第102話 改築完了

四度目の修行が無事に終り帰路に着いた。

無論、今回は帰りの方が一人多くなり帰路も終始増えた龍之介が主役だった。

何時もの様に橘の屋敷に一旦寄り翌日からの探索の命を龍一郎から受け皆が龍之介の眠る姿を見てからそれぞれ家路に着いた。


清吉、お駒、平太、舞の親子に三郎太とお有は久しぶりの我が家に戻り驚いた。

確かに我が家なのだが知っている我が家では無かった。

面影はあるが真新しく其処かしこも以前と異なり豪華絢爛、優美になっていた。

余りの驚きに皆は声も無くただただ見惚れてしまい、三郎太が家の周りを回り始めると皆が一緒に眺め回り一回りした。

清吉が外玄関の扉をドンドンと叩いて叫んだ。

「何方かおられますか、清吉です、空けて下さいな、何方かおられませんか」

内玄関の開く音が聞こえた。

「清吉さん、清吉さんかね」

「へい、あっしで御座います」

「おぉ~その声は清吉どんだ、ちょっと待っておくれ、今開けるからよぉ~」

脇の括り戸では無く大門が左にそして右にと開いた。

「棟梁、良うも仕上げて下された。清吉、礼を申します」

棟梁の案内で一同が新装なった我が家を見て回った後、女将の座敷でお茶を飲んでいた。

「清吉つぁんや礼を言うのは儂の方かも知れんて・・・・これ程の格式を持った店の作りを見せて貰うた・・・さぞや昔は名のある船宿であったに違いねい・・・・裏の川に船止まりの杭の名残りが在ったでな」

「ほほう、左様で・・」

「・・儂ゃ~てっきり清吉つぁんは知っとると思うたがな~」

「へい、料亭かはたまた船宿かとは思っとりましたが・・・・証しはありやせんでした」

ここで棟梁が小声で清吉に言った。

「地下蔵があるのも知らんのか」

「地下蔵 ???」

「客室の覗き穴は ???」

「覗き穴 ???」

「なんも知らんのけ~、本当にか~」

「知っとったら立て直しを頼まん」

「んーじゃな~・・・まぁーこん話は長ごうなるけん、別の日にすべぇ~」

棟梁の配下にはいろいろな地方の者たちがいるので言葉使いがごちゃごちゃだった。

「はい、よろしくお願い申します・・・ありがとうございました棟梁、それで銭は足りましたか」

「大丈夫、大丈夫、再利用した物が多かったけん、余ったくらいじゃ」

「ゆっくり見させてもらいます」

「おぉーそうしちくれ~、直す処が有ったら言うてくれ、じゃー儂らはこれで帰るけん、またなー」

「お疲れ様でした」

清吉たちは労いの言葉で棟梁たちを見送った。

「さあー皆で見てみようか」

この夜、清吉たちが寝るのがとても遅くなったのは当然な事だった。

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