黄昏庭園の妖魔
第28話
霧島貴音。
彼が語ったことは想像もつかないことばかりだった。
マリーが黄昏庭園と呼んだ場所。
リオンと彼の不死の血が生みだした
そして彼の憶測。
妖魔の中に
リリスの命が……閉じ込められている。
***
「計画どおりにいかなかったなぁ」
昼休みの屋上。
木曜日の曇り空の下、聞くことになった坂井の3度めのぼやき。ことの発端は月曜日、霧島雪斗が登校してきたことだ。
手紙の返事より早く霧島が現れた。
遅刻した僕は知らなかったけど、坂井の驚きようはすごかったらしい。坂井の計画では、返事が届き次第霧島邸を訪ね霧島を説得するはずだった。
「ごめんなさい坂井さん。自分で返事を渡したくて」
「いいのよ霧島君。夏美は真面目すぎるというか……思ったこと黙っていられないの」
謝る霧島と三上のそばでスマホチェックを進める野田。主人の名を調べてる中、霧島の登校で知ることになったのが気に入らないらしい。目的に対してまっすぐな坂井と野田。似合いだなって言ったら怒られるかな。
「ふたりとも、謝りもフォローもいらないから。だけど残念、みんなで雪斗君を説得しに行くはずだったんだけどな」
「面倒な説得が楽しみなんて。坂井委員長は変わってるんだな」
「野田君は余計なこと言い過ぎ。理沙もそう思うでしょ?」
「もういいじゃない。いつお屋敷に行くか話し合おうよ」
霧島邸か。
彼に言われたことちゃんと守らなきゃ。
黄昏庭園には近づいちゃいけないってみんなにどう説明しよう。下手なことを言うと野田が興味を持ちかねないし。
妖魔。
彼にだけ見えるものはどんな姿をしてるんだろう。僕にも見えるなら、リリスのために何かが出来るかもしれないのに。
雲に覆われた空を見ながら思う。
天界は何処にあるのか。天使と死神が住む世界、神と呼ばれる者が眠る場所。
塔の中、彼は今何を考えてるのか。神に近い者と崇められる中、天界を統べる者として。
カレンはリリスが罰を受けたことを知ってるのかな。
知ってるなら、リリスを助けようとしてるのか……それとも。
「霧島君、学校はどう? 嫌な思いはしてない?」
「ありがとう三上さん。今は夢道さんが一緒に来てくれるけど、ひとりで来れるようにならなきゃ。この学校を選んでよかった、手紙を書いてもらえるなんて」
嬉しそうな霧島のあとに続くスマホの音。
野田がゲームをし始めた。
「雪斗君、お屋敷にはいつ行ってもいいの? お兄様は迷惑じゃない?」
「大丈夫だよ坂井さん。貴音兄様も召使いのみんなも喜ぶよ。この頃、屋敷の人間だって自覚出来るんだ。もっと強くなって、貴音兄様に喜んでもらわなきゃ。そうだよね? 都筑君」
うなづきながら思う。彼の不死と妖魔の存在を霧島は知ってるんだろうか。リリスが僕に託したものは、思い出に絡む羽根のネックレス。だけどリオンとマリーの思い出に触れたところで妖魔を見ることが叶えられっこない。
リリスが彼に託したノート。
罰を受ける覚悟で託したものなら。リリスは、彼の力になりうる何かをノートに込めてるんじゃないのか?
帰りたい。
すぐにでも調べなきゃ。
妖魔の中にある人への羨望とリリスへの憎しみ。それがリリスを苦しめるなら、早く助け出さなきゃ。
「……君? 颯太君ってば」
三上の声に顔を上げると、霧島が微笑んでいる。
「お屋敷に行く日決まったよ。今度の日曜日、うちの揚
げ物お土産にしようかな?」
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