第7話 姉妹揃って謎が多い

 「ごめんね。朝から騒がせちゃって」

 俺がリビングに戻ると優美さんが申し訳なさそうに謝ってきた。

 俺は優美さんに「い、いや別に大丈夫です……」と少し素っ気ない態度で返して優美さんが作ってくれた朝食を改めて食べ進める。

 だがさっきの美香の言葉が頭の中でこびりついて離れない。一体どういうことだ? 俺のせい? 振ったのは美香なはずなのにどうして俺が責められるんだよ……でもあの言い草だと完璧に優美さんと美香の仲が悪くなったのは俺のせいだよな……


「……? もしかして美香に何か言われた?」

 俺が頭の中で思考を巡らせていると優美さんが不安そうな声で俺に聞いてくる。俺は一瞬、正直言おうか迷ったがここで言うとさらに事態が悪化しかねないので俺は「いや特になにも」と平然を装った。


 「ふーん。ならいいけどっ。じゃあ私先に学校行くから食べ終わったら置いといてね。放課後またご飯作りに来るから」


 「朝の話マジだったんですか……」


「マジよりのマジだよ! あっでも買い物とかもあるから少しだけ時間遅くなっちゃうけどいい?」


 なんだろうこのまるで新婚夫婦のような会話……俺こんなことしてる場合じゃないんだよな。てか買い物ってお金は……? 俺は気になって優美さんに聞いてみる。


 「あのちなみに夕飯代って……?」


「私が春樹くんに作ってあげたいだけだから全部私のお金だけど?」

 あちゃ〜……いやおかしいだろどう考えても……だいたいほんとうちの親は何考えてんだよ……


「いやそれは流石に申し訳ないので俺が払います。てかなんなら買い物だって俺が行きますし」

 流石に高校生にもなって最低限のことは出来ないとダメ人間になりそうなので俺がせめてもの提案をすると優美さんはおでこに指を当てて何やら考え事をし出した。そして数秒した後何か閃いたように顔をにこやかにして俺に「じゃあ宿題を出そう!」といってある提案をしてきた。


 「じゃあ春樹くんには昼休みまでに今日食べたいものを考えといてもらいます!」


「ひ、昼休みって今日も食べるんですか?」


「あれ言ってなかった? 私はこれから毎日食べる予定だったんだけど」


 いやいやいやいや。何さらっと独占欲丸出し彼女みたいなこと言ってんだよ。やっぱ優美さん若干どころか普通にヤバくね……?

 俺が黙り込んであっけらかんな表情をしていると優美さんは悲しそうな目をしながら俺に近寄ってきて、甘えん坊のような声で


 「ダメかなぁ……?」

 くっ……! この人自分の長所の使い方を最大限に活かしてやがる……魔性の女め。可愛すぎかよちくしょう。こんなこと言われてもでも拓真のこともあるし俺も一人の時間だってあるしその………












 「俺も食べたいんで是非お願いします!」

 まぁお決まりですよね。可愛くて少し(?)ヤバイ先輩にこんな感じで言い寄られたらそりゃそうなるよね。なんだろうこの展開も前にやったような……


 「よしじゃあ決まりね! じゃあまた学校でね!」


 優美さんはそういって鞄を片手に鼻歌を歌いながらスキップで玄関の方に向かっていく。


 「はぁ……なんかどんどん優美さんのペースに持ってかれてる気がする」

 優美さんの印象はもっと落ち着いてて面倒見のいいお姉ちゃんって感じだったけどここ数日関わってみて分かったのは思ったよりも落ち着いてないことと面倒見が良すぎるあまりに謎のヤンデレ属性がついてるという。

 おまけに美香に似て幼い感じもあって。なんか最終的に主人公がやらかして刺されるゲームでこんなキャラいたような…………俺刺されないよね……?

 俺が内心そんなことを考えていると玄関の方からドタバタと足音が聞こえてくる。そして勢いよく優美さんが再度登場してきた。


 「あっ、そうだ忘れ物してた!」

 そういって俺に思いっきり飛びついてきて俺のほっぺに唇の柔らかい感触が当たる。


 「っ?! ゆ、ゆ、優美さん?!」

 俺が自分のほっぺを触りながら動揺していると優美さんは頬を赤らめながらもしてやったら見たいな顔をして

 

 「さっき美香とお話したからって美香のこと考えてたでしょ! だから私色に染めちゃおっかな〜って思って」


「じゃあ改めて行ってくるね!」

 そういって俺が返す前に目にも止まらぬ速さで出て行ってしまった。

 俺は自分の頬を改めて触り直しさっきの感触を思い出す。すると心臓の稼働がどんどん早くなり全身が熱くなっていく。美人な女の人にほっぺにキスされた……キス……って何、こ、これくらいで動揺してんだよ俺?! これじゃまるで童貞みたいだろ……まぁ童貞なんですけど。はぁ自爆しましたぴえん。


 「……はぁ全部お見通しかよ……てか姉妹揃って何考えてんだよ本当あんたら……」

 俺はそんな愚痴をこぼしているせいで遅刻ギリギリなことにまだ気付いていなかったのだった。

 



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