第81話 富三郎 家族再会
翌日早朝、三郎太を頭としお有、平太、お景と其の子供二人は山へ向かった。
平太の背には長男がお有の背には長女いた。
お景は恐縮したが三郎太の「背負う二人の修行です」の言葉に納得した。
その三郎太はもしものため動き易い様に身軽だった。
行程は何事も無く昼が過ぎ夕闇迫る頃に小屋に着いた。
穴の中で作業をしていた富三郎は驚き大いに喜んだ。
「三郎太さん、不思議なものですね、皆がこちらに近づく一丁以上も前より誰かが来る事が解りました。これが敵なれば殺気と言うものを伴うのでしょうか、これも修行の賜物(タマモノ)ですか」
「如何にも(イカニモ)左様です、今の富三郎さんの技量ならここの警護は不要、我々は邪魔者ですね」
「お前様、本当に解りましたので・・・、私もその様になれますか」
「どうでしょうか、三郎太さん」
「龍一郎様から富三郎さんが受けた修行を教えなさい。成れますよ、私の目は奥方が旦那さんより素養があると申しております」
「お有殿、平太、どう思う、この読みは」
「私もそう見ました」「おらもじゃ」
二人が賛意の言葉を言った。
「精一杯、修練致します」
穴から出て来て子供達を抱き締めていた富三郎が
「あいや~、旅で腹が空いているべな、ささ、飯じゃ飯じゃ」
と皆を小屋に入れた。
三郎太たちは一夜泊まり翌日の日の出前に旅立って行った。
お有と平太は探察を始めたかったので当日の夜旅を三郎太に進言したが三郎太は泊まりとした。
無論、龍一郎との相談は成っていた。
翌日昼の四つ前には江戸に着き龍一郎の元に一時寄り三郎太たちは清吉の店へ戻った。
これまではお有は藩邸に戻らねばならず藩邸に送っていたがこの日からは違うのである、三郎太に取っては嬉しいうれしい驚きだった、但し内心はである、長年の忍びとしての暮らし故に表情には決して出さなかった。
其の日から清吉の蕎麦屋の調理場にはお有が加わり酒の菜が増えた。
誠一郎はと言えば勿論、同心組屋敷に引き上げていた。
その誠一郎の繋ぎ役となった舞は龍一郎の屋敷を住いとした。
橘家の屋敷からは清吉の店を住処に変えたお有の変わりとばかりに小兵衛が平四郎の稽古場を住処に替えていた。
無論後先が逆で小兵衛が藩邸に住まいを移したが故お有の棲家が変わったと言えた。
無論、これら全ては龍一郎の命で有り、探索の組分けに従っての住処替えであった。
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