1章2節11節(15枚目) 決行日前夜③
「そうだな。
この者たちの野望は仮面を手に入ることだ。
だから真相を
追い求めるだけの価値がないからだ。
意気込みはいいとして、仮面の情報は一体どうやって仕入れたのか。
「そうだね。わざわざ、この時期を選んだのも私たちの行動から目を
今さら指摘するほどではないが、わざわざ
つまりティアスとピルクとその仲間は
同じ理由で
それ故に単独でもやるのも
どこまで本気かは分からないが、相当な自信家か、もしくは夢想家なのは間違いない。
願望を具現化させるだけの力を有しているのか、それとも絵空事を描くのが達者なだけなのか。
知る者が限られている情報を手にして、有頂天になり、気を大きくして行動を起こしているだけなのか。
それとももたらされた情報に対して、過敏な反応を示さず、実力が
さて、この者たちはどちらに属するのやら。
「そうだな。その責任を含めて、正面切って戦うのは
付き合う義理はないと口にするティアス。
「そうだね。私たちは平和を望んでいないし、
当然だが、ピルクも同じ意見である。
「わざわざ死にに行くつもりはない。
他者の苦しみより我欲を優先する。その果てに死んだとしても悔いはない。
やっていることが
ただし
平穏に過ごす者たちを追い込んでいない。
他者を
しかし、この者たちの話が本当であれば、悪者に対しては
同族に対し、礼節を払えない存在であれば、徹底的に嫌悪する傾向にあると評しても間違っていないと言える。
悪評を立てた者が報いを受けても、多くの者は嫌な気持ちにはならない。自業自得として見逃すことが大抵であろう。
それでも悪の権化だと誰もが認める存在に何をしてもいいことには繋がらない。
事情があれば、悪逆非道を尽くしても構わない理由にはならない。
それでは法は機能しない。
その思念を認めてしまえば、誰もがやりたいように行動してもいいことに繋がる。
それこそ、まさに
それでは殺伐とした世界へと早変わりする。
撃たれる前に撃ってしまえ。
過激な信条が常となる。
そうなると世界は滅びの道へと辿る羽目に。こと人類に限れば。
けれど波及した結果、他の生命体を道連れにする可能性もあるやもしれない。
最悪、世界に点在する物語、世界再興物語の序章部分に至る場合もあり得る。そのような未来は絶対にないとは言い切れない。確率を計算しても限りなくゼロにも等しい数値ではあるものの。
その万が一の事態を引き起こさないためにも法は存在している。
突き詰めれば、法とは人類の滅亡を阻止する機能だと言ってもいい。
約束を破りし者がいないことを見張る役割と対象となる者に
簡単に踏み込まないように定義することで安息な世界を目指している。
見せしめを用意して、初めて、人類は
脅かしにもほどがあるものの、そんなに大きくは外れていない。人類の滅亡を除けば。
例え、
そのおかげで救われる者たちがいる。
手を差し伸べてくれる。不満は募っているだろうが、自分たちではどうしようもない問題を取っ払ってくれる。
大義名分を持たないティアスとピルクたちとは大違いである。
逆にこの者たちは
それくらいに危険な行為をティアスとピルクとその仲間は冒している。
自覚した上で騒動に関わっている。全ては野望のために。
「だからと言って、先走りしないでね。
全員が揃ってからだよ。皆を仲間外れにしちゃ駄目だぞ」
ピルクはティアスに抱きつく。
そして締め付けを強くしていく。
ティアスの背中に自分の胸を押し当てて、密着して、離れまいとする。
「レオレお兄様に、ガクウ様に、ラピス様に、キミと私でやるんだからね。勝手は駄目だぞ」
ティアスに言い聞かせるピルク。自分1人だけの問題ではないと認識させるために。別の思惑で1人動き出そうとするティアスに釘を刺す。
仲間想いで行動を起こしたのか。
それとも作戦に関わる者を無駄に散らしたくないが故に行動を起こしたのか。
引き止めに走った理由は不明だ。
しかしそれを除いたとしても、混乱極まる場所にわずか5名で突撃することに驚きを隠せない。
それが正直な感想だ。常軌を
数だけが力とは言わないが、限度はある。確認されているだけでも40人近く、
情報の提供者が作戦遂行の足しになる人数なのか判断しかねるが、それでも不安は残る。
根底を覆すほどでなければ、集団自殺を敢行しているのと大して差はない。
交戦を前提にしておらず、暗躍に留める。必要とあらば、戦うことを辞さない。
そういう認識であったとしても、群集
動きやすさ重視とはいえ、
やはり、簡単には知り得ない情報を手にして、有頂天になっているだけではないだろうかと思えてしまう。
己の力量を推し量れず、何でもできる気になっているだけではないかと感じてもおかしくない状況である。
騒動が起きる現場でこの者たちを見かければ、そのように思われても不思議ではない思惑である。実に馬鹿げていると。
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