カンプピストーレと繰術 その6
カシュッ
少し間抜けな音がするが、同時に魔てき弾が射出される。
男達は、慌てふためきながらも、目の前に何重にも魔法壁を作り上げた。魔法壁の手前で魔てき弾は炸裂する。
ピシャーン!!
高音と高振動が響き、魔法壁は粉々に砕け散った。
そして、目の前には7つの氷塊が出来上がる。
「……死なない程度に威力は抑えてあるわ。しばらく氷漬けになって反省しなさい!」
そう言うと、私は、踵を返した。
こちらが片付いたくらいに、ムーが戻ってきた。
「イブを狙った人だけどね、あっちの方向に逃げたみたい。距離はまあまあくらいかな?周りに人影は無かったよっ」
「OK。マップ出せる?」
私は、ムーに頼んだ。
正確な位置が知りたい。
「うん。分かった!」
≪マップクリエーション≫!
ムーは、魔法で即座に足元へ立体の地図を描いてみせた。
「この、赤い光の所だよ!」
マップ上には、敵と思しき赤い光がチカチカと光っている。既に逃げ果せた思ったのだろう、
移動速度はゆっくり一定だ。
10時の方向。距離は75メートルといったところかしら。
地図のお陰で、何処にいるかとてもよく分かるわ。やっぱりムーはよくできる子よね。
「ははーん?ここねー」
私は、ホルダーから新しい魔てき弾を取り出し、カンプフピストーレに装填した。
続けて、斜め上に銃口を向けて、そこの先にいるであろう標的に意識を絞る。
「当たるの?」
「まあ、見てなさいって」
不思議そうなムーに対し、片目を閉じて、笑顔を返す。
てき弾は、普通の弾丸と違って、真っ直ぐではなく、弧を描きながら飛ぶものだ。
だから、山なりに飛ばしせば、遮蔽物を乗り越えて着弾させる……というのも可能な筈だ。
一応これでも、時々練習しているんだよ?
「よし、いけっ!」
トリガーを引き、てき弾を放つ。
カシュンッ
うん、イメージ通りだわ。なかなか良い弾道を描いて飛んだと思う。
数秒後には、遠くでキンと甲高い音が鳴ると同時に、声にならない声が発せられた。
「命中っ♪」
「イブ!凄いや!」
ムーが感嘆の声を上げる。
私は、ふふん。と少しばかり得意げになった。
間を置いて、颯輝が、声を掛けて来る。
「すまない。俺のせいで巻き込んでしまって……お陰で助かったよ。それよりも、お前さ、傷は大丈夫なのか?」
視線を私の左肩に向けるが、既に血は止まっていた。破れた服の下から見える肌は綺麗に癒合している。
「……あれ、治ってる?」
「ああ、これねー……私、普通の人より治癒が早いのよ」
「これが普通?!嘘だろ、人より早いってレベルじゃねぇよ」
颯輝は、驚き混じりの間抜け声を出した。
私の身体が、人より治癒能力に優れていることに気づいたのはここに来てからだ。
流石に、切断されてしまったらどうなるか分からないが、切り傷や刺し傷程度なら直ぐに治る。
何故かは何となく分かっているつもりだが。詳しくは説明出来ないし、確証はない。おそらく、出生と関係があるんじゃないかとは思っている。
それにだ。
老師から体術を学んでいることも、身体の治癒力を高めている原因のひとつだろう。
その、老師の元で学んでるものというのは、
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