第22話 「学校に来ちゃだめでしょ」

 大急ぎで校庭に飛び出したあたしは、人の輪をかき分け中心に向かった。人の輪の中心で星野さんがしゃがみ込んでいる。

 その星野さんの前にいる黒い小さな生き物は……


「リアル!!」


 星野さんの前にちょこんと座り込んでいる黒猫は間違えなくリアル。

 あたしは駆け寄ってリアルを抱き上げた。


「学校に来ちゃだめでしょ」

「にゃあ」

「なにが、にゃあよ」


 おっといかん。人前で喋らせるわけにはいかなかったんだ。

 リアルの口があたしの耳元に近づくように抱きかかえた。

 これなら小声で話せる。


「ごめん。瑠璃華がちゃんとできたか気になって、つい」


 あたしはリアルの耳に口を寄せた。


「そんなにあたしの演技が信用できないの?」

「できない」


 ムカ!!


「あんたねえ……」


 ん? 周囲を見回す。

 ヤバ。みんなに注目されている。


「ご……ごめんなさい。この子うちの猫なの。勝手について来ちゃったのよ」

「ねえ、美樹本さん」


 星野さんがリアルを指さしている。


「その猫って」


 しまった!! 星野さんにメールの猫だとばれちゃう。


「名前はなんて言うの?」


 え? 気が付いてないのかな?


「リ……リアルよ」

「リアルちゃん。可愛い!!」


 あっと言う間もなく、星野さんはあたしの手からリアルを奪い取った。


「にゃあにゃあにゃあ」


 リアルは嫌がって暴れる。


「あら、暴れてる。やっぱり美樹本さんじゃないとだめなのかな?」


 星野さんはリアルを返してくれた。


「そうじゃなくて、猫はお腹とかしっぽを触られるのがいやなのよ」

「そうだったの。ところでこの猫って」


 う!! やっぱり、気づいてた?

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