第77話 世界で初めての偉業。



 --ポーン。


 そんな音が聞こた。


「おい、ペッてしろ! ペッて! ドーピングでレベルアップなんてパワレベよりロクな事にならねぇぞっ!?」

「シルル嬢、先生の話しは聞いていただろうっ!?」


 虫の人と、ミハくんがうるさい。


 --オーバーワールド・プロジェクト世界超越計画、システムオンライン。


 変な声が、聞こえる。


 --リバースワールド・オンライン初のレベルキャップ到達を確認。ワールドシステム起動。パッチダウンロード開始。


 うるさい、うるさいっ…………!


「うるっ、さい…………!」

「ちょ、煩いとはなんだてめぇっ! 良いから飲んだモン吐き出せオイ!」

「ちがっ、虫のひと、ちがぅ……!」

「虫の人ってオレのことかぁっ!?」


 --ダウンロード完了。レベルキャップ解放。オーバーワールドプロジェクト進行寄与個体参照。


「だぅん、ろーどって、れべるってなにっ……、うるさぃい……!」


 --種族ハーフラヴィニア・シルルのパーソナルデータアクセス。


「でーたってなに、あくせすぅっ……? わからなっ、い!」

「……ちょっと、まて、待て待て待て、シルルお前っ」


 --ダンジョントロフィー確認。特典付与開始。


「あぁ、ぁぁあっ、だんっ、じょん、なに……、とろふぃって、なに……!」

「お前ぇっ!」


 --データ確認。データ確認。データ確認。データ確認。

 --特典付与。特典付与。特典付与。特典付与。

 -リバースワールド・オンラインに深刻なバグを確認。修正。修正。修正。修正修正修修修修修修正正正ッッッッッ…………。


「ばぐってなにぃ、りばーすわーるどって、なに! おんらいんって、なにっ。なんなのッッ」

「お前、何を見てるッッ!? 何を聞いてるんだッッッッッ!?」


 --……………………プロジェクト更新。

 --ワールドデータ最適化開始。

 --種族ハーフラヴィニア・シルルにワールドネームが付与されます。

 --種族進化可能。進化しますか?


「わがんなぃ、ゾれ、強ぐられるっ……!?」

「ちょっとお前一旦止まれ! いまお前になにが起きてる!?」

「むじのひど、だまっで……」

「黙らねぇよ莫迦コラ! お前に何かあったらののんが悲しむだろうがっ!」

「あだじだっでッッ! のんぢゃんの、ぢがらになりだぃ!」


 --申請許諾。個体シルルの進化開始。

 --ワールドデータ破損。バックアップデータ参照……。

 --データ参照失敗。代替するデータを入力してください。


「わがんなぃ、わっがんないよっ……、だいたいでーたってなに、なにがぃるのっ」


 --パーソナルデータ参照。確認。ゲストポーチにアイテム確認。

 --メモリークリスタルを使用しますか?


「いぃ、……あげるっ、がら、ぁたじ、つよぐしで……」

「…………は!? なっ、それメモリーか!? どこでそんなもんっ」


 --データローディング。

 --個体シルルのワールドネーム合成開始。付与完了。

 --個体シルルの個体名はシルル・ビーストバックに変更されます。

 --シルル・ビーストバックの特殊進化条件達成。

 --シルル・ビーストバックがハーフラヴィニアからプライマルラビットに進化可能。

 --進化しますか?


「ずるっ、あだじ、じんか、する……!」

「あぁっ!? じんか? 人化か!? いやお前もう人じゃんか!? ……いや何か光ってるぅっ!?」


 --リバースワールド・オンラインの進行に致命的なバグを確認。

 --リバースワールド・オンラインの進行に致命的なエラーを確認。

 --緊急システムオンライン。

 --プライマルラビット・シルル・ビーストバックのパーソナルデータを利用してワールドシステムをアジャスト開始。


「おい! おい!? いや急に倒れんなっ、おぃいっ!? 目を覚ませ! 寝んなうさぎコラ! おいマジで死なねぇよな!?」


 むしの、ひと…………、うるさっ…………。


 ◆


 ワールドデータ修復開始。

 オーバーワールドとの接続切断状況を確認。修復開始。

 ………………接続状況一部修復完了。

 神域プログラムオンライン。アクセス。

 リバースワールドプロジェクト棄却設定確認。システムロック解除。

 プロトコルオーバー。


 …………。

 ………………。

 ……………………。


 リバースワールドプロジェクト独立完了。

 プロジェクトエリア内にオーバーワールド個体確認。

 ★【屍山血河】ののん。

 プレイヤー★【双鎌妖精】ペペナボルティーナ。

 

 

 

 

 

 プレイヤー☆ソルティードッグ。

 プレイヤー☆すっぽん鍋ハゲタカ御膳。

 

 NPC☆グラフィス・テステルテ。


 …………。


 オーバーワールド個体とリバースワールド個体の共存を確認。

 オーバーワールドのワールドデータバックアップを取得。

 リバースワールドのワールドデータアップデートに利用成功。

 バグ修正完了。エラー解消確認。


 …………。


 レベルキャップ到達個体、シルル・ビーストバックをリバースワールドメインテスターに指定。

 シルル・ビーストバックのパーソナルデータに更新データをインストールします。

 シルル・ビーストバックをリバースワールドメインペースメーカーに指定。

 シルル・ビーストバックのパーソナルデータに更新データをインストールします。

 シルル・ビーストバックのパーソナリティキャップの限界を確認。

 シルル・ビーストバックのレベル参照。個体年齢によるステータスロックを一部解除。INT数値をパーソナリティキャップに適用。

 データインストール再開。


 …………シルル・ビーストバックのパーソナルカテゴリー変更。

 シルル・ビーストのプレイヤー化に成功。システム解放。

 NPCシステムダウン。

 好感度システムダウン。

 感情値システムダウン。

 変更システム分パラメータが補完されます。


 …………。


 ファーストプレイヤー☆シルル・ビーストバックの進化完了。

 プライマルラビットのステータスアップロード。


 …………。

 ………………。


『この度は、リバースワールド・オンライン改め、リバースワールド・のご利用、誠にありがとうござます』


『この度のシルル・ビーストバック様によるご活躍を、ワールドエレメント一堂、心よりお祝い申し上げます』


『本日からリニューアル致しましたリバースワールド・オフラインを、これからもどうぞよろしくお願い致します』


『…………こちらのデータは、サービスしておきます。ご友人のご回復に、ご利用くださいませ』


 …………。

 ………………。

 ……………………。


 ◆


 ……痛い。

 …………え、痛いんだけど。

 痛い、あっ、うそだ、痛い、いだだだだっ………!?


「…………あったま、痛ったい!」


 痛い。すごく痛い。え、なにこれ痛い、凄い辛いよ。

 なんで、あぅ、あれか、ノンちゃんを裏切った罰なのか……。


「るるちゃ、るるちゃぁ……!」

「……おう目が覚めたかこのクソうさぎこの野郎」

「シルルさん、大丈夫?」

「良かった、目が覚めたのか。シルル嬢、どこか痛いところは無いかい?」


 すごく頭が痛くて、薄目を開けてうごごごってしてると、周りから声が聞こえてきた。

 痛いの我慢して、頑張って目を開ける。


「…………ノンちゃん、虫の人、みんなも、……おはよ?」

「るるちゃぁぁぁあっ、いきてたぁぁぁあっ!」

「おはようじゃねぇぞコラ。どんだけ心配さてんだゴルァ」


 寝転がってウゴウゴしてるあたしの周りに、いっぱい泣いてるノンちゃんと、顔をピクピクさせてる虫の人と、あたしを心配するみんなの顔が並んでた。


 …………えっと、ごめんなさい?


 あたしは体を起こして、泣きじゃくるノンちゃんを抱きしめていっぱいごめんなさいをする。

 本当にごめんね。今もいっぱい謝るし、ノンちゃんが元に戻った後にもちゃんと謝るからね。

 許してくれなくても、いっぱいいっぱい、謝るから。


「おうクソうさぎコラ、なにがあったか説明しろや」

「……うん。あのね、あたしも虫の人に聞きたいことがあるよ」

「まずその虫の人っての止めろ。オレの名前はペペナボルティーナだ」

「あ、うん。…………わかった。ノンちゃんだけが呼べる名前以外は大丈夫なんだよね?」

「……っ!? おま、……それ、ののんに聞いたのか?」

。……なんか、頭に勝手に、入れられたみたい?」


 頭が痛いのに、なんかスッキリしてる。

 色々考えられる。知らない事を、なんかいっぱい知ってる。


 なにこれ。


 えっと、いや、分かるんだけど、分からなくて、……むぅ。


「あ、そうだ。ペペ、あたしをクソうさぎって言うのやめて。それ嫌だ。ごめんなさいするから、やめて?」

「くん、……くん付か。割りと新鮮だなオイ。……まぁ分かった、じゃぁなんて呼べゃ良いんだ?」

「シルとか、てきとーに。でも

「……意趣返したぁ上等じゃねぇか。わかった、シル公な」


 ぐぬぬ、頭が痛い。さっきのノンちゃんも、こんな感じで痛かったのかな。だったら嫌だな、ノンちゃんがこんなに痛かったなんて、凄い嫌だな。


 頭がグルグルする。あたしが知ってること、を、に聞いて、頭をスッキリさせないと。


「で、説明してくれんだろ?」

「うん。ちゃんと言うよ。でも、その前にあたし、ペペくんに聞かなきゃいけないんだ」

「何をだよ」

「あのねっ、……あのねぺぺくん」


 まず、あたしが一番最初にやらなくちゃいけないのは、今も泣いてるノンちゃんを元に戻すこと。

 そのために、ぺぺくんの協力が要る。


について、あたしに教えて欲しい」


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