1章2節8項(12枚目) 世界の現状

 東と西の2つの大陸。

 前者は人種主導の統治領域フィールド。特殊な仮面により自然の恵みを取り戻せた場所。前時代の全てを手にできたわけではないものの、比較的復興に成功した領域と言われている。そこにこぞって、人種が居座っている。危なげなく、生命活動を全うすることを考えれば、当然と言える。

 一方、後者は人種に見放された発展途上領域。同じ特殊な仮面により復興に力を注がれたものの、東の大陸ほど、自然の恵みを取り戻せていない。資源が潤沢じゅんたくではないため、不便な生活を強いられる。それ故、人種は好んで在住しない。多大なる開拓者精神を持ち合わせていない限り、敬遠されている。表向きの理由は。

 そして両大陸に挟まれた諸島。

 俗世から隔絶された領域。人種がいないわけではないものの、積極的な移住は勧められていない。島と大陸の航路が確立されていないため、到着する確率が低い。特殊な仮面である程度の復興は成されているものの、贅沢な暮らしが約束されているわけではない。命の危険を晒してまで冒す価値があるとは言いにくい。

 以上がこの星にける人種の住処である。

 島に限れば、他にも世界に点在している。

 しかし自然のあおりが色濃く反映されている。

 自然の恵みが富んでいないため、安定した生活は望めない。一時しのぎは可能でも、根を張るのは難しい。少人数1世帯の生活が成立しても、社会性を持たせられるほどの規模には広げられない。大々的に特殊な仮面による開拓を実施しない限り、非情に困難な道である。

 住処についてはこの程度にして、話題を東の大陸を統べる組織へと変える。

 現在、東の大陸は仮面組織パレスと呼称される3つの統治機構によって統べられている。

 仮面装属ノーブル仮面展意インテル仮面牢武クローザー

 人種はそのどれかの統治領域フィールドで庇護を受ける形で生活を営んでいる。

 まず仮面装属ノーブル仮面の適合者バイパーを神格化した、仮面の適合者バイパー絶対主義を掲げる組織。東西の大陸と両大陸の間の諸島、全てを統治していた時代もある。

 しかし今は東の大陸の中央部までに狭まっている。

 それでも人種最大勢力を誇っている。

 活動目的は今も昔も変わらず、世の中の発展に尽力している。

 そのために仮面の適合者バイパーを結集させ、様々な分野に当たらせている。

 仮面の適合者バイパーを積極的に本部に迎え入れているのもそのためである。

 仮面の適合者バイパーにはなれないがそのことを差し引いても優秀な人材の場合は支部や専門機関に迎えている。

 仮面の適合者バイパー以外、本部への所属は許されていない。

 しかし誰もが仮面の適合者バイパーになれるわけではない。

 また仮面の適合者バイパーだけでは賄いきれない。

 その穴を埋めるため、活動の担い手を勧誘や募集で陣営に引き入れている。仮面の適合者バイパーに匹敵する功績は残せなくとも、それなりの結果を叩き出せる人材を囲い込んでいる。連携を以ってして、統治機構が掲げる目的を達成できる者を各分野に登用している。

 次に仮面展意インテルは所属を人種に限定し、研究分野に傾けた能力・成果主義を掲げる組織。大昔に仮面装属ノーブルから離脱した者たちを祖とし、今は東の大陸の南部を陣取り、統治している。

 活動目的は世界にばら撒かれた仮面の究明とその再現を試みている。

 その目的に近づくためであれば、仮面の適合者バイパーでなくとも所属が許されている。研究成果を重要視しているため、その存在である必要性は皆無である。

 過去の因縁により仮面装属ノーブルに目を付けられているが、同盟を結ぶことで侵攻を牽制けんせいしている。研究成果の一部を献上することで見逃してもらっている。

 最後に仮面牢武クローザーは所属を人種に限定し、軍事分野に傾けた能力・成果主義を掲げる組織。大昔に仮面装属ノーブルから離脱した者たちを祖とし、今は東の大陸の北部を陣取り、統治している。

 活動目的は西の大陸からの侵入者の対処に尽力している。

 東と西の大陸は陸続きになっている部分が一カ所だけ存在する。そこを基点に東の大陸に攻め入る者たちがいる。

 その者たちを止めるため、最前線におもむき、防衛に当たっている。

 その目的を果たせるのであれば、仮面の適合者バイパーでなくとも所属が許されている。結果を重要視しているため、その存在である必要性は皆無である。

 しかし仮面の適合者バイパーが優遇されるのは明白である。

 特に幅広い戦略・戦術に対応でき、また指揮官として有能であれば、尚更なおさらである。

 戦場での活躍が物を言うため、それは致し方ない部分である。

 過去の因縁により仮面装属ノーブルに目を付けられているが、同盟を結ぶことで侵攻を牽制けんせいしている。西の大陸からの侵略者に対して、共同戦線を張ることで見逃してもらっている。

 各統治機構、主義主張は違えど、共通点が2つある。どちらも先の説明で触れていない部分である。

 1つは特殊な仮面の管理を担っている。行使により、もたらされる莫大な利益と甚大じんだいな損失。使い方次第で結果に大きく及ぼす道具であるため、目を光らせる仕組みを築いている。

 もう1つは全体を統制するため、国・都市・町・村を形成している。行政のほとんどは区画内にける各自治体に任せ、方針に対する口出しに徹している。統治機構に沿う形に誘導するため、監督を置いている。

 直轄地でもない限り、直接行政に関わろうとする者は少ない。上からの意見だと強引に押し通す者が多く、譲歩されるケースは少ない。手厚い権限を有しており、着任も解任も予算編成も自由自在。何でもありである。

 もっとも許されるかどうかは別である。

 統治機構にあだなす結果に結びつかないように監査を入れている。合理性のない強行が目立つようであれば、処分されている。行き過ぎると判断されれば、解任される。最悪、統治機構からの除名もありえる。

 ただし必ずしも是正されるわけではない。

 短期的・長期的に見ても、利益を上げられない者を許していないだけである。枠組みに収められるのであれば、無茶苦茶な筋道は許されている。収支に見合わない活動が許されていないだけである。

 東の大陸を統べる仮面組織パレスについてはこの程度にして、話題を仮面暴徒ブレイカーへと変える。

 今から1年くらい前から名をせるようになった暴力組織、仮面暴徒ブレイカー仮面装属の統治領域ノーブル・フィールドの南方に位置する町、ホコアドクを不当占拠している。

 担当区域内の治安組織が対処に動いても事態は収拾されなかった。懸賞金を目当てにした賞金稼ぎや恨みを晴らそうとする復讐者ふくしゅうしゃなどが挑んでも同じ結果だった。討伐には至らず、勢いづかせるだけだった。被害の拡大を止められず、人々に危険を晒す一方であった。

 またホコアドクの補給源として、周辺の町や村も占拠している。

 仮面暴突クラッシャーという名の暴力集団を結成して、各地を牛耳っている。仮面暴徒ブレイカー仮面の適合者バイパーをリーダーに据え、幅を利かせている。

 この出来事はホコアドクを占拠して、半年くらい経過してから起きた。分かりやすいくらいに調子に乗り始めていた。

 それが今日まで続いている。

 そして下位組織には任せられないと判断を下した仮面装属ノーブルは部隊を編成し、ホコアドクへと進軍している。

 秩序を乱す存在を掃討し、そこに住まう者たちの平穏を取り戻す。

 そのような御旗の下で仮面暴徒ブレイカーの討伐に動いている。

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