第52話 空を飛びたいの。
レイニィは部屋で紙飛行機を折って飛ばしていた。
「お嬢様、これは、魔法で飛んでいるのでしょうか?」
「そうではないわ。ただ、紙を折っただけよ。スノウィでも出来るわよ。やってみる?」
「私でも出来るのですか? 試してみてもいいですか?」
「いいわよ。そこに座って。折り方を教えてあげるわ」
スノウィはレイニィに教わりながら紙飛行機を折る。
そして、出来上がった紙飛行機を飛ばすのだった。
「飛びました。ただの紙が空を飛ぶなんて凄いですね!」
「そうね。これを大きくしていけば、人間も飛べないかと思っているのだけど――」
(ハンググライダーはこれを大きくした様な形だったし、可能よね?)
「お嬢様はエルダ様に空を飛ぶのを禁止されていますよね?」
「それは、魔法を使ってでしょ。魔法を使わずに飛ぶ分には問題ないはずよ」
「また、そんな屁理屈を。危険な真似ならどちらでも同じですよ」
レイニィはエルダから、魔法で空を飛ぶ事を禁止されていた。それというのも、ことの始まりは、先日の台風、暴風龍が来たことにある。
レイニィは暴風龍と仲良くなるために、台風の暴風の中、外に出て、暴風龍に呼びかけた。が、空の上と下では、声が届くはずもない。
あれこれ自分をアピールしたレイニィであったが、全く相手にされなかった。
そこで、地上にいたのでは埒が開かないと、レイニィが魔法で空を飛ぼうとしたのだが、そこで、エルダから待ったが掛かった。
エルダによると、レイニィなら空を飛べるかも知れないが、上空で魔力が切れたら大変なことになるので、飛んでは駄目だというのだ。
レイニィも確かにそれは危険だと思い、諦めることにした。
もっとも、レイニィは女神様の加護の魔力無限があるので、そんな心配をする必要はないのだが、レイニィはその事を理解していなかった。
一旦は空を飛ぶ事を諦めたレイニィであったが。暴風龍とは仲良くなりたい。
諦め切れずに安全な飛び方を考えていたのだった。
(ハンググライダーも危険かな? なら、パラグライダー。どちらも安全面では変わらないのかな。
昔の忍者は凧に乗ってたわよね。試しに作ってみようかしら)
「スノウィ、凧を作ろうと思うのだけど竹はある?」
「蛸を釣るのですか。あんなクネクネしたものどうするんですか?」
「クネクネ? いや、その蛸でなく、凧よ。凧。ああ、この世界、凧がないのか」
レイニィは少し考えて、説明するより実物を見せた方が早いかと思い、簡単な凧を作ることにした。
「スノウィ、次の物を用意して。これくらいの布と細い棒二本と太い糸一巻き」
「竹でなくていいのですか?」
「竹はあるのね?」
「ええ、輸入した物で、滅多に見かけませんが――」
「今回は竹でなくてもいいわ」
「わかりました。すぐ用意します」
スノウィは部屋を出ていくと、本当にすぐに材料を集めて戻って来た。
「それじゃあ、今から凧を作るからね。
先ずこの布を横長に置いて、縦長に四つ折り。
折り目に印を付けてから、開いて元に戻す。
右側四分の一に、縦方向に棒を取れない様、上下と真ん中数カ所を縫い付ける。
左側も四分の一も同様に棒を縫い付ける。
右側四分の一の右上側を、二等辺三角形になる様にこの縦の棒に合わせて折って、その部分を切り取る。
次に、残った下の部分も、棒の下の所と、さっき切った部分の下の位置で三角形に折って、これも切り取る。
右側四分の一が三角形になる。
左側も右側と同じ様に三角形にする。
全体で見ると左右対象の六角形になる。
次に、布の左右の長さの、二倍の長さの糸を用意して。それぞれの端を、左右の三角の頂天に括り付ける。
糸の中央に、残りの長い糸を付ければ完成。
できた。じゃあ、外に行って飛ばしてみようか」
「これも飛ぶのですか?」
「そうだよ。これが凧っていうんだ」
「これが凧ですか――」
レイニィ達は外に出て、凧飛ばした。お誂え向きな風が吹いていて、凧は高く舞い上がった。
「お嬢様。あんなに高く上がっていますよ」
「凧揚げするには丁度いい風が吹いているからね」
「これなら暴風龍の気を引けるかも知れませんね」
「ああ、そうか。態々自分で飛ばなくても、気が引ければ、龍が降りて来てくれるかも知れないわね。
なら、もっと目立つ物がいいわよね。連凧なら長いし、龍も仲間だと思ってくれるかも……」
「おい、何やってるんだ! あれは何だ。私のいないところで、何楽しそうなことしているんだ!」
エルダが凧を見かけて、珍し物見たさに外に出て来た。
「先生、凧なの」
「蛸? そんなことより、あれの作り方を教えろ」
「あれが凧なの。先生も凧作りを手伝ってくれるの?」
「あれはタコという名なのか? 紛らわしい。凧作りは手伝ってやるから、作り方を教えろ」
「やった! 労働力確保なの」
レイニィの中では、連凧作成は決定事項の様だ。
エルダは、まさか凧を何百と作る羽目になるとは思ってもいなかった。
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