第94話 富三郎、お景 の出会い

お景は加賀金沢の武具屋の長女として生まれた。

富三郎 は、同じく金沢の郊外の大庄屋の三男として生まれ、富三郎 の方が六歳年長だ。

当初、お景は庄屋の次男との縁談が進んでいたが、ある日、突然、お景が、破談にしてほしいと言い出し、家族や周り、もちろん、相手方の知るところとなり、こちらをも慌てさせ怒らせた。

もちろん、両親を初め間に立った仲人も理由を質したが、破談を言い出した当初は「嫌いだから」の一点張りだった。

両親には、お景がこう言い出したらどうしようもない事は判っていた。

お景は幼い頃より頑固で一度「否」と言えばがんとして拒む、その代りと言えば語弊があるやも知れないが「する」と言えばどんなに辛くてもやり抜く意思の強さがあった。

お景が八歳の頃家族で芝居を見に行った。

お景は始めての芝居に甚く(イタク)感銘を受け、困った事に帰宅してのち剣の稽古場に通いたいと言い出した、此れには両親も困り果てた。

「剣術など女子(オナゴ)が嗜む(タシナム)ものでは無いがや」

母親の言葉にお景が応えた。

「店は武具屋でないか、店は弟が継ぐがや、儂は嫁に行く。そん時、武具屋の娘が商い道具が使えなきゃ店の恥でないがかい、父様(トトサマ)どうじゃ」

「う~ん、・・・・・相変わらず口では勝てん・・・」

「旦那様、如何に何でも娘が剣術など以ての外(モッテノホカ)やでな」

「はぁ~、しかしな・・・・お景が一度言い出したら仕方なかろ、違うかの」

「はぁ~まぁ~しかし・・・・・」

それから二日後にはお景自らが稽古場を見つけて来た。

「父様、親の許しがありぁ~女子でも良いと言うてくれる稽古場を見つけたがや、明日、一緒に行ってくんろ」

「何、女子でも入門を許す稽古場が有るてか・・・不埒者の稽古場ではないがか、名は何ね」

「井口言う稽古場だ」

「何ですと、井口ですと店の上得意で藩の稽古場とも言える処でないかい、本に女子でも良いと許しを得たがか・・・・う~ん、もしやお景・・・店の名を出したんか」

「うん、勿論出した、先生にもお会うた」

「それで、女子とは言え店の・・・・と言うたがか」

「うん、言うた」

「それで許しをもろたがか・・・・全くお前と言う娘は・・・・お景、お前が男ならな・・・・・」

「本に旦那様、お景の勝気と賢さを弟に・・・・・」

「それを言うても詮無い事だがや・・・・解かった、お景、明日一緒に行こう、お前の事だ、既に稽古着、竹刀などの用意も済んどるがやろ~」

「うん、蔵を探して合う物を見つけて有るがや」

「はぁ~」「はぁ~」

両親の溜息と共にお景の稽古場通いが決まった。

お景の縁談話が先方より申し込まれた時もお景の稽古場通いは続いていた。

いや、続いていたどころでは無い。

稽古始めが八歳と早かった事もあろうがお景の性分、頑固さと負けず嫌いが剣術には向いており、同年輩の男では相手に為らず五つも六つも年上の者たちと稽古をする位の腕前になっていた。

「嫌じゃ、見合いなんぞするつもりはねえ、お断りだがや」

「お景、此度ばかりは頼む、父の願いだがや、母の願いでもあるがや、相手は次男でも庄屋だぞ、それも只の庄屋では無い大庄屋だがや、この店が危ない時に助けて貰うたがや、大恩ある庄屋様だ、此度ばかりは見合いだけでも受けてくれ、お景、合うだけでも良い頼む、お景」

「大体、次男でしょ、跡継ぎの長男で無いところも気に入らんがや、本当に合うだけで良いがか、断っても良いがか、間違いないがやね」

「良い、会うだけで良い、それで私の顔が立つがや、宜しいな、見合いの日取りを決めるからな」

「解かったがや、先生にも少しは頑固さを無くする様に言われとる、此度は見合いをしましょ、但し、気に入らなければ断りよ、良いがやね」

「良いですとも、旦那様、直ぐに日取りを決めて戴きましょう」

その日の内に連絡が取られ、まるでお景の気が変わらぬ内にとばかりに翌日となった。

翌日、稽古を休み駕籠三台で親子三人が先方の庄屋宅へ向かった。

その家、屋敷はまるで武家屋敷の様で大きな門があり敷地内に母屋と別棟が何棟も建っている大きな大きな家だった。

駕籠を降りたお景は何時もとは異なり若い娘らしく振袖で愛らしい姿をしていた。

母屋に入る時、鍛冶屋が出す音と醸し出す匂いを感じ敷地を見回し敷地の端の小屋で金槌を振るう男を見かけ暫く見とれた。

母屋に入り両家対面で庄屋主人夫婦と長男夫婦と当事者の次男に会った。

お景の次男に対する印象は女々しく男らしさを感じないもので有った。

お景には居ないも同然で全く興味が無かった。

何やら二家で話してしたがお景には興味すら無かった、それよりも、母屋に入るときに見た鍛冶屋は何を作っているのか、とか、母屋の奥に見えた山に登ってみたいな、などと考えていた。

「お屋敷を見て周りたいのですが宜しいでしょうか」

我慢出来なくなったお景が尋ねた。

この言葉に両家の者達はお景が気に入ってくれたと思い薦めてくれた。

お景は庭を歩き幾つもの別棟を見て歩き、加治仕事をしている小屋へと近づいて行った。

その間、案内のつもりか次男が後を付いて廻った、だが一言も声は無かった。

「鍛冶屋さん、何を作っているのてすか」

「・・・・・・」

お景の問いに鍛冶屋は無言で淡々と仕事を続けていた。

それまで跡を付いて来るだけだった次男が横から声を掛けた。

「富三郎、聞いとるがか、返事をしい、この娘ごは儂の見合い相手のお景様だ。お前の姉になるがやぞ」

「えぇ~、弟さん、三男、富三郎さんと言いましたか。仕事中失礼しました、それから私はこの縁談をまだ受けてはおりませんからね」

お景は富三郎を見つめていた優しい目付きを鋭い目付きに変えて次男を睨んだ。

その余りの鋭い目付きに次男は震え上がってしまった。

長年の剣術修行で培ったもので己の力に自信が漲った眼力だった。

その鋭い目付きを優しいものに戻し鍛冶屋に再び尋ねた。

「何かを作っているのですか、治しているのですか、教えて下さいませ」

「鎌を治しております、何でも草狩りをしていて石にぶつけて折れた様です」

「ここからでもとても熱いです、熱くは無いのですか」

「勿論、熱いですよ、でも慣れですよ、慣れ、第一熱く無ければ鉄は溶けん」

「御尤も、それでその鎌は何方が折られたのですか、治す手間賃は幾らですか」

「この近くのお百姓さんの鎌です、手間賃は戴きません」

「ええぇ、ただで治しているのですか」

「はい、私の鍛治仕事の勉強ですから、こちらが礼をしたい位ですよ」

「まぁ、物好きなと言うか奇特なと言うか相変わらずと言うか・・・・・ところで富三郎様、私をお忘れですか・・・・」

「えぇ、弟を知っとるがか」

次男の言葉が耳に入らぬかの様にお景は富三郎を見詰めた。

「はぁ、何処かでお会い致しましたか、申し訳ありませんが記憶に御座いません」

「無理もありません、私も名を聞くまでは解かりませんでした、私ですよ、お景、武具屋のお景」

「えぇ~、あのお景ちゃん・・・・・見違えちまったじゃないか、綺麗になったね」

「おや、富三郎、暫く会わねぇ内に口が上手になったがや」

「なぁ~に、お前程変わっちゃおらんがや、ふぅふぅふぅ」

「あたいの御転婆は今も変わっちゃいないよ」

声を落として「今でも山に行っとるがか」と問うた。

富三郎は無言で小さく頷いた。


「おとっつぉん、お話が御座います」

お景が見合いから店に戻るなり父親に言った。

「待つがや、お景、お前が江戸弁と言うか武家言葉と言うか、で話す時はろくな事が無いでな」

父親も加賀の方言を改め返答した。

「おとっつぉん、此度の縁談は断って下さい」

「何を言うの倅殿がお景を町で見かけ縁談を申し込まれそれを受け先方様にも会い親御様もお前を気に入った御様子なのですよ。大庄屋、いえ、大々庄屋の嫁ですよ、何が不足だと言うのですか」

「おっかさん、大々庄屋でも相手は次男坊ですよ、そんな肩身の狭い思いは嫌です、それに私は何も庄屋に嫁に行かぬとは言っていません」

「えぇ~はて」

「何とけったいな事を」

「次男坊は女々しい男で虫唾が走ります・・・・・三男の富三郎様の元へなら嫁に参ります」

「三男ですと・・・・お景は知っておるのか」

「まさか、お前達は・・・・」

「本日、久方振りにお会い致しました、幼き頃におとっつぁんに連れられて何度も行きました、そのおり一緒に遊びました、それはそれは楽しゅう御座いました」

お景は知らず知らずに富三郎の話の時は言葉使いが丁寧になっていた。


父親は庄屋の大旦那と将棋を指しに行くおりにお景を連れて行った。

町並みから離れ広いところで遊ばせたかったからでお景が五つから七つの事であった。

当初、お景は庭で遊んでいたが、何時頃か一日中姿が見えない様になった。

だが父親が帰る頃にはちゃんと戻っていた。

父親が「何処で何をしていたのか」と問うと

「山や川原を歩いていた」と言った、何度聞いても何時も同じ返事だった。

実のところは庄屋の家の三男・富三郎を頭に仲間五、六人と一緒だった。

彼らは山で穴を掘って住処を作ったり釜を作り炭を焼き、売って皆で分け合ったり、年寄りしか居ない百姓屋の仕事を手伝ったりと毎日忙しい日々を過ごしていた。

お景は当初庄屋に行った時だけ仲間に入っていたが、富三郎たちが町に来たときには一緒に遊んでいた。

遊びと言っても駒回しなどの遊びでは無い、町には悪さをする子供たち、虐めをする子供たちがいた大人には見えないそんな子供たちを懲らしめていた。

仲間も元は富三郎に助けられた子らでお景が剣の稽古場に通う様にに成り富三郎と疎遠になる頃には仲間は十人を超えていた。


「困りましたなぁ~お前様、お景の意は変わりますまい」

「三男をなぁ・・・・う~ん・・・・お断りすればご機嫌を損ねようが・・・解かりました。明日、私がお話をしにまいりましょう、もう一度確かめます、お景、本に三男ならば良いのですね」

「はい、あぁ、三男と思いますが、とにかく富三郎様なれば嫁に参ります」

「解かりました、こうなれば私も親です、其方の意を適えましょう。いや・・・何・・実はな私も次男は頼り無いと内心思っておりました。何か断りの口実は無いものかと思案しておりました」

「お前様、それは真で・・・・そんな男に大事なお景を嫁になどやれるものですか・・・・でもお景、その富三郎と言う三男は大丈夫なのですか」

「はい、本日お会いした富三郎様は以前にも増して凛々(リリ)しくお成りで御座いました」

お景は今日会った時の様子を語って聞かせた。

「ほう、小作人の鎌をただで治しておりましたか、うん、うん」

「心優しいおのこ(男)のようですね、お前様」

「しかし、暮らしはどうするつもりか」

「まだ解かりません、でも、あの次男坊は庄屋の次男のままの一生でしょう。でも富三郎さんは何をしてでも食べさせてくれると思います。鍛冶屋もできます、百姓もできます、富三郎さんは百姓の長(オサ)の庄屋が百姓仕事ができないのは可笑しいと幼い頃から百姓仕事をしておりました。それに炭焼きもできます、兎に角(トニカク)頼りになる人です」

「良し解かった、ただ断るのでなし相手を変えるだけの事、次男なんぞにやるものですか、ふん」

父親もその気になってしまった。


「何ですと、当家との縁談を断るがやて、なんでなんや、解かっとるがか」

「如何か最後までお聞き下さいな、ご隠居様」

「何、断わっておいてまだ終わりで無いがやて・・」

「はい、御次男との縁談はお断りで御座います、娘はこちらの三男・富三郎さんとの縁組を望んでおります、如何かご理解下さい」

「富三郎やてか~、あの子は半分勘当の身じゃぞ」

「左様ですか・・・でも御座いましょうが、お聞き下さい、いえ、先ずお聞きしたいのですが、御次男の生計は何で立てられておられましょうか」

「生計・・・庄屋じゃ手に職などいらん」

「では金子は御隠居が与えておられる・・・・」

「儂か長男が渡す、それがどうした」

「では御三男はいかがで御座いましょう」

「富三郎な・・・・・はて、儂は金子を渡した事が無いな、お前たちはあるか」

大奥様も若夫婦も首を横に振り不思議そうな顔をした。

「そう言えばどうしているのか」

「で御座いましょう、もしも御隠居様に娘御がおられ一人は親から金子を貰う、一人は己で金子を都合する

さて、どちらに娘を嫁がせますかな」

「・・・・・うむ・・・・富三郎は何処に居る、今日も鍛治仕事をしておるか、呼んで来ておくれ」

若い使用人が飛び出して行った。

武具屋として商いをして来たが徳川家の世になり太平の時代が続き戦も無く武具商の商いが立ち行かなくなった時、将棋仲間だったこの大庄屋が農器具も扱えとの口添えをくれ大量に買い入れてくれた、それが転機となり武具商兼農器具商の現在があった。

それ以来、大恩人として折に触れて挨拶に来ていた。

「おお、富三郎、鍛治屋の似事か」

富三郎が薄汚れた野良着で庭に現れた。

「親父、何の様だね、鍛治仕事は火が冷めちゃお仕舞めいなんだよ」

「全くお前はてて親を少しは敬え」

「はい、はい、でぇ~用は何がや」

「お前、幾つになった」

「息子に歳を聞くのを親と言いまっかいな、二十一でおます」

何弁か解からぬ言葉で鹹かった。

「全くお前はああ~言えばこう言う、こう言えばあぁ~言う、全く、私はこれでも世間様から大庄屋様と慕われている男だがや少しは敬ってほしいな」

「はい、はい、偉え~偉え~偉え~な、だがね親父、親父が初代なら敬服するがや、親の跡を継いだだけじゃね~」

「・・・・そうかいそう言う事だったがか、お前の態度はそう言う事だったがか」

「だ・か・ら・用は何がや」

「おぉ、お前と話ていると本題を忘れるわい、どうだ嫁を取らんか」

父親の言葉に富三郎は座敷にいる皆を見回し客の武具屋に目を留めた。

「あぁ、良いよ、お景なら貰う」

「何と、お前らはもうできとるのか」

「富三郎、お前は何と言う事を・・・嫁入り前の娘に・・・・」

「大奥様、うちのお景は生娘だがや、第一お景に手出しできる男はいませんよ」

「如何して何ですか何か問題でもあるがか」

「大旦那様、大奥様、富三郎さんもこんな話をしては断られるかも知れませんが、どうせ解かる事ですからお知らせしておきます。お景は八歳の歳から剣の稽古場に通っています。並の男では勝てません、強いですよ、それでも良いですか、富三郎さん」

「えぇ女が剣術を・・・・富三郎どうする」

大旦那が狼狽した。

「それを今も・・・・富三郎」

大奥様も狼狽を口にした。

「儂は構わん、良いですね、儂は強くないし守って貰いましょ」

「全く、お前は・・・まぁ本人同士が良いと言うとる、二人の歳も良い、決まりじゃ、次男のお前は惚れられておらん。別の娘を見つけてやるで諦めろ、良いな、日取りや何やかやとは長男の嫁とそちらの女将さんにお願いしましょうかな」

「結構です、では私は早速帰りまして内のに伝えます」

「親父、火が冷めるで帰る・・・用は終わったやろ」

「行ね、行ね、お前の事じゃ言うのに全く、お前と話しとると話しが尽きんな・・・・・」

「親父、そりゃ楽しいからだね」

「ばかやろう、何が楽しいものか、早よ行ね、早よ行ね」

「武具屋さんや、将棋をせずに帰るがか、そりゃなかろ~」

「はぁ~・・・・しかし・・・・」

「・・・・実はな・・・・富三郎は近隣では神様、仏様と崇められておってなぁ~、お前ん処の娘は良い目を持っとるのぉ~」

「なんと~、神様、仏様ですと」

「あぁ、何年前の事だったかなぁ~」

大旦那が昔を懐かしむ様に町への洞窟道の話をした。

「えぇ~あの洞窟道にはそんな云われがありましたか・・・・あぁ、ええ、ええ、そう言われれば昔はこちらに参りますのに時がいりましたなぁ~、あの洞窟道を三男がのぉ~・・・・しかし大旦那は先ほど半分勘当の身と申されましたので三男がお嫌いと思いましたが・・・・」

「済まぬ、あれは嘘じゃよ、今話した件の前の事でのぉ~、跡継ぎの前で言うのも何じゃが今では富三郎が長男ならと思うとる、界隈の農民・・いや人々はのぉ儂の言う事よりも富三郎の言う事を聞きよる。儂が大庄屋と威張って居られるのも富三郎のお陰かも知れぬて・・・・」

「親父、跡継ぎの儂も富三郎には頭が上がらん、儂も富三郎の方が跡継ぎに向いとると思う」

「・・・・お前もそう思っとったか・・・・・だがな富三郎は庄屋なんぞに興味は無い、成りたいとも思うとりゃ~せんわい」

「儂もそう思うとる、だから儂はあいつが何をするにしても動き易い様にする事が仕事と思うとる、間違うとるかのぉ~、親父」

「いや~、儂もそう思うとる・・・・さっきの言葉は撤回じゃ・・・お前は跡継ぎに相応しい・・・・己を知っとるからな」

「お前様、私共は良い倅達に恵まれましたなぁ~」

「うん、うん、これも儂らの考えを改めさせてくれた富三郎のお陰じゃて・・・・・お前もしっかりせいよ」

大旦那が矛先を次男に向け叱り付けた。

大奥様が家族の会話を聞いていた武具屋に気付いた。

「大旦那様、本日は女将さん、娘御への報告が御座います、お引止めしない方が良いかと・・・」

「そうじゃな・・・・・内輪の話を聞かせてすまなんだな、富三郎との婚儀承知した、よろしく頼みます」

親子の会話が一頻りあり結局将棋を一局取り武具屋の旦那は帰って行った。


「ほう~二人は幼き頃よりの遊び仲間であったか」と小兵衛

「相思相愛でしたか・・・・」とお有

「何とも微笑ましい・・・羨ましい・・・・」とお峰

「お景殿が剣術をのう・・・・」と平四郎

「富三郎殿はうかうかできませぬな、女房殿が剣術、抜刀、柔術の修行者ですからね」とお久

「お久さんと良い勝負かも知れませんな」と清吉

「いえいえ、私の剣は稽古場だけの畳水練です、お久様の回国修行の腕前の足元にも及びません」

「本日一日で身体も解(ホグ)れたで有ろう、明日、昼餉の後に久しくやらなんだ試合を致そう、試合う相手はその場で儂が決める」

龍一郎のこの言葉に皆の顔が緊張とも期待とも取れるものに変貌した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る