第9話 人間だろうと猫だろうとも感謝の気持ちは忘れちゃいけない
途中獣医さんに寄ったり、ペットショップに寄ったりして、家に着いたのはそれから二時間後の事。
ようやく猫と二人きり? になったのはいいのだけど……
「にゃあ」
二階にあるあたしの部屋。六畳の和室の真ん中においた座布団の上で寝そべり、ときおり「にゃあ」と鳴くだけで喋る様子はない。
やはりさっきのは、あたしの空耳かな?
あたしは猫の尻尾を握ってみた。
二股に分かれてはいないね。
「にゃああ!!」
猫は抗議するような目であたしを睨む。
「猫又じゃないわね。じゃあなんで喋れるの?」
「にゃあ」
「なにが、にゃあよ。さっき車の中で『腹減った』て言ったのちゃんと聞いたんだからね」
「にゃにゃ」
「ひょっとして君。猫型宇宙人?」
「にゃあ」
「じゃあ本当は猫そっくりに作られた人造猫? 英語で言うとニャンロイド?」
「そんな英語あるかあ!!……は!」
やっぱり喋れたんだ。
「にゃ……にゃあ」
「今更遅い」
「く!! わざとでたらめな英語で俺を引っかけたな」
「え?」
いや、マジでニャンロイドって言うのか思ったけど違ったのか?
「そ……そうよ。わかってて言ったのよ」
そういう事にしておこう。
ん? この子、何してるんだろ?
机の下に前足を突っ込んで……何か紙切れを引っ張り出して……
ゲ!! あたしの英語のテスト!!
「見るな!!」
あたしはテスト用紙をひったくった。
「わかってなかったみたいだね」
「うるさいわね。猫に英語なんかわかるの?」
「アイ キャン スピーク イングリッシュ」
ムカつく。
でも可愛い。
可愛いけどムカつく。
「それより、何か食べさせてよ。お腹空いたよ。アイム ハングリー」
開き直ったな、こいつ。
「その前に、あたしに何か言うべき事があるんじゃないかな?」
「にゃ?」
猫はしばし考え込む。
「危ないところを助けて頂いてありがとうございました」
「よろしい」
人間だろうと猫だろうとも感謝の気持ちは忘れちゃいけない。
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