1章3節5項(21枚目) 裏話(仮面暴徒)
必要な場面で動員したいと考えている。
従って消耗・損耗を避ける方針で行く。
その方針に沿い、明朝まではあらゆる交戦を控える。その事態に発展させるとしても、進行を阻止する敷地に踏み込んできた者たちだけとし、他は
また日課である町の出入口の監視は続ける。
ただし
己の身を第一と考え、ちょっかいをかけない。下手に戦いに発展するのを阻止するために無視する。無闇に散らさないためにも積極的に行動を起こさない。
それだと
だから見せしめで殺す。
確保に当たるためにも最初に監視の目を
その結果を以ってして、この町から離れる意味を教える。今まで
間違いなく、酷い目に
親切に
以上を
長期戦になる覚悟で行動に当たる。疲労を残さないためにも、交代に気を配るように。
「色々と話し合ったが、このように行動しろ。他の者にも伝え、
首領が締め
「承りました。早速、その指示に従いたいと思います」
3人を代表して、ダイガが口にする。
そして首領に背を向け、
他の2人、ストレージ兄弟もダイガに追従する。返事を行動で示した。口の代わりに挙動で意思疎通を図った。
「言い忘れたことがあるから、ちょっと待て。振り返る必要はない」
その言葉を聞いて、ダイガは足を止める。そのダイガを追い越し、
「俺たちの下にいる女2人は逃がさないようにしろ。大事な客だから引き留めておけ。
さらなる対応を強いられた。
上からのお願いであるため、無下に断ることはできない。
「それも合わせて、行動させていただきます」
それを分かっているため、ダイガは反論しない。覆してもいいことは起きないと分かっているため、そのまま受け入れる。
また客と言っても丁重に扱う意味ではなく、拘束する意味であることを理解した上でその者たちと接する。
首領に命令された時点でその答えに辿り着いた。やっていることは首領と変わらず、下の者に押しつけているだけにすぎない。
違うのは
だから
首領が描く構図を実現させるための手配に
現実に起こすために活動を強いられる現場監督兼執行者以下の者たちも苦労を重ねる。ほとんどの者が事情を知らないから、溝が広がるだけである。上の意向が把握できないから、下りてきた指示を素直に受け取れない部分もある。特に己の
立場と実力を考えると、そうそう冒せることではない。
しかし
押さえつけたところで我慢を重ねることには変わりない。許容が超えれば、何を仕出かすか分からない。
反旗を
はたまた周囲を感化させ、決起に走る者もいるだろう。自身の意見が通らないから、全体の意見に仕立て上げ、行動を共にさせようとする者も現れるだろう。
どのような場合であっても、上の意向に背くことは明白である。
対象になる者を
そのような意味を込めて、交流を行っている。すれ違いを起こさないように努め、
意見交換を行うように取り計らっている。上の者が抱える事情を示し、下の者が抱える不満を示す場を設け、歩み寄れるようにしている。
組織の
その判断も含めた上で首領は構図を描いている。組織が
そのためにも首領は次なる行動に移る。
現場で駆けずり回る
「君たちとも話したいから、顔を見せてくれたまえ」
そう言うなり、壁の一部が崩れる。大窓と向き合う正面扉以外から侵入する。
しかし2人ともローブとフードで体と顔を隠していた。
首領が呼び出した人物なのか疑問に思える出で立ちだった。
「2人とも待たせてしまったが、裏で話を聞いていてくれたかね」
けれど首領はその点を気にしなかった。
警戒することなく、事を進めるから、求めた人物で相違ないのであろう。
「
「下働きする奴らが徒労になる方針だったな」
自席に戻った首領。
そして
その2人は席に着くなり、各々、先ほどの質問に答えた。
「ほう、どの点を言っているのかな?
不可解と申した者に問いを投げる首領。腹を立てたわけではなく、純粋に気になっただけである。
その証拠に
「町の奴らを盾代わりにして、勝利を収めても、目的が
コレクターは首領の
「それは結果論だ。誰も望んで行動したわけではないことを覚えていてくれたまえ」
「だがそれで周囲が納得するとでも」
しかし首領の答えに納得しなかったのか、コレクターは食い下がる。
それも当然か。望んでおらず、考えに及んでいなければ、何をしても許されると
己に不利益が生じても、文句を言うなと宣言しているようなものだから。
首領の言葉を許せば、実際に損害を被った際、何もできなくなる。追及はできず、泣きに入るだけだ。実利に見合わない投資と消費を強いられるだけである。
だからこの者は抵抗しているのであろう。
周囲に影響を及ぼしかねない問題であるかのように振舞うのはそれが理由であろう。苦しむ様を眺めようと楽しむ反面、考えを隅々まで巡らせろと発破をかけているのであろう。
首領を責めるのは自分に被害をもたらせないように取り計らせるためであろう。口答えしたのはそのことを促すためであろう。
だからしつこく絡むのも
「確定した後に文句を言うのは簡単だ。揚げ足を取るのは無能でもできる。
「私を無能だと言いたいのか」
首領は追求に
そしてその者は見事に乗っかった。
いや、乗せられたというべきかもしれない。
「勘違いしてもらっては困るが、君を
すぐさま、訂正に入るのがその証拠である。
「この
首領はコレクターが犯す悪行をばらした。
「それだけに留まらず、大量の仮面を抱える、
さらに他にも犯していた悪行もばらした。
それでも捕えかねない要因を自ら作り出す始末である。
非難していたコレクターが
しかし誰もそのことを気にしない。
図らずも、自身に不利益をもたらす事実を打ち明けられたコレクター然り。
首領に視線を送られても無視する
抱える事情は違えど、お互い、今さら何だと突っぱねるかのように沈黙を貫いていた。
「しかし君は考えなしに動いていない。
俺と手を結ぶことで仮面を手放さないようにしている。外部顧問として組織に協力することで自身を守っている。
そして俺たちと協力関係にある今でも己の理想のために
現状に満足せず、
そのことからして、どうして君を無能と呼べる。誇らしいことではないか」
誰も口出ししないから首領の話は続いた。
無能でないことを説明し、怒りを
首領の言動により責める立場がいつの間にか入れ替わっていた。
しかし首領がコレクターを気に入るのは理解できる。
配下にあらず、
実に首領好みの人物である。己の道を
首領が言うように
集団単位で言えば、
しかし
事前に話を通しておけば、
ただし
当たり前ではあるが、悪事を働き、
個人単位で言えば、
その場合の前者は条件付きではあるものの、
逆に後者の場合、いくつかの手順を踏まなければ、仮面を所有する認可は下りず、その保障もない。
手始めに
申し出を行い、
受諾する
没収されるのを阻止するため、期間が過ぎないように気を配っている。うっかり過ぎてしまえば、そのような目に
また仮面を所有する権利とは別に報酬も支払われる。
内容を明示した上で契約に臨ませている。契約者が選べるように複数の依頼を提示している。自身に見合ったものを選択できるように
必ずその中から選ぶ必要もない。
依頼をえり好みしたいのであれば、数多の依頼が集まる、
依頼を受け、成功に導かなければ、仮面を所有する権利は貰えないものの、選択肢を縮める必要はない。仮面の所有を認めさせる方法はいくらでもある。
依頼の中身は難易度によって様々である。厄介事であっても、
なぜなら依頼を失敗すれば、その同伴者の評価に関わる。監督不行き届けになり、処罰を受けることになる。組織内での出世や地位に影響が及ぶため、その者も真剣に取り組む。失敗しないように方策を打つ。認可を受けようとする者だけが必死になっていない。
そこまでの過程を経て、仮面の所有が認められる。
いくつもの依頼を受け、何度も成功させれば、
その辺は出会いが大きく関わるため、何とも言えない。気にかけてくれる存在がいなければ、話にならない。数をこなせば、湧いてくるとも限らないため、
そして
同じ仮面を使い回ししたいのであれば、それぞれで届け出を行い、資格を獲得しなければならない。
本来の持ち主から離れた代物であっても、同じである。返却されることはない。強奪され、取り返せなかった時点で諦めてもらう他ない。強引ではあるものの、所持するに相応しくない存在だったと言われれば、それまでである。
その理屈は
どちらにしても
貢献に値もしない
そのこと自体、
これらの規定に
しかしそれは
いくら元
そしてある1人を除けば、
ほぼ全員、規則を無視している。好き勝手に行っている。
その事情を建前に
「俺たち個人が掲げるものは違っても、そこに至るには協力するのが合理的だと判断したのであれば、見下すはずもあるまい。機嫌を損なわれては互いの強みが活かせなくなる。提供を拒まれれば、今後の活動が危ぶまれる。己の渇望も遠ざかるものになる。それらの点を考えれば、君を
早い話、仲間であるから、
「そう思うのであれば、下手な挑発をしてくるな」
これ以上、怒ったところで何も良いことはないため、食いつくのを止めるコレクター。今のところ、破産に追い詰められる状況になっておらず、またその前段階にも達していないため、付き合うまでである。
逃げ切れる状況でもないため、手を振り解かないことにした。
出し抜いて逃げるのも難しいとコレクターは考えている。
しかしせめてものの抵抗をした。
言葉遣いを気を付けなければ、裏切ることになるかもしれないぞという意味を込めて、首領に言葉を返す。
出し抜いて逃げること自体は考えている。
そのようなことを考えた上での発言である。
「私は心配しただけにすぎん。お前の命令は配下の願いを切り捨てるものだ。自分たちのやりたいことをやるために
しかしそれがきっかけで
今回の戦いに負けない策だとしても、仲間割れを引き起こす事態に発展させる真似は引き起こしたくないものだ。
理由は違ってもお前にとっても痛手だろう。共同資産を手放す事態にはしたくないぞ。
だから口を出さずにいられない」
あまり刺激させないためにも先の言葉を緩和する。協力相手を気遣っている印象を残すように言葉を添えた。
「苦労の押しつけ先は別の場所を襲えば、すぐに見繕える。風評と脅威を以ってすれば、それは比較的簡単なことだ。一部とはいえ、
しかし仮面に選ばれし者を陣営に迎えることはそういうわけにもいかない。
だから規模を削ってまで、一時的に
足止めされ、先に進められないのであれば、目指すところを目指せられなくなる。それだけは勘弁してほしいものだ」
首領が取ろうとする作戦は間違っていないと評価する。
目くじらを立てたいわけではない。首領の行動も理解している。
苦労の押しつけ先を食い潰してでも、ここに来た
首領の配下が歯向かってきたときにどのような態度を見せるかと思ったから、試しただけにすぎない。下手を打たないためにも練習に付き合ってあげただけだ。
神経を
そのような意味を持たせた弁明をコレクターは行っている。責めていた部分、手を切るかもしれない材料を
「身内が裏切るときは君に期待する。この屋敷にある仮面のほとんどは君の所有物だ。安心して任せられる」
無用な心配はいらないと言ってのける首領。コレクター自身に当たらせることで発生しうる障害を解決していた。
首領が言う、コレクターの支配下の例外にある存在を指差しつつ、コレクターが気にかける
釘を刺しつつ、首領はコレクターを持ち上げる。警戒に目を向けさせないためにも調子に乗せようと画策する。さらなる面倒を抱え込まないためにも必要な措置を取った。
「そう思うのであれば、貸してやった仮面を失わせてくれた責任をどう取るつもりだ。私の
しかし裏目に出てしまった。
今日、バイ・カンポのせいで仮面が壊れた件に口を尖らせるコレクター。
最初に問いかけたときは違い、
依存していることを強調しすぎたせいでコレクターの
「仮面が壊れた責任をこちらに求められても困る。お互い、同意を得た上であの者に仮面を渡した。立ち会いに応じておきながら、今さら、文句を言うものではない」
しかし首領は問い詰めに来た相手の態度を全く気にしていなかった。
仮面を借り受けている身でありながら、開き直っている。
「気性が荒いのは知っていただろう。仮面を与えれば、より
それでも迫る危機に抗うためには仕方なかったのではないか。
俺も不安はあったが、使える者は使うべきであろう。然るべき過程を得ずに何人も増員したのは心苦しいかもしれないが、ここで
それを分かった上で俺の誘いに乗ってくれたのではないか」
この
「それでも自覚を持ってほしいものだ。
仮面に選ばれし者にはそれなりに振る舞ってもらいたいものだ。未熟であっては仮面がいくつあっても足りない」
全ての
それでも己の信条に従い、行動するコレクターにとっては譲れないことだった。
だから食いかかる。
冗談など、一切なく。関係を続けていきたいのであれば、頭に入れていて欲しいものだという意味を込めて。その言葉を以ってして、これ以上の追及は避けようとしていた。
「君のこだわりはわかっている。
だからこれから先のことを話し合っておきたい」
首領も余計に食いかかる真似はせず、話を切り上げる。
仮面を集めるだけに
使い手の器量にまで気にかける、コレクターの神経質な部分を首領は知っている。
仮面とその使い手を1つと見なし、その組み合わせで手元に置く。仮面に宿る性質を行使するに相応しき存在に囲まれ、日々を
所有するため、売買するため、観賞するためなど、
しかし一種の道具として扱う、その境地は異端そのものである。
主を殺せば、手元にある仮面を己の意思で自由に扱える。
その意味を忘れさせるほどの
少なくともそれを可能にするだけの何かがない限り、ここまでの理想は掲げ続けられない。
コレクターはそれを可能にする方法を知っており、欲していた。実現の見込みを抜きにして、
その結果、当時、
コレクターが欲しがる代物を用意すること。
仮面とその使い手を結びつける代物を用意すること。
そして先の役割を果たす人物を用意することを約束して、首領はコレクターに申し入れた。
その約束のうち、2つは首領が
そして程なくして、残る1つも果たされるとコレクターは首領の申し入れを受け入れ、正式な協力者になった。
お互い、見合う価値を交換して、仲良くやっている。
お互い、交換している価値を見逃すほど、甘くはない。
お互い、相手の
全ては己の野望のために動いている。そのため、相手が
取り戻せるのであれば、また話は変わってくるが、そういうわけにもいかない現状だから、今は成りを潜めている。
単純に相手の価値を利用しなければ、成り立たない状況でもあるため、裏切ることもできない。
従えさせられない己の
自前で用意できず、代替の目処が立たない以上、頼る以外、他にない。利用できるうちは利用し、障害になり得るその日まで、相棒と見なしていくしかない。
お互い、それを理解した上で行動している。
「君が傷物にするなと俺に命じた女2人の件も含めてな」
だから首領はコレクターの
自身にとっても実のある話でもあるため、許している。
「
例え、片方は可能性にすぎない話ではあっても、余り酷な仕打ちはしていない。機会損失を失わないためにも確保している。
配下の
しかし
逆らった場合の仕打ちを緩めている程度である。即処分に走らない措置を施しているにすぎない。
それぞれに相応しい仮面の正体を探り、実際に仮面があれば、授けている。
どの仮面を持ち合わせているかは配下に知らされておらず、また授けるタイミングは首領の
それでも授けられる側が利益を手にすることに変わりない。
戦いの際、前線を張ることにはなるものの、より
平時であれば、仮面を持たぬ者に雑務を
どちらが勝つか等、考えるまでもないため、その者は大人しく従う。
そういう事例があるため、
しかし
何ももたらしていないから当たり前と言えば、当たり前である。実績がないため、そのように扱う意味と言われれば、それまでである。
仮に首領たちが望む状態で彼女を手中に収めたとしても、配下が自由に扱えるものではない。配下個人の理由で使わせるつもりはないため、秘密にしておきたいと首領は思っている。都合の悪い事実が暴かれる可能性もあるため、限られた者たちだけでいいと考えている。
公にしたくない事情があるため、それなりの理由で浸透させている。
正体を探るために捕らえている。
仕向けられた理由を知るために
誰かに雇われておらず、個人の意思で動いているとすれば、その目的が何かを知るために
その名目で動いているため、手厳しいことを封印させている。死んでしまえば、情報は手に入らないため、禁じている。
さらに
瞬時に
実際にその女性が何も語らないから、対処の施しようがなかった。多少、痛めつけても、
しかし名目に現実味が帯びて、ある意味、幸運と言えた。
彼女の存在が不気味ではあるものの、配下の疑問を
「君の言う通りだな」
現時点に
コレクターの話に迎合するのはそれがあってのことだ。ご機嫌取りで丁重に扱っているわけではない。
「死なないでくれるのは嬉しい限りだ。使い切りでないのは非常に助かる。記録が確かであれば、君の言う通り、情報収集で重宝すること、間違いない代物だ。
しかし過去に使いこなせた者がいないから疑わしい限りだ。
何せ、過去に被った誰もが
しかし今、処断できることではないため、そこまで深く悩む必要はない。
今はそこに思考を傾けている場合でもないため、放置している。その局面に陥ったときに労力を注ぎ込めばいいので、首領は目を
「そういう情報は君が所属する
自身の語りを裏付けるためか、今まで会話に加わらなかった存在に話題を振る首領。わざとらしく話に加わるように仕向けた。敵対するであろう現役の
「数秒、持ち
伝承を検証できないままに終わったという話を身内の先輩から伺っている」
口を閉ざし、微動だにしなかった男性は
「死刑道具としては優秀でした。実際に使われはしなかったが、そう例える人もいました」
面白くもない冗談を披露して、話を先に進める。
「しかし再び行えと上層部から言われたところでも行えない実験でもある。
何せ
素性は偽っているものの、自身が所属する組織を陥れる切り口にもなり得る話も披露する。
歯向かう存在を敵と見なす
「そんな話は知っている。前にあんたが教えてくれたことじゃないか」
そしてコレクターは何も驚くことなく、文句を言う。
口を割った者の方に顔を向け、悪態を吐く。取り押さえられる心配もせず、平然としていた。
かの者が
「まあ、そう言うな。俺が
そして今裏切られては困るため、関係を取り持った。
ここで野望が
「ともかく、
茶々を入れられる前に話を先に進める首領。
「あのとき、君の助言通り、
無能な判断を止めてくれた感謝をコレクターに伝える。
「もちろん、その情報をもたらした君にも感謝している。有益さを語ってくれなければ、処分していたかもしれない。考えを見直す機会を貰えて、嬉しく思っている」
角が立たないように
決して嘘を吐いているわけではない。事実に対し、評価を下しているにすぎない。
ただ、それだけである。
「俺たち3人にとって、幸ある未来にするためにも君たちに頼みたいことがある」
そのためにも話を戻す。無駄話はこれくらいにして、準備を進めることにした。配下には荷が重い役割を2人に任せるつもりでお願いする。
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