《3》門番兵VSノイエス他

 リルたち三人は再び結界柱のやしろの前までやってきた。もちろん、さっきの門番兵二人が立っている。


「またあなたですか……」

「なんだ、数で勝負だとかいうのかい?」


 門番兵たちはうんざりという感じでノイエスを見、リルたちに目を向けた。


「だから! 僕は入れるんだよーなんでわかってくれないの―――」


 ノイエスはさっきと変わらず無理矢理入ろうとする。すると門番兵たちも同じように彼の行く手を阻んだ。


「だから、今はですね」

「え、ちょっと、ちゃんと言えば通れるでしょ!? あのこっちの人は……」


 リルが説明しようとすると、ノイエスはいきなりある方向を指さして叫んだ。


「あ!! なにあれぇ!?」

「え?」

「え?」

「え?」

「?」


 門番兵二人とリル、リュウキが何事かとノイエスの指さした方向を見る。

 その先には結界柱の社を囲む木々。そして半透明な結界の向こうに紺碧色の海が広がっているのが見えた。

 門番兵たちはなにかあるのかと目を凝らしていたが、やはり何も見つからないので訝しげに視線を戻すと。


「あれってどれ……な!?」

「いない!?」


 目の前にいたはずの三人が忽然といなくなっていることに門番兵二人は驚き、まさかと後ろを振り返る。

 案の定、その三人が敷地内に侵入しているではないか。


「おいこら!」

「待ちなさい!!」


 門番兵たちは慌ててリルたちを追いかけはじめた。


「え、ちょ、何!? なんで騙すのよ!?」


 訳が分からないままリルはともかく走っていた。ちなみに門番兵といっしょにリルたちの気も逸れてしまったが、ノイエスが叫んですぐに二人の腕を引っぱっていた。


「……なんか理由がありそうだな」


 同じく走りながらリュウキがノイエスを見る。


「あの門番兵偽物! いつもの人たちじゃないもん!」

「ええ? でももしかしたら突然辞めなくちゃいけなくなったとかじゃ?」

「門番兵のおじさんたちは別の場所にいるのは確認したんだ! あと、点検の開始時刻までまだ三十分以上もあるんだよ。もう閉めてるのはおかしい!」


 先頭を走りながらノイエスは説明していく。


「確かに、定期点検の日は朝から閉めるんだけど、今回はいつもの日に、外せない用事が、入ってね。人が、少な、そうな、日を……聞いて、急遽ぉ、前倒し、しぃ、たんだ……! おひゅー……ではぁ、いぃぱんのぉ、ひゅと、がぁー……けん……が……ぜー……ぜー……はー……ぜぇーー…………」

「お昼くらいまでは一般の人が見学に来る予定なので、マスターが来るまでぎりぎり開けておくという話だったんですー><」


 息切れしてしまいまともに言葉にならない主人に代わって、ワタロウが続きを説明……もとい言い直した。


「……あ、なるほど、ね……」

「……」


 ちなみに先頭にいた筈のノイエスは、今はリルたちの後ろを体をふらふら揺らしながら走っている。


「というかノイエスもうばてたの? アカデミーの時と全く変わってないじゃない……」


 リルは呆れた表情で最後尾のノイエスに視線を向けた。


「け、研究にぃ、体力、やぁ……持、久力、と、かぁ……いぃらない、もんん……!」

「……俺が後ろの門番兵足止めする」


 ノイエスのペースでは追いつかれると判断したリュウキが向きを変えようとすると。


「あの門番兵たちは誰かに連絡を取ろうとしていたので入口のあたりで眠ってもらった」

「あ、そうなの? リュウキってば早いわね」

「……俺はまだ何もしてないぞ」

「ん、あれ?」


 いつの間にか会話に一人加わっている。よく見れば最後尾だったはずのノイエスの後ろにもう一人増えていた。


「お、姉さん誰えぇ……?」


 息も絶え絶えにノイエスが灰色の髪の女性を振り返る。彼にとっては見知らぬ人だったが、リルとリュウキはよく知る人物だった。


「キサラ!」

「なんでここに?」


 ノイエスの後ろを走っていたのは灰色の髪の魔族――キサラだった。


「二人が押し入っていくのが見えたので気になってついてきた」

「お、押し入っていくって……」

「…………」


 間違ってはいないが。複雑な表情をする二人である。


「あ、ノイエスこの人はキサラよ。任務中に知り合って、今一緒に行動してるのよ」

「ぼ、ぼくはぁ……ノイエスゥ……だよぉ……よろひくぅ……」


 リルがキサラを紹介すると、息も絶え絶えにノイエスは挨拶した。


「キサラだ。……後ろからは来ないから少し休んでもいいと思う」


 ノイエスがぜーぜーいってるのを心配したのかキサラがそう言った。


「あ、そうだねぇ……」


 ぜえはあとノイエスは息を切らせて立ち止った。そしてワタ坊たちがやれ飲み物だの汗拭きだのと主人の世話を焼く。


「んー人気はないみたいね。見回りがいるかもしれないから気を付けないと……」


 リルとリュウキはノイエスが座り込んで休憩している間辺りの様子を伺った。


「それにしても門番兵が偽物だとして、本物はいったいどこに……」

「本当の門番兵のおじさんたちはこの先の広間にいるよ! 他にここの関係者の人も!」


 リュウキの疑問にワタ坊の一体が答えた。喋り方からしてノイエスがナナスケと呼んでいたワタ坊である。彼に言われて結界柱の社の様子を見に行っていたようだ。

 そこでリルははたとある事に気がついた。


「え、ちょっと待って。そういえば既に門番兵が偽物だって知ってたのよね。なんで事前に私たちに言ってくれないのよ!?」

「だってー先に言ったらあの偽物さんたちの前でいっしょに演技しないといけないでしょ? リルそういうの下手だし!」


 大分落ち着いてきたノイエスがそう言う。ちなみにリュウキについてはまだ出会ったばかりで判断できなかったといったところだ。


「うぐっ……そ、そんなことはないわよ」

「あれー? そうだっけ? アカデミーでの演習の時は……」

「あああ、言わんでよろしい!!!」


 リルは慌ててノイエスの言葉を遮った。


「おい、静かにしろよ。周りに聞こえるぞ」


 騒がしくなりかけたリルをリュウキが注意する。リルはむぐりと自分の口を押えた。


「門番兵が偽物か。他に怪しい奴はいるのか?」

「広間のところに四人! 一ヶ所に集めた社の人たちを見張ってる!」


 リュウキがたずねると様子見に行っていたナナスケが答えた。


「一人ひとりずつ相手をすればなんとかなりそうだな。だが、社の人たちを人質にされると厄介か……」

「それなら私に提案があるのだが」


 考え込むリュウキにそう言ったのはキサラだった。





-------------------------



<番外編>


リュウキ:よく門番兵が偽物だとわかったな

リル:見た目や話し方も普通だし私なら全然気づかなかったかも

ノイエス:まあ僕もたまたま気づいたんだけどねー

リル:というと?

ノイエス:えっとねー……(回想開始)



ノイエス:こんにちはー!……あれ?いつもの門番さんたちじゃないね

偽門番1:こんちゃ。ああ、前の二人は急遽他に異動になってな

偽門番2:こんにちは。今日から私たちがここに配属になりました

ノイエス:そうなんだ。ん、もう閉めてるの?(開始までまだ30分以上はあるんだけど。早めに閉めてくれたのかな

偽門番1:定期点検中だからな……っておい!

偽門番2:待ちなさい!

ノイエス:ん?

偽門番1:悪いが兄ちゃん、点検中は立ち入りできないんだよ

偽門番2:また改めて来てください

ノイエス:あ(新しい人だから僕の顔は知らないよね)、えっと……(身分証どこだったけ。これかな)はい!

偽門番1:……なんだ?

偽門番2:メモ帳?

ノイエス:あ(これじゃない)……うーんとー……はい!

偽門番1:……??

偽門番2:……(食べかけの板チョコ?


ザザッ(何やら台本を持ったワタ坊たちが並ぶ)


ワタロウ:ここは通せないの!もう点検始まってるんだよー!>< (何にしても通せませんよ。点検始まってますしね)

ジロー:……何、もう始まっているのか? (え、もう始まってるの?)

サブロー:ハイ。なので閉鎖してマス (おう。だから閉めてるんだよ)

シロウ:誰が来ているんですか……? (誰が来てるのー?)

ゴロウ:言えないな!帰った帰った! (――それは言えませんが、とにかくお帰りください) 

ロクロー:………(←わずかに傾いている) (心の声:せんせーが来る予定はないし……んん……?

ナナスケ:ちゃんちゃん♪



ノイエス:こんな感じ!

リル:……(なんで最後あたりだけ変わったんだろ……

リュウキ:……(これ読みにくくないか……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る