第31話Side北風真美
ルンルルンルン♪
はぁ〜!今日はサイッコーに、楽しい!本当に勉強頑張ってよかった!心臓のドキドキは止まらないけどそれでも楽しい!
さっき荒木くんと撮ったプリクラを眺めながら次の服屋さんはどうしようかな…?どんな服が似合うかな…?とちょっと考えている。
…荒木くんがトイレに行ったあとナンパされて文化祭で出会った元カレのことを思い出して怖かったけど、荒木くんがカッコよく助けてくれた!
あの時の荒木くんは雰囲気が映画で見た不良系の人と似てた…気がする!凄くかっこよかった。その後も優しく撫でてくれて…。きっと髪型を崩さないようにしてくれたんだろう。それも嬉しかったんだけど…。
『別に迷惑だなんて思わないよ。言っただろ?今日だけとはいえ俺は北風の彼氏なんだ。こんなに可愛い彼女なら守ることは責任というより義務なんだから。それに迷惑だとしても全然構わないよ。付き合ってるんだろ?今日だけだが。それなら迷惑ぐらいいっぱいかけたっていいんじゃねぇの?俺の思う理想の関係ってそんなものだぞ。』
ズッキューンッ!って来た!わ…私の事…可愛いって言ってくれた!それも嬉しいんだけど今日だけで設定だって分かってるんだけど、私を彼女として見てくれたのが1番嬉しかった!危うく「好き」って言ってしまいそうになった。
本当に…荒木くんとそういう関係になれたらいいのになぁ。今日だけと言わずにずっと…。そうなるために私も頑張らないと!もう少し強くなりたい。ナンパぐらいで心配されないようにしよう!
あの後もちょっと舞い上がって…、恋人繋ぎまでしちゃった…。あれはちょっとやりすぎたなぁって今では反省している。
恋人繋ぎしてくれたのが嬉しくて嬉しくて…、本当に恋人みたいで…。だからあの後も色々とワガママ言っちゃった…。荒木くんも迷惑だっただろうな。悪いことしたと思ってる。嫌われちゃったかな…って思うけど、荒木くんもクレーンゲームしてた時やゲームセンター出た後も何回か笑ってたし結果的にはそんなに悪くなかったかな…?
それにまたプレゼントを貰った!……荒木くんには本当に貰うばかりで何も返せてないなぁ。…今度何か私もプレゼントしてみよう!
でも、プリクラを撮ったのは本当にナイスだ!…悲しいけど今日が終わってもこの写真を見たら今日のことを思い出せる気がする。この関係は今日限りのものだから…。
だから今日を最高のものにしたい!私にとっても荒木くんにとっても!荒木くんも今日を楽しんで欲しい!
服屋に行った後はどこいこうかな〜。どこの服屋さん行こうかな〜、なんてプリクラを見ながら考えていると…、
「あれ?あんた何してるの?こんなところで。」
「ミク…。」
声にした方を見るとそこに居たのは中学生の時、仲良しだったミクだった。私は直ぐにプリクラをしまって隠した。中学生の時の記憶が頭の中をよぎった。…こんな時に出会いたくなかった。
「あんた…、その格好もしかしてデート中?はは。面白いわね〜!」
「ミク、中学の時は本当にごめん。私、あの時ミクとミクの好きな子と仲立ちしようと…思ったんだけど…、上手く出来なくて…。ごめん。」
中学の時に大切な友達だったミクのお願いで仲立ちして欲しいって頼まれてやり方なんて知らなかったから私なりにやろうとしたんだけど…。結果は上手くいかなかった。
「別にいいわよ。今頃謝られたって。それよりあんた今何してるのよ?」
「それは─」
「すみません。俺はこの子の彼氏なんですが。」
言いかけた途端に荒木くんが出て来た。どうしよう!?こんなタイミングで!?
「へぇ。この子が今の遊び相手なんだ〜。カッコイイねー。」
「違っ!!」
やっぱりミクはあの時のことを信じてくれていなかった。どうしよう?このままじゃ荒木くんに、誤解される!でも、どうしたらいいの?
「荒木くんかー。面白かったから特別に教えてあげる。君ね、この女に騙されてるよ。」
「っ!?だから違っ!!」
あの時のことは本当に違う!でもどれだけ言っても伝わる気がしない。どうしよう!?
「違わないわよ!あんたとは仲がいいと思っていたからあなただけに私の好きな人を教えていたのに!どうしてあの人はあんたのことを好きになってたのよ!あんたが何かしたからに決まってるでしょ!?」
「ほ、本当に何もしてない!」
「被害者は私だけじゃないわ。もっと沢山いる。あんたは人気で有名な男子を片っ端から誑かして惚れさせて告白させてフッたじゃない!!どうせ股でも開きまくったんでしょ!!あんた、ちょっと可愛いからって調子乗って!なんでも許さるなんて思わないでよ!!」
「っ!!」
それは本当に誤解だ。確かにモテることはあったし告白もいっぱいされたけど…。別に私から何かをした覚えはない。用事があってたまに話しかけることがあっただけ。それに…私に告白してきたほとんどの男子は私の見た目だけ。話したこともないのに一目見ただけで告白する男子もいた。
だから調子に乗った覚えもない。でも、それを言っても信じてもらえるか分からないし、他の人から見たらそう見えるのかもしれない。
「ほら、何も言わない!私が正しいって認めたんでしょ!だから君も早くこんな女、フッた方がいいわよ。じゃないといつか後悔することになるわ。確かに惚れてた女が簡単に股を開くようなビッチで悲しいかもしれないけど、真実よ。辛いなら私が慰めてあげようか?同じこの女に騙されたもの同士。仲良くしましょ。」
「……北風、いいのか?」
どうしよう…。嫌だ、このまま荒木くんと離れちゃうのは。せっかく仲良くなれたのに…。初めて恋…することが出来たのに…。素敵な人に出会えたのに…。こんなに…大好きになれたのに…。
「違う…。本当に違うのに…。」
でも、どうしようもない。これも因果応報なのかな…?泣いたらダメだ。それは荒木くんを心配させる。それに認めることになりそうで怖い。
「いえ、結構です。」
「なっ!?」「っ!?」
今…なんて言ったの?
「で、でもこの女との縁は切っておいた方がいいわよ!いつか後悔するわ!」
「ランニング、ヨガ、美容の研究、食事の研究…その他もろもろ。北風が中学の時から行っていたことらしいです。体型と美容を、キープするため?らしいです。」
ッ!?なんで知ってるの!?しかも目的まで!恥ずかしいじゃない!もしかして雪乃から??
「それがどうしたのよ?男を誑かして落とすためでしょ?」
「美しくありたいから…だそうです。まぁ、そこはどうでもいいんですよ。」
「「???」」
「あなた…本当にその人のこと好きだったんですか?」
「えぇ、そうよ!2年間ずっとその人のことを思い続けていたわ!」
「そうなんですか。なのに一瞬で諦め切れるようなものなんですね。」
ッ!私も同じことを言われたような気がした。
「なっ!?でも、そんなの人それぞれじゃない!」
「まぁ、そう言われたらそうですけど。本当に好きなら俺なら諦めませんけどね。掴むまで頑張りますよ。掴んだら離しませんよ?こんな風に。」
「キャッ!」
えっ?ええっ!?今私荒木くんに抱きしめられてる!?でも前がカミラだからなんとも言えないけど。ヤバい!心拍数が!荒木くんの手が私の背中に回っていることが分かる。
でも、優しく叩いたり撫でてくれたり…。うぅ。嬉しいけど…。子供扱いされてるみたい…。
「チッ!!それで!!!何が言いたい訳!?」
ミクすごく怒ってる。私の前でもこんなに怒ることなかったのに。荒木くん大丈夫かな?って思って顔を上げてみたけど、いつも通りの涼しそうな顔だった。若干笑ってるようにも見える。
カッコイイよぉ。今の私の顔はきっと大変なことになってる。泣きそうな顔なのに赤くて…。こんな顔は見られたくないからすぐにカミラに顔を埋めてしまった。
「いえ。まぁ、北風は美しくあるために努力してました。美しくあろうとして。その副産物としてモテていただけです。あなた達は努力も行動もしなかった。だから振り向いて貰えなかったんじゃないですかね?それにちょっとで諦めることが出来るぐらいの恋心なんですし。」
「それで何が言いたのかって言うとですね、簡潔に一言にまとめると
ヒステリックな女はモテねーぞ。」
「っ!!」
すごいなぁ。荒木くんは。怖いものとかないのかな?やっぱり好きだなぁ。…このまま好きでいてもいいのかな?
「沈黙するのは自覚してる証拠ですか?」
「こんのっ!!いつかその女にフラれて後悔するがいいわ!!」
「まぁ、その時は俺の見る目がなかったことですね。」
ミクはそのままどこかに行ってしまった。それを確認したら荒木くんは私からゆっくり手を離した。
「え…え…とあ、あの…。」
なんて言ったらいいんだろう。さっきミクが言ったことの訂正もしたいし、お礼もいいたい。けど上手く言葉が出てこない。
少しというかかなりミクから言われたことはショックだった。小学校から仲良くて…、中学でも途中まで仲良かったのにあんなこといわれるなんて思ってなかったから。
「これでチャラな。」
「えっ?」
「さっきパスタ屋で言って貰った言葉すげぇ嬉しかった。救われた。だからこれでチャラだ。」
私…何か言ったけ?後悔した話?あれが荒木くんを助けたの?
「悪い。北風、歩けるか。」
「えっ?あ、うん…。」
荒木くんに手を引かれてどんどん人気のないところまで連れていかれて、着いた場所は非常階段だった。周りには私達以外誰もいない。
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