぞ。

 恋濡こいぬちゃんの発情能力なんて普通にやべぇよ。独り身だったら見ず知らずの相手にも「エロ!」って思うだけで濡れ始めるとかヤバすぎるでしょ。恋人が居ても二十五時間ずっと興奮し続けてるとか、相手に愛想尽かされても仕方ないし、何より健康に悪そう。心臓壊れるのでは?

 どのくらいヤバいかって言うと、人前なんて絶対に嫌なはずの私が、バーラとミハくんが居るこの場で恋濡こいぬちゃんをブチ犯したくなってるくらいに代償が強いのに、これが二十五時間ずっとでしょ? 普通なら頭おかしくなるんじゃない?

 暴走条件満たさなくても勝手に暴走する可能性まであるぞコレ。

 私が今ある程度大丈夫なのは、そもそも恋濡こいぬちゃんが居なくても私、ルルちゃんとタユちゃんを二十五時間いつでもずっと年中無休でブチ犯したいヤバい奴だからだ。

 つまり既に状態異常『猛毒』になってる人に『猛毒』使っても意味無い感じだ。だけど、そんな無意味なはずなのに発情が強くなったと感じるくらいには代償が強いので、改めて考えるとこの子達って普通に『呪いの装備』だわ。


「あー、スリスリしてくる恋濡こいぬちゃん可愛い。恋濡こいぬちゃんは私の事すき?」

「…………!」

「あ、さっきは鳴いたけど基本は鳴かない感じなのかな?」


 それでも元気よく頷いてくれた。可愛い。うん今晩ブチ犯すわ。

 ルルちゃんたちの方も似たような感じだと思うし、みんな一緒に楽しめば良いよね?


「そう言えば、恋神こいのかみシリーズとか言った? じゃぁ他のタイプの代償を要求する幼神おさながみも居るの?」

「もちろんです。比較的代償が緩い幼神おさながみも居ますし、相性が悪かったら命に関わるような代償の幼神おさながみも居ますとも。恋神こいのかみシリーズは割りと重い方ですが、その代わり相性が良ければほぼノーリスクで済むのも特徴でございますよ。特に飲み姫様なんか、この中で一番代償が軽いのでは?」

「……ああ、確かに」


 タユちゃんは恋舐魔こいなばちゃんが居ても居なくても、どっちにしろ毎日舐めて飲んで幸せになりたいんだもんね。

 代償がライフワークなんだもん。幼神おさながみが居なくても二十五時間私とルルちゃんの体液を狙ってるんだもん。タユちゃんの場合はマジでノーリスクなのでは?

 発情については分からんけど、タユちゃんも結構私と似たところ有るしね?


「それでは、お詫びも渡せましたし、ワタクシはそろそろお暇いたしますっ!」


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