サイドストーリー01 霜月琴子という女性。その2。
琴子はつい先ほど会場に入っていった少年の事を思い出す。
受験番号は2024番。名前は
「試験開始10分前です。受験生の皆様は受験番号の書かれた席にご着席ください」
試験監督者の呼び声に琴子はハッとする。そう、驚きはしたが今日琴子はこの検定を受験しに来たのだ。気を取り直して彼女は急いで自分の番号の書かれた席を探し着席する。
琴子の受験番号は2036番。会場は1列20個ずつ机が配置されているようで彼とは同じ列のようだった。彼がずっと前で琴子が後ろから四番目だ。当然間には大量の大人の壁があり琴子から彼の姿は見えなかった。
琴子が悶々としている間に試験官が試験の注意事項を読み上げ終わる。そうして、試験が始まり彼女はなんとも言い難い気持ちで試験に臨んだのだった。
「そこまで!解答用紙を裏に向けて筆記用具を置いてください」
琴子は何とか埋め終わった解答用紙を裏に向ける。前半思ったより集中できず解答時間がギリギリになってしまったのだ。見直しもほとんどできていない。
そうして、解答用紙の回収が行われ、完全に試験が終了となり琴子は緊張の糸を切らした。何とかなったと安堵の息を吐きだす琴子の横を受験を終えた大勢の大人たちがぞろぞろと帰っていく。
ふと、琴子は少年の事を思い出した。そうして辺りを見回してみるとすでに少年は会場を去った後のようで辺りには見当たらない。
そして、一度思い出すと再びもやもやが湧いてくる。彼は一体何者なんだろうか。そんな疑問が琴子の頭を埋め尽くす。
「うーーん……」
「琴子お嬢様どうかなさいましたか?」
「ううん。なんでもないわ」
今回も送迎してくれる父の秘書の質問に琴子は首を振る。
結局、琴子のもやもやが解決する事は無くその日はそのまま終わりを迎える事になった。
あれから数週間が経ち琴子はから帰ると同時に自室のパソコンを起動した。
今日は先日の検定の結果発表の日なのだ。発表時間は昼なので既に発表はされている筈で、パソコンの読み込みが終わり次第結果が判明する。
手元に置いてある受験票には2036番の文字。
琴子は沢山の数字の羅列から2036という数字を探す。
「2036……2036……2036……2036!!あった!!」
琴子は今回も無事合格していたことに安堵の息を漏らす。
「よかった~。今回も合格してるわ……」
張りつめていた緊張が切れた事がきっかけか、ふと、琴子はもう忘れかけていたある事を思い出す。
「2024番……」
琴子は何故かはわからないがふと出会った少年の事を思い出した。そうして一度気になり出すとあまりよろしくない事でも、つい調べてみたくなるのが人のサガというもので。
「2018……2021……2022……2025……あっ……」
2024番は無かった。何度、見直してもその番号は見当たらない。
つい余計な事を調べた事で琴子は急激に罪悪感に駆られる事となった。
「うぅ~~~……。うぅん……!!」
そうして琴子は、自分は合格しているというのに素直に喜べないという何とも不思議な状況に琴子は囚われるのであった。
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