<勇気>と<無謀>はまったく別のものですよ?
彼女が<探索>に出るための条件として提示された、
<決死隊の同道>
だけど、その決死隊の中には、彼女を慕ってた女の子二人も混じってた。
二人は、彼女の力になりたくて、ここまでの三年近く、徹底的に自分を鍛え上げてきたんだよね。
そして、<成人の儀>を見事クリアしたことで決死隊に志願。入隊を認められる。
二人は、孤児だったこともあって。
「<勇気>と<無謀>はまったく別のものですよ?」
彼女はそう言うんだけど、二人は、
「分かってる。そんなことは!」
「だけど私達は、このままルビアートに残っても、まともな人生を送れないから」
って。
確かに、貴族階級なら親を亡くしても他の貴族の<養子>として迎えられることもあるけど、平民の孤児である二人は、貴族の<愛唱>としてさえ見出される可能性は限りなく低かった。だとしたらそれこそ場末の娼婦くらいしか残されてない。
そういう社会的な背景については彼女も理解してたから、
「覚悟がおありなら、私からはもう何も申しません」
として受け入れて、同道を認めるんだ。
ちなみに、移動は、彼女が引く<乗合馬車用の客車>。ロボットであり馬より遥かに力が強く疲れないから、これが一番確実だということで。
そして、<エンディガ>を撃破しつつ、まずは東へと向かうんだ。だけど東は十日も移動したら海に行き当たってしまって。
それでも彼女にとっては重要な情報。海岸線を北方向に進みつつ自身が記憶したそれを基に地図を作成。<相互測位システム>(衛星と、地上にいる複数のロボット等の間でお互いに位置を確認し合うシステム。今で言うGPS)がないから正確さは保証の限りじゃないけど、少なくともルビアートで使われてる地図に比べれば遥かにマシという。
けれど彼女が一番確認したかったのは……
海岸線を移動すること一ヶ月。延べ一千キロを超える移動によって得た情報で、彼女は確信するんだ。
『海岸線の適合率、九十六パーセント。ほぼ間違いありませんね。ここは、惑星<ホーリィブライト>と推測されます』
って。
惑星<ホーリィブライト>。それは、彼女が推測したとおり、科学文明を否定した人間達のみで入植が行われた殖民惑星の名前。
まさしく、科学文明を否定して封印し、産業革命以前の生活をし始めた人間達が住んでいた惑星なんだ。
おそらく波による侵食等で多少の変化はあったものの、一千キロにわたり海岸線の形状が九十六パーセント一致するとなれば、さすがに否定しようもない。
彼女は、自身に残っていた殖民惑星のデータと照らし合わせて確認してみせたんだよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます