2章

プロローグ

 遷延性意識障害というものがある。いわゆる、植物状態というやつだ。


 正人がそれになった。


「……」


 病室のベッドに横たわったままピクリとも動かない親友の姿を前に、俺は言葉もなく、ただ立ち尽くしていた。「なぜ」だとか、「どうして」だとか、そんな言葉ばかりが頭の中でぐるぐると渦を巻いている。


 だけど、言葉がどれだけとぐろを巻いても、その疑問の答えはどこにも見当たらない。


「正人……」


 答えを見つけられないままに、俺はただ、掠れた声で親友の名前を口にすることしかできなかった……。

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