第7話 錬金術師

 サンタ・マリア・フォルモーザ教会の広場を横切り、水路沿いの道をしばらく歩いて右手に曲がると、天国の道(カッレ・デル・パラディーソ)に辿り着く。

 シルヴィアの実家があるのは天国の道からリアルト橋を渡って本島の南側、ジュデッカ運河の岸辺にあるサン・セバスティアーノ広場の近くなので、朝の早いこの時間なら、よほどのことがない限りはこのあたりで知人にばったり出くわす心配はない。

 朝靄が濃い十月の朝。

 太陽はまだ水平線の向こうで、半分も顔を出していない。

 昼間から夕刻にかけては、ひと混みを縫うようにして通り抜けなければならないほどひと通りの激しいこの通りも、いまはまだひとの気配はなかった。

 シルヴィアはそこがどうして「天国の道」と呼ばれているのか、その由来は知らない。

 現実の「天国の道」は、野菜、魚、肉などの毎日の食材から衣服、鍋や釜、傷薬や強壮剤……生活用品ならひととおり揃う商店街だ。

 神父や修道士の語る話を聞く限りでは、「天国」はこんな猥雑な場所ではなさそうなのだが、シルヴィアは、本物の「天国」も、こんな場所ならいいな、と思っている。

 便利で活気があって、わくわくする。

 でないと、きっと、退屈してしまうわ。

 もっとも、自分が将来、神さまのいます天国にあるはずのほんものの「天国の道」を歩いて、威尼斯ヴェネツィアのそれと比較することができるのか……少々自信がなくなりつつあるシルヴィアだったが。

 とりわけ、昨日の夜あたりから。

「悪魔の声に耳を傾けるな」というのは、教会のお説教で耳に胼胝たこができるほど聴いてきた文句なのだが、なりゆきで助けてもらい衣装まで貸してもらったうえで、身の上話を聞いてもらう、というのはどうなんだろうか。

 くしゅん、と、くしゃみを一回。

 昨夜、ガルシアに一晩限りの身の安全を保証してもらったあと、これまでの心労と疲労のために、意識を失うように眠ってしまったのだが。

 昨日、休んだ寝台は、埃っぽいうえに薄い上掛け一枚きりで、風邪を引きそうだった。

 よく眠ったはずなのだが、眠りが浅かったのか、腫れぼったい目をこすりながら考える。

 教会で懺悔したら、大変なことになるかも知れない。

 いつもは食前のお祈りを忘れたり、父親や母親と口喧嘩したことなんかを懺悔して「祈り、悔い改めなさい。しゅはいつでも貴女のことを見ておられますよ」と言ってもらうだけなのだが、もしかすると悪魔祓いの儀式を受けるようなことになるのだろうか。

 でも、仕方ないわよね。

 助けてもらうのに、いちいち「貴方は悪魔じゃないですよね?」って訊くわけにもいかないんだから。

 もっとも、当面のところは昨夜のことを懺悔するかどうか、悩む必要はない。

 子どもの頃から親しんでいる教会は、シルヴィアが修道院に入ったことを知っているし、シルヴィアはどの教会がどの教会とつながりがあるか、詳しく知っているわけではなかったから、ほかの教会にしても迂闊に顔を出すわけにはいかない。

 修道院の悪徳を洗いざらい告発して戦うつもりはないシルヴィアにとっては、いまのところ教会や修道院は近づかないほうがよい場所のひとつだ。

「……これからどうしようかしら」

 シルヴィアはちいさく溜息を吐いて、目指していた店の戸を叩いた。

 木製の看板には、『ヘルメス雑貨店』という文字とともに、食器と羽筆と羊皮紙が意匠されて彫り込まれている。

 しばらくなかでごそごそと物音がし、おもむろに鍵がはずされた。

「おお、だれかと思えばバルトリの嬢ちゃんじゃないか」

 店のなかから顔を出したのは、年端もゆかない少年だった。

 歳の頃に見合った、天使のような声音……ではあったが、なぜか言葉遣いは妙に年寄りくさい。

 ヘルメス少年……八年前に亡くなったという祖父の名を継いだ、ヘルメス雑貨店の店主にして、錬金術師アルキミスタ……らしい。

 らしい、というのは、シルヴィアにとってのヘルメス少年は、いつでも雑貨店にいる大人びたしゃべり方をする万事に聡い少年でしかなく、錬金術師らしい振る舞いを見たことがないからだ。

「朝早くにごめんなさい。ヘルメス君、ちょっとお邪魔してもいいかしら?」

「もちろんじゃとも。しかし、嬢ちゃん……しばらく見んうちに変わった服を着るようになったのう……ちかごろの修道院は男装で寸劇ドランマ・コルトでもやるのかの?」

 言いながら、退っ引きならない事情があることは察したように、シルヴィアが店の玄関をくぐったあと、扉の鍵を掛け直す。

「そんなんじゃないんだけどね」

 シルヴィアは店の奥、常連客が店主と無駄話をするために使う椅子に腰掛けた。

 ヘルメス雑貨店の店主……つまり、目の前のヘルメス少年と。

 欧羅巴ヨーロッパ系の人種ではない。

 肌の色が濃く、腕に蔦模様の入れ墨を入れていることから、埃及エジプトあたりの出身かとも思うが、顔立ちがどことなく違う。

 そして、金髪……というよりは銀色に近い髪の色と、この世の英知のすべてを閉じ込めたような、湖の底を覗くが如き、濃く、思慮深い翠玉の瞳。

「事情をゆっくり話してる時間はないんだけど、わたし、修道院は逃げ出してきたの」

「相変わらずのお転婆じゃのう」と、さして問題にするようすもなく目を細めるヘルメス少年。

「それでね、知っていたら教えて欲しいんだけど……ガルシア・アリスタさんって、どんなひとかしら?」

 おずおずとした問いかけに、ヘルメス少年は「ほう!」と、目を丸くした。

 シルヴィアは、その口調も、表情も、かつての老店主とそっくりだと……おかしなところで感心する。

 孫だとしても、ふつう、ここまで似ないだろうと思えるほど、そっくりだ。

「ガルシア・アリスタと……アシエル・サヴァラかの?」

 シルヴィアは頷いた。

 アシエルと呼ばれていた、シルヴィアがいま着ている衣装の持ち主の家名ノーム・ディ・ファミリアは知らなかったが、たぶん、間違いないだろう。

「金の蹄を持つ雄山羊の護る蒼き峰の国主、太陽のかけらと雄山羊の血から富を得る魔法の王。亡国の王にして背教者。神を呪詛せし血塗られた秘蹟のあるじ……吸血鬼ヴァンピーロ。儂の知っておるのはこのあたりじゃろうか」

 シルヴィアはもういちど、神妙な顔で頷いた。

 十になったばかりのころ、年嵩としかさの兄に連れられて顔を出したこの店の、バルトリ家いちばんの常連客になったのは、ほかでもない、シルヴィアだった。

 もっとも、少女の限られた小遣いでは、ほとんど売り上げに貢献することはできなかったのだが。

 皺深い頬に笑みを刻み、翠玉の瞳を細めつつ老店主の語る、遙か昔に海に没したという国の物語はどれもこれも不思議に満ちていたし、威尼斯ヴェネツィアがまだ、ただの湿地だったころに栄えた羅馬ローマというおおきな帝国が、地中海の南にあったカルタゴという国の英雄と戦った話や、街や道や橋、水道を作って世界を広げていった話は胸が躍った。

 ほかにも、月の見えない手によって起こるという潮の満ち引きや、伊太利亜イタリアでは北風が乾いていて、南の風が湿っているわけといった、周囲の大人が答えてくれない疑問にも、ヘルメス老人は答えてくれたから、シルヴィアは親にもできないような相談事があると、家を抜け出してここを訪れるのをつねとしていた。

 八年前に老店主は姿を見せなくなり、代わりに老店主の使用人だという表情に乏しく口数の少ない若い男が店主を勤めだしてから、シルヴィアも自然とこの店からは足が遠のいていたのだが……。

 三年前に老店主の孫という触れ込みで、老店主とおなじ名、おなじ目の色、おなじ口調で、年齢からは想像もつかない知識を蓄えた少年が店主におさまってからは、以前とおなじように入り浸っていた。

 もっとも、修道院送りになってからの半年は、いちども足を運ぶことができなかったのだが。

「二百年もまえに滅んだ国のあるじで、儂の知る限り、威尼斯に現れて二十五年ほどになる。あやつらのせいで不幸になった者がおらんわけではないが……この国に居を定めてからの二十五年間に限って言えば、教会に目のかたきにされるような目立つことは、しておらんな」

「そうみたいね。まるで廃墟みたいなところに住んで、おなか空かしてたみたいだし」

 ふう、と吐息しながら答えたシルヴィアの言葉に、ヘルメス少年はもういちど目を丸くする。

「嬢ちゃん……まさかとは思うが、あやつらに会ったのかの?」

「まさかもなにも。危ないところを助けてもらったし、いま着てるこの服もアシエルさんのを借りてるのよ」

 少年が、その歳に見合わぬ思慮深い顔つきで目を細めた。

「あ、でも、なにもされてないのよ?」

 弱ったような顔で笑いながら、シルヴィア。

 いまのところはね、と、こころのなかで付け加える。

「それは……幸運なことじゃな。あやつらのくちづけを……牙をその身に受けるようなことがあれば、もうあやつらに逆らうことができんようになる。幸運は二度はない。あやつらには近づかんことじゃ。嬢ちゃんは、いずれ死に至る恐怖を味わいながら、逃げることもできん身の上になぞなりたくなかろう?」

 ちいさな身体がさらにひとまわり小さくなるほど深い溜息を吐いて、ヘルメス少年。

「……それはそうなんだけどね……」

 眉間に皺を寄せて、シルヴィアは頬杖をついた。

「ねえ、ヘルメス君の家で居候させてもらうっていうのは、だめかしら? 炊事洗濯掃除、なんでもするわよ?」

「済まんが、儂の住処は女人禁制じゃ」

 ……わりと多いのよね。錬金術師って、そういう決まりにしてるところ。

船乗りとおなじだ。

 伝説の世界では、船に女性が乗っただけで海が荒れ、海神の怒りを鎮めるために乗せていた女性を生け贄に捧げるようなこともあったという。

 ただし、昨今では商用で女性を船に乗せないといけないことも多いから、船乗りについては、船員としては女性を雇わず、客としても操船に必要な部分には決して女性を立ち入らせない、というところで妥協している。

 とはいえ、いまでも危険の多い職業を中心に、女性の出入りを禁じているところは多かった。

「なにがあったかは知らんが……家に戻るのはどうじゃ?」

 ヘルメス少年が控えめに提案する。

 そう……ふつうに考えれば、それが常識だろう。

 マルコ・バルトリ。

 五代続く威尼斯商人。

 信仰心厚く、気弱なシルヴィアの父。

 子どもは一男四女。

 四代に渡って築きあげてきた資産を、娘たちの持参金と自身の事業の失敗でほとんど失ってしまったひと。

 その父を黙って支える母、そして商売人よりは職人のほうが向いていると言われながらも、結局は家業を継いだ人付き合いの苦手な兄。

 シルヴィアは、父が我が子として、自分のことをこころから愛してくれているのを知っていた。

 自分もまた、父のことを愛している。

 けれど、こころのどこかで信じ切れない。

 逃げ帰れば、父は……きっと、わたしを匿ってくれる。

 でも、もし、修道院から厳しくわたしの居場所を問い詰められたら。

「済まない、おまえが悪くないことは分かっている。だが……これも神の思し召しだ」

 そう言ってわたしを修道院に引き渡すのだ。

 そして、わたしがなにごともなく幸せでいられることを、たっぷり祈ってくれるに違いない。

 ことの成り行きから考えても、絶対に「なにごともない」なんてあり得ないって現実には目を背けて。

「家に帰って父に頼っても、たぶん、お互いが傷つくだけなのよ」

 シルヴィアはさっぱりとした表情で笑った。

 似たような理由で、女友達も頼れない。

 男友達はいない。

 婚家の女性の立場は、それなりに尊重はされているが、結局のところ夫の意向に強く反対することはできない。

 二、三日身を置くくらいならともかく、無期限で、しかも修道院から逃げてきたような女を黙って預かってくれるような夫を持つ友達のこころあたりはなかった。

 シルヴィアは、首にかけていた銀の十字架をはずして、店の商品棚に置く。

 修道院に入るとき、父がなけなしの家財を整理して買ってくれたものだ。

 彼女の持っている聖物は、これひとつ。

 金目の物も、これひとつ。

「これで、着替えと、食べ物を売ってくれないかしら? 二、三食分で構わないわ。あ、あと掃除道具を一式と蠟燭も五本ほど。手燭もひとつ付けてくれると嬉しいかな」

「……嬢ちゃん……」

 ヘルメス少年の目が、「ほんとうにほかに手はないのかの」と、訴えている。

 路上で生活するのは、無理だ。

 日が暮れてから女がひとりで出歩くのは、つねにいのちか、それ以外のすべてか、あるいは両方かを奪われる危険に満ちていたし、うまく身を潜められたとしても、これからの季節、凍死せずに路上で生活するには知恵と運がいるだろう。

「心配しないで。わたし、これでも交渉するのは得意なのよ。ヘルメス君には言ったことないけど、むかし、やりたいなって思ってたことがあって……ヘルメス君のおじいさんにいろいろ教えてもらったの。昨日の雰囲気だったら、ガルシアさん、話くらいは聞いてくれそうだったし。きっと、なんとかなるわよ」

 なんの根拠もない希望で自身を鼓舞し、シルヴィアは明るく笑う。

「分かった。この店にないものは、今日、日の高いうちに買い整えて届けさせる。……場所は、マッダレーナ通りから奥に入ったところじゃろう?」

「そうね」

 店にあるのは蠟燭と手燭、掃除用のはたきと水汲み桶、箒、そのくらいだった。

 掃除のための雑巾は、昨日、逃げるときに着ていた僧服を裁断すればかなりたくさん手に入る。

 ああ、裁ち鋏もひとつもらっておこうかしら。

 店の奥から、少年が、おそらく自分が朝食に食べるつもりだったのだろう、麺麭ぱんをひとかけらと肉と野菜を煮込んだ汁物を持ってきてシルヴィアのまえに並べた。

 当面、これを食べて空腹を慰めておけ、ということだろう。

 幼い子どもの朝ご飯を横取りするのはさすがに気が咎めたが、シルヴィアはその食事を有り難くいただくことにして、食器を手に取った。

 気を張り続けているせいか、あまり空腹である実感はなかったのだが、汁物をひとくち、飲み下すと、その滋味が身体に染み渡ってゆくのを実感する。

 さもありなん。

 よくよく考えれば、昨日、修道院で日が暮れるまえに質素な晩餐の食事を摂ったあとから、なにも食べていない。

「嬢ちゃん」

 真剣な顔をして、ヘルメス少年。

 塩味の効いた上等な白麺麭を味わいながら、シルヴィアは少年に向き直った。

「役に立つかどうかは分からんが……あやつらと交渉するまえに、こう言うんじゃ。『海に没した王国の王たるヘルメス・トリスメギストスを後見とし、蒼き峰、金の蹄持つ雄山羊の守護せし王国の王にこいねがう』と」

「分かったわ」

 シルヴィアは頷いた。

 ここでどうして少年の……あるいは少年の祖父の名前を出すことに意味があるのか……よく分からなかったが、少年には少年の事情があって、今回、その『事情』がシルヴィアの役に立つかも知れない……そういうことなのだろう。

「もし、ガルシア・アリスタが噂に聞くような男ならば、こう持ちかければ、王たる者の義務と誇りにかけて嬢ちゃんの話に耳を傾けることくらいはするじゃろう。じゃが、聞き届けるかどうかは別じゃ。上手くせねばならんぞ」

 ヘルメス少年はそう言って、瞼を閉じた。

「王は、欲深い。それはかならずしも個人的な欲望、と言うわけではないがの。国土と王国の民を護るため、つねに『すべて』を得なければならん。あるいは、『すべて』を失わずに保持し続けねばならん。それが国を『べて』おると言うことじゃと、儂はそう心得ておる。そして、それが成せねばすなわち『敗北』じゃ。……すべてか、無か。王とは、生まれつきそういうごうを負っておる。じゃから、嬢ちゃんは王が既得したすべてをそのままに、自身を守る道を探さねばならん。分かるかの?」

 潤みを帯びた声音。

「たぶん、分かるわ」

 シルヴィアが応える。

「わたしがあそこに戻ることで、ガルシアさんが得て、わたしが失うものがあるとしたら、それを帳消しにしようとしても無駄ってことよね。……ガルシアさんは、絶対にそれを手放さない。自分自身と、アシエルさんのために」

 目を閉じ、少年の言葉を自身の身の内に納めようとするかのように、深呼吸する。

 そして、榛の瞳を開き、笑った。

 こんどこそ、ほんとうの意味で明るく、ふっきれたように。

「……きっと、わたしはだいじょうぶ。ヘルメス君、ほんとうに名前を出してもいいのかしら? 迷惑が掛かるようなことはない?」

「心配無用じゃよ」

 少年は鷹揚に頷いた。

 自信に満ち、揺るぎないその仕草は……なにひとつその根拠を示さずとも、その言葉が真実であることを、シルヴィアに実感させた。

 歳を経た者の言葉のように。

 あるいは……玉座に座る王の言葉のように。

「ほんとうにありがとう」

 シルヴィアは「ごちそうさま」と言いながら、立ち上がって食器を少年に返すと、とりあえずの荷物をまとめて扉を開けた。

「ヘルメス君、……じゃ、またね」

 夜はすっかり明けている。

 朝靄も、もうかなり薄くなっている。

 そろそろ朝の早い商店の使用人たちが仕事を始めるころだ。

 このあたりで知り合いに会う機会は滅多にないが、それでも父の商売上の知人にばったり出くわす可能性がまったくないわけではない。

 シルヴィアは小走りに駆け出した。

「ああ、またおいで。儂はいつでもここにおるからの」

 店の奥で食器を片付けながら、少年は呟く。

 これもまた……彼の祖父が使っていたのとおなじ、いつもの決まり文句だった。

 シルヴィアの立ち去ったあと、彼女の座っていた椅子に腰掛けて、少年はふと、溜息を吐いた。

「儂は知っておる。嬢ちゃんは、商人になりたかった。ひとが良いばかりで商売人としては出来の悪い父親の支えになりたかった。商人になるのを厭がっておった兄に、好きな道を歩んで欲しがっておった。よく知っておるよ。嬢ちゃんが十の歳に、この店にやってきてからのことは……儂はみんな覚えておる」

 ヘルメス・トリスメギストス

 いにしえに神の怒りに触れ、海中に没したという古大陸アトランティスの王にして、賢者の石を用いた転生の秘術……錬金術の奥義を究めし者。

 この世のすべてを解き明かす鍵となる……伝説に伝えられる緑柱石の石版(タルガ・ディ・ズメラルディ)の所有者とおなじ名を持つ少年は、だれに語るともなくそう呟き、透き通った翠玉ズメラルディの瞳をゆっくりと閉じたのだった。

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