中等部三年藤組 犀谷麻衣

 Fragments 02

 聖ミシェール女学園

 中等部三年藤組 犀谷麻衣





 犀谷麻衣は細かなソバカスが顔中に散っている女の子で、かといって本人はそれに対するコンプレックスはほとんどなく、丸い大きな眼鏡にゆるい三つ編みがトレードマークの、一昔前の間違った知識でなら「腺病質」と呼ばれるような、でもよくよく見ると華奢で可愛らしい感じもする、それでいてツンっとした態度と言動で近寄り難さも併せ持つ文芸部員で、彼女は一人でその『空き室』の管理を自ら進んで買って出ていた。


 犀谷麻衣のことは誰にもわからない。彼女に関して「どんな人?」と問うと、十人いるなら十様の答えが返ってくる。つまり、犀谷麻衣とはそれだけ「自分を見せない」子で、他人に対する態度も一定ではなく、誤解も受け易ければ他人への配慮も乏しい、ようは自分勝手な子だった。


 クラブハウス棟から少し外れた位置にある、蔦の絡まった古めかしい小さな洋館。まるで洋風の庵で、お菓子で出来た魔女の家のような雰囲気のその建物は、文芸部からは「別館」と呼ばれていて、この十年ほど部員の居ない幽霊部の部室専用という贅沢な物で、今では物置としてのみ使われている有様で、誰も望んでこんな無人の庵の煤払いなどやりたがりはしない。

 それでも、犀谷麻衣はこの場所が大好きだった。今日も、彼女はそこに軽やかに足を運ぶ。


 ──何も知りやしないんだ、あいつらは。


 銅板に*Puzzlers'CLUB*と刻印された扉に鍵を差し、開く。

 見渡す限り書架の壁には古今東西の奇書、怪書。麻衣にとっては夢のような場所。

 何といっても、誰にもジャマをされない。近寄るウザい生徒も教師もいない。


「や~れやれ。はーっ、どっこいしょっと」


 ドシンっとクッション張りのゆり椅子に腰を落とす。ギシっと音を立てて後ろに傾斜し、反動で次の瞬間にはぐるんっと前のめりになる。


 英国貴族が使っていそうなどっしりとした木製の文机には、今日買って来たばかりのミステリー雑誌とSF雑誌、図書室からかっぱらって来た新聞、お菓子と文房具が入った袋が投げてある。

 椅子に沈んだままぼーっと部室の中を見回す。この学校の主な校舎群は、明治の終わりか大正の初め頃に建てられて、ド田舎にあったお陰で空襲も受けず、焼けも倒壊もせず続いている。

 とはいえ、この部室は昭和になってから建てられたもので、改築改装も何度もやっているはず。それでも、軽く五十年以上は歴史を刻んでいるのだろう。


 西洋かぶれに何もかもがソレっぽい装飾と様式。眺めているだけでニヤニヤして来る。

 英国風なのは机くらいで、他は全てアールヌーヴォー調。そもそもミシェールという校名からしてそうだし、本来カトリックの学校の場合、伊名で聖ミカエルと表記されなければいけない。どういった経緯でかは知らないけれど、ここはフランス人の宣教師が地元の金持ちをスポンサーに、ベルエポック真っ盛りの頃のフランス風に建てっちまった学校で、何かと色々間違っている。そんな部分も含めて、麻衣にはとても面白い。


 瀬戸内を一望する、前は海、後ろは山よの風光明媚な片田舎。昔は全寮制だったらしいこの学校には中四国どころか関西九州からも小金持ちの小娘が寄越されていて、潤沢に金が余っていたのだろう。

 ウィーン分離派のモダンな建築様式で、薄紫に近い灰色レンガのヨーロピアンな校舎といい、立派すぎる聖堂といい、その洋風と絶妙にバランスの取れた池田綱政の方の後楽園でも模したかのような庭園造りの中庭といい、少人数の女子供が通うにはいちいち大袈裟すぎる。

 散歩にも最適だしぼーっと過ごすなら最高の学校で、学び舎としては最悪な場所だと麻衣は思う。


 腰に根を生やしてぼーっとしててもいられない。ギシっとゆり椅子を鳴らせて、前傾姿勢で地面にトンっと立ち、起き上がる。

 ここを好き勝手に使う代償として、未整理の書架の整理整頓や掃除もしなければならない。滅多にないとはいえ、貸し出し希望者から申請のあった本は、探し出して図書館まで運ばなければならない。

 それでも、それら雑務の労力よりも、遥かに見返りは大きくて魅力的だった。少なくとも麻衣にとっては。


 唐草模様を鉛線で貼付けたヌーヴォー調の飾り窓から光が差し込む。舞い散る埃がキラキラと輝く。ここはどこでもない魔法の空間で、煩わしい日常の全てから隔絶された、魔法が生きている不思議な場所。麻衣にとっては。

 厭世も憂鬱も、世代的なハシカのようなもの。それぐらいのことは、読書好きな麻衣には充分わかっている。自分でそう、わかっていながら、それでも様々な物事への、様々な大人たちへの、様々なクラスメイトたちへの反発心は薄れない。


 ──反抗期かよ、くだらねえ。

 自分でそう突っ込んでもみる。突っ込んだところで何もかわらない。かわらないならそれでもいい。面白い本でも読んで、ぼぅっと想像でも巡らせて、そうして時間を潰して行けばいい話。

 正直なところ、ミシェールは偏差値の高い学校だけに、目立ってバカはいない。頭の良い子にはそれなりに面白い子も多いし、面白みのない子ですら物分りは良い。小学校の頃にさんざん無教養で粗雑で下品でくだらない男子に不快な目に遭わされた時よりも、この虫も殺さぬお嬢様たちの群れの中の方が、遥かに、確かに、居心地は良い。

 それでも、二年も通ってもう馴れた。飽きた。


 この学校には刺激がない。誰もが裕福で、勉強もできて、優しくておとなしいお嬢様ばかりで息がつまりそうだ。

 もちろん、心の裏側はどんな物だかわかったものではない、現に自分だってそうだ。それでも、ここの生徒の大部分が、毒にも薬にもならないような奴ばかりで、今だって文芸部の部員たちはつまらない読書感想や出来の悪いポエムを書いてお互いを褒めあったり、訳知り顔で誰かの言葉を孫引きして評論したつもりになっているのだろう。

 そんな部活と知っていれば、最初から文芸部などに誰が入るか。興味もない。それでも、結果論だが入部して良かったと今では思う。なにしろ、こんなにも素敵な場所を独占できるのだから。


 電気ポットを繋げてミネラルウォーターを注ぐ。茶葉を入れたティーポットとカップを盆に置き、皿にお菓子を広げる。一服したら今日のノルマの作業にとりかかろう、今日はEの棚の一番上一列。

 ティーコジーをポットに被せ、注いだお湯で茶葉が開くまで、新聞を広げて目を通す。見出しには今でも「謎の猟奇殺人」のニュースが踊っていた。ここから電車で片道一時間以上はかかるH市内での事件で、第一報での「惨殺死体」の表現は、日を追うごとにどんどんとドぎつく、凶悪に、その内容が詳らかに暴かれて行った。

 何をどう考えても頭がおかしい事件で、突飛すぎて逆に興味がない。確か死体が発見されたのは、四月の末ぐらいだった。

 他の三面記事にも目を通す。どうでもいい記事ばかりで、ひとまず株価や円ドル値にも目を通した後、ため息まじりで新聞を置き、クッキーを一枚くわえて、ポットからカップに紅の雫を注ぐ。


 不意の来客が麻衣の前に訪れたのは、Eの棚の一番上列、左から十二冊目の奥付を調べている時のことだった。


 廊下に誰かの足音がした時点で、少しだけ身をこわばらせた。お茶やお菓子で教師から目玉を食らうことはない。文芸部の他の生徒だとちょっと鬱陶しい。コンコンっとノックの音。

 しょうがない。観念する。


「どーぞ。開いてるよ」


 真鍮のレバーが動き、扉が開く。

 見慣れた、ミシェールの真っ黒いセーラー服が一歩、踏み込む。

 墨汁で染めたかのような完全な黒。

 襟には、小豆色に近い赤の、細いラインが三本。袖も同じく。

 そして、同じく血のように暗い赤のタイ。

 いつ見ても毒々しい、魔女の黒衣のような制服だ。

 基本的に中等部も高等部も同じデザインで、小さな校章の色が臙脂色か藤色かの違いしかない為、一見してその相手が先輩かどうかも判り辛い。麻衣は中三ではあっても、図書室や文系のクラブハウスは中高共用なため、まだまだ過半数の生徒がこの学園では先輩にあたる。


 入って来たのは背の高い子で、麻衣よりも確実に大きい。目測で百六十五センチ以上は確実にある。自己申告で百五十センチ(実際には百四十九センチ)の麻衣よりも、頭半分は高いだろう。

 長い黒髪に整った目鼻立ち。誰が見ても美人。すらりとした体型のくせに胸も大きい。しかし、まだあどけなさの残る顔立ちから、中等部の生徒なのは間違いない。


「用があるならさっさといって。それと、ここではきっとアナタの思うような物は何も得られないから」


 先制パンチのようにぴしゃりといっておく。これだけ背が高くても、先輩とは思えない。相手が高校生か中学生かぐらいは、同じ年代なら感覚的に「読める」のだ。

 それに、何も全校生徒の顔を憶えているわけではないにせよ、馴染みのない顔なら新入生である可能性が高い。そして、そんな生徒がここに来る理由なんて限られている。

 図書室にない稀少本の借り出しか、庵の物珍しさに誘われて来た子か、ウワサを聞きつけて訪ねてきた好奇心いっぱいの子か。とはいえ、借り出しに来た子のもつ独特の不安気も、物珍しさで来た子のもつ独特のフワフワ感も、ウワサを聞きつけて来た子のもつ独特の目の輝きも、この子にはない。

 確かな足取りで、踏み込んだ一歩に決意めいた物を感じた。


「すみません。私、入部希望者なんですけど……」

「は?」


 一瞬、耳を疑う。何かの間違いだろうか。


「ああ、ええっと……悪いコトいわないから、今から『回れ右』してアッチの図書部か文芸部にでも行った方が良いよウン。あのさ、ここって別に『推理小説同好会』じゃないから。それに……」

「いえ、わかっています。ここは……『探偵』の部ですよね?」

「んム……」


 瞬時に麻衣の脳裏に様々なものが駆け抜ける。

 トントンっと素早く本をおさめ、ピョンと脚立から飛び降りて二脚のパイプ椅子を広げる。そのうちの一つに座り、手を差し伸べて「座れ」とゼスチャーで合図をした。


「あの……」


 シッ、と一本指を立てる。


「まてまて皆までいうな。ええっと……この時期、普通ならもう新入生は部活に入ってるね。顔に見覚えないから今年の新入生でしょ、幾ら背がデカくたってわかるよ。それに、何だか幼い雰囲気だし」


 近寄ってよーく見ると、校章の色もきっちり中等部だった。麻衣は心の中で軽くガッツポーズを取る。


「そして、この部のことを『知っている』となると、そんな新入生はそうそういない。なら、今年ここに入学して来た『初代部長の孫』……または、その子からこの部の話を聞いて来た、近しい者ってことになる」


 そう。

 ここにある書類の幾つかで、麻衣もその存在を知った。大昔の先輩が書き残した、文芸部の創作ではなかろうかと何度も疑った「少女探偵」のレポート集。真偽のほどは不明なれど、それはとても面白い物で、全てではないにせよかなりの量を麻衣も夢中になって読み漁った。

 戦後まもなくの瀬戸内を股にかけての、当学園在校生による、快刀乱麻の大活躍。

 学園内で発生した密室首切り死体の謎を皮切りに、不気味な経文を全身に書き記された謎の屍蝋美女の怪事件、因習の残る孤島で起きた、不気味な連続見立てバラバラ殺人。閉鎖的な寒村の祠の中で、内臓をくり抜かれた男女の心中事件。若い刑事と共に招かれた洋館で待ち受けるものは、脱出不能状況での連続失踪事件。

 何をどう考えても、どれもこれもが出来すぎで、それが事実なのか嘘八百なのかもわからない。

 ともあれ、そこに描かれた我が校のOG、少女探偵・絹谷真冬こそがここ、「探偵舎」の創始者で、初代部長で、もしかするとその少女こそがこの「娯楽小説」の作者だったのかもしれない。

 作者名=探偵名なんてそれこそエラリー・クイーンや法月倫太郎のようなものだろう。だとすると、この創作能力は賞賛に値する。これだけの作品を書ける人間が世に出ることもなく、出版されることもなく埋没しているのには、些かの疑問こそ感じるものの。


「ええ。お婆さまから……」


 一瞬、考えごとをしているスキマに目の前の少女が一言つぶやいた。


「あ~っ、まだ正解いうなーっ!」

「えっ!? あ、はい、すみません……」


 麻衣は少しムっとした顔のまま、じっと少女を見つめる。


「……なるほど、かの伝説の少女探偵のお孫さんか。で、それが何故、今になってからこの部に?」


 噂は、小耳に挟んでいた。ここに来るまでは麻衣も一切その存在を知らなかった『探偵舎』の通り名が、この春からちらほら、教職員や上級生たちの一部から耳にすることもあり、「自分しか知らない謎の存在」と思いきや、意外と知っている者も多いことを、そして「名の知れた探偵」の血縁者が入学して来るという……えっ、作家じゃないの? 探偵? まっさかぁ(笑) ――まあそんな感じに、てっきりその「真冬さんのお孫さん」が入部する物とばかり麻衣は思っていたし、それはそれで孤独の愉しみを失うことでもあるものの、ちょっとは興味も期待も持っていた。はたして、作家か、本当に探偵なのか。

 しかし、結局何の音沙汰もないままで、とうにその子の入部はないものと諦めていた。


「すみません。私、とくに部活をしようとは思っていなくて」

「いなくて、それが何故?」

「それは……」


 シャッキリしない。優柔不断な子……とも、思えない。明確な意思を感じる。力強く、確かな決意もこの子にはある。しかし、どう口にすべきかで言い淀んでいる。

 面白い。


「ああ、これはべつに尋問でも詮索でもなく、私の興味本位の質問だから。答えたくないなら答えないでいいよ」

「そうですか。じゃあ……答えません」


 あらっ?


「……はは。なるほど面白い子だ。私の名は犀谷麻衣。中等部三年で、文芸部所属」


 一瞬、目の前の少女は不思議そうな顔をした。


「私は、一年松組、弓塚香織です。よろしくお願いしま……」

「じゃあ今日からあなたが、ここの『唯一の』探偵部員ってコトになるね」

「えっ?」


 麻衣は、自分はあくまで文芸部から出向する形で、ここの維持にかり出されているだけの立場だと伝えた。

 そもそも「探偵舎」という同好会なのか部なのかも曖昧なサークルは、文芸部の分家という形で「探偵小説同好会」として成立し、図書部(ようは図書委員だけど、部活動として認定されている形式だからここでは「図書部」と呼ばれている。もっとも、半数の生徒からはふつうに「図書委員」と呼ばれもする)からこの部室を借り受ける形で使っていたらしい。そのため、探偵の部員がいない時期には、伝統的に文芸部と図書部から人員を出して管理をしてきた歴史がある。

 この庵を示す「舎」が通り名で、「部」とは呼ばれていない点に、色々と葛藤や軋轢の歴史がありそうで、その辺の詳しい事情を知る教師や先輩は既にこの学校には一人もいないようだ。


 ざっと説明を聞きながら、香織は、その顔に失望の色をうっすらと浮かべているようにも見えた。こればっかりは仕方がないだろう。何のつもりで、何の目的で香織がここに来たのかは麻衣にはわからない。いずれにせよ、決意と共に乗り込んだものの、ここには新入りの自分一人しか部員はいないことになるのだから、まあガッカリは無理もない。

 それにしても──何だろうか、この娘の背丈や体型は。

 ほんのちょっと前まで、ランドセルを背負って小学校に通っていたとは信じられない。長身だけならまだしも、胸だって確実にC以上のカップだろう。単純にデカいだけなら成長期のむちむちした子には結構いるが、何だこのトップとアンダーの差。それでいて腰も細い。脚も長い。ただでさえ美少女でコレかよ。やっぱり世の中は平等ではないのだ、と麻衣は痛感する。

 このうえ生意気な相手なら敵意だけが高まるところが、この娘に対しては麻衣は既に「面白そうな子だ」との評価が出てしまっている。物腰も丁寧で、それは慇懃に表面的な装いだけで先輩に敬語を使う子とは全くタイプが違うことにも、ニ、三言葉を交わせば理解もできる。


「と、いってもね。右も左もわからない一年生一人を置いて『じゃあ、さようなら』ってわけにもいかないもんね。私も今年一年ここに居ることになってるから。わからないことは教えるし、何をするかも追々指示してくから。じゃ、そーゆーコトで」


 そういい終ると、麻衣はパイプ椅子を畳んで隅に置き、今度は蔵書目録をじっと眺める。特に何かを命令する必要もない。偉そうにする気もない。先輩ではあっても、同じ部員ではないのだから。

 この子がどの程度のものか、使い物になる子かどうか、側にいて不快かどうかも、そんなのは追々わかること。独りの時間はこれで当面、なくなるだろうけれど、それはそれで仕方がない。今は、暫くは面白い。この子がどんな子で、どう出るのかを観察するだけでも退屈しのぎにはなるだろう。飽きれば? 使い物にならない子で、つまらない子で、退屈な子なら?


 その時はそれとなく追い出せばいい。

 麻衣はいつも通りにやるべきノルマをこなす。

 香織は、戸惑いながらもその様子を眺め、時折、麻衣の行っている作業への質問をし、その日の部活は滞りなく終わった。


 香織は物覚えがよく、特に教えられなくてもノルマとしての仕事もてきぱきとこなせるようになり、二人の間には閑話で過ごせる時間も増えて行った。


 犀谷麻衣と弓塚香織が、お互いを「香織」「麻衣さん」と呼び合うほどに親しくなるのは、それからそう何日とかからなかった。





To the next time.

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