いざ行かん悪逆の都
「…どこで、その名を聞きましたか?」
「占い師のおばあちゃんから『冒険者になったら悪逆の都バーミング を目指すとよい。そこに巣食うのはギャングか、商人の皮を被った悪党のみ。暴れても善人には、余り迷惑がかからないじゃろう』とオススメされました!」
そうなのだ、実は占い師のおばあちゃんは冒険者ギルドから先の行くべき場所も教えてくれていたのだ。
「まぁ、荒くれ者ばかりで有名な街ですが…」
こちらを心配そうな顔で見てくるレジスタさんには申し訳ない気もするが…
「ぼくはそこで、暴れられるだけ暴れてみたいのです…」
心配そうな顔から呆れた顔に変わってしまった。
「はぁ…メイカ姉さまが、こんな
レジスタさんの呟きをスルーして話を急かした。
「どうすればバーミングへ行けますか?」
「…最初は『東の平原』から進んで『ブレンドウッドの森』へそこでレベル上げして『聖なる村 チェリムス』を目指すのが想定されていた序盤のルートです。」
なるほど、難易度やクエストボード等でそのルートを自然と選ぶように誘導されるのかな。
「『悪逆の都バーミング』へ向かうには北の門から北西へ進んで『斬殺平原 エッジウェイ』を越えて『鐘の街 セント・オール』そこから『ルーティング遺跡地帯』を抜けて『王の都 バッキンガウム』…」
「なんか中盤以降っぽい地名ばかりですね…」
「はい、最初のエッジウェイすらレベル40推奨地域になります。更には、エリア毎にボスモンスターが配置されてます。仮に戦闘を避け続けてもそこで瞬殺されるかと…」
瞬殺…
「…ハードな道のりになりそうです。それでも、目指して行ってみようと思います。」
とりあえず行ってダメなら諦めよう。
「かしこまりました、地図を出しましょう。しかしながら、普通にルートにそって進んでも、いずれは順当にレベルとスキルの成長や装備の強化が進んで行けるはずです。
無理そうなら普通のルートに戻ってきて下さいね。」
ぼくの無事を祈るようなレジスタさんが天使のように思える。
「死ぬのは痛いですからね!無理はしませんよ!」
「…ダウト」「
「…本当に気を付けてくださいね?」
「もちろんですよ!」
「どのみち最初の武器をもらう為には東の平原に続く門には行くのです。無理そうなら、そこまで引き返して下さいね!お姉さんとの約束ですよ!」
その言い方はズルい!
「はい!無理なら引き返します!」
ぼくの言葉ににこりと笑ってレジスタさんは手を打った。
「よかったぁ、知ってる子が死んでしまうのは気分が良くないので…こちらが、地図になります。本当に気を付けてくださいね。冒険者とは言うものの、冒険は無理をする事ではないのですよ。」
「ありがとうございます。」
「それでは安全に気を付けて冒険してくださいね。」
「はい!」
ドアをくぐって
_____________
ギルドを出て右手をまっすぐ行くと東の平原に続く門がある。
ぼくはそこにいる門番に声をかけた
「すみません、武器の貸し出しをお願いしたいのですが。」
「はーい!武器の貸し出しはこちらですよー!」
ここまで、何人を案内してるのかは分からないがやたらスムーズに通される。
一万人弱のプレイヤーがいるんだ、今日一日で新人門番もベテラン門番になるほど人の対応をすることになるだろう…
とても温かい目で門番のお兄さんを見る。
「お疲れ様です…」
「?ありがとうございます」
ちなみに、後で知るのだが最初の登録を終えてギルドを出た人から、無数のサーバーに自動的に振り分けられて人が分散されていたらしい。
最初の狩り場で混雑から喧嘩にならないように割りと細かく分けられていて、恐らくお兄さんも「ちょっと繁忙期かな」くらいの忙しさしか感じないようになっていたらしい。
そうして、案内された武器庫には色んな武器があった。
短剣 マインゴーシュ ソードブレイカー
直剣 曲剣 幅広の剣 刀 刺突剣 両手剣
長槍 短槍 十文字槍
ハルバード ジャベリン
手斧 大斧 ハンマー 棍 トンファー 金属バット バールのようなモノ 鞭
弓 短弓 クロスボウ 紐…違う、投石機? ブーメラン
杖が短いのから長いのまで多数……モーニングスター?なぜ杖の並びに?
魔導書なのか本もある
付け爪 メリケンサック
…色々あった。
「最初は種類の多さにみなさん驚かれますけど、性能はほぼ変わらずです。」
「魔法はまだ、使えないので今回はお見送りです、物理攻撃のやつを見てみます。」
「どうぞ、手にとってお試しくださいませ。」
手近な武器を手にとっては振るうイメージを思い浮かべる。
中々難しい…
モーニングスターは割りと使えそう…金属 バットも捨てがたい…
…槍なぁ、あんまり使えるイメージがないけど。
あれ?
「これでお願いいたします!」
「おや?珍しいですね」
_____________
名前:ハジマリの短槍
物理攻撃力:10
武器耐久度:∞
≪長めの木製の柄に鉄の穂先を取り付けた量産品。左腕に盾等を持った冒険者が好んで使う。決して壊れないハジマリの武器≫
_____________
「いや、剣よりもしっくりきちゃったので…」
「まぁ、人それぞれ合う合わないはあるからね」
門番のお兄さんがさらさらと書類に何かを書き記して、手渡してくれた。
「はい、ここにサインしたらもう持っていっていいからね」
「分かりました」
武器を貰いますって申請用紙のようだ。この『灰の都』の中では貰った武器を使って暴れませんって誓約書でもあるみたいだ。
さらさらっとLatyと記した。
「よし!これで冒険者としての準備が整ったね!門から出て東の平原のモンスターの駆除がんばってね!」
お兄さんの新人を元気よく見送ってあげようという心意気に申し訳なさを感じる。
「すみません、北の門の場所って向こうですか?」
いきなり明後日の方向へ行きたがったぼくに
出鼻をくじかれたお兄さんがずっこける。
「…えぇ。あっちに行って3つめの角を右に曲がってしばらく真っ直ぐ行ったら着くよ。…何か忘れ物?」
「あー、
「そうか…北の門から外には出るなよ、新人なんて一瞬で斬殺死体にされるだけだから!」
「善処します!」
「いい返事だ!いってらっしゃい!」
そうして、僕は『悪逆の都 バーミング』を目指すべく。
北の門の先、最初の難関 『斬殺平原 エッジウェイ』へと足を向けた。
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