第158話 魔術
「あの、一体何をしたんですか?アルト先輩が自滅したように見えたのですが」
「理解できるように殺されたんですよね?何が起きたのか全く分からなかったんですけど」
「説明を聞けば君たちは理解できるという話。けどまずは、魔術についての説明から始めよう」
そう言うとリブは用意された教壇に立ち、長い長い説明を始めた。
「魔術は大きく二つに分けられ、そのどちらも世界の法則に従っている」
まずは一つ目、リブが開発した刻印魔術とは、世界の法則に当て嵌められた言語を用い、火や水、風や土など、そしてそれらの動きについて書き記しそこへ魔力を込めることで行使する魔術の事。
最も新しく開発されたものでありながら、世界基準で見れば最も基本的な形の魔術。
そして二つ目、アルバが得意とした無詠唱魔術とは、強い意思だけでこれは火だ、水だ、風だ、土だ、そしてこう動かす、とただひたすらに世界の法則に融通を利かしてもらう魔術の事。
詠唱や陣魔術の殆どがこの魔術に属するが、どれもこれも世界の法則に当て嵌められたものではないために全く別の言語を指してこれは火だ、だから日の魔術を行使させろというようなもの。
ただ、意思の力だけでそれを成り立ってしまう程度には世界の法則よりも人の心の方が強い。
「そんな意思による魔術と称される魔術だろうと、行使の際に融通を利かせてもらっているだけでその規格は世界の法則に従っている」
「世界の法則などといわれても規模が大きい上に感知もできずわかり辛いですがそれはいいとして、先程のリブさんが行使した魔術は一体?」
「説明した通り魔術は世界の法則に従ったものであり、君たちは知覚できないだけで感覚で魔術を行使する際に世界の法則に従っている。しかしもし世界の法則が突如として変化したのならどうなる?」
「…………まさか⁉」
「そう、先程アルト君が私に転移させられた空間は世界の法則が周りと違っていた。アルトくんはその場から逃げ出すべくいつも通り転移の魔術を行使しようとして、いつもとは違う世界の法則によって転移が出来なかったどころか魔力暴走に似た現象に見舞われ気絶したというわけだ」
「あの、世界の法則ってそんな簡単に変えられるものなんですか?」
近くもできないものである以上その規模はわからないが世界の法則と呼称する以上それは凄まじいものに違いない。
事前の準備もなしに、今のこの場でパッとできてしまうようなものとは到底思えなかった。
「さして難しいものでもないよ」
そう言ってリブは袖をまくり左腕に魔力を通しびっしりと隙間なく彫られた刻印を見せる。
「刻印魔術は刻印の解読さえできればあとは魔術として組み合わせていくだけ。書き換えようと思ったらこれだけ長くはなるけれどね。といってもこれは何をどう書き換えるかの指定はしていない。その指定には」
魔力を通し左手の刻印を見せる。
「この手の指の刻印を使う。指一つ一つが別の法則を書き換えるもので、部分的に魔力を込めることでどういった風に書き換えるかを選択できる」
「…………速度も重視して、完全に戦う気満々じゃないですか」
「まさか、これはただの護身用だよ。アルバにはこんなの通用しない」
「攻略法はあるんですね」
「そもそも世界の法則の変化に気付けない君たちには無理だよ」
微笑んで答えたリブに生徒たちは苦い顔をした。
「ふふ、それじゃあ本題だ。グリモワールについての授業を始めようか」
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