群れてるけど実は仲間意識があるわけでもない、連携が取れてるわけでもない、<壊れた奴らの集まり>
とにかく、ヤバい武装強盗団(いや、それ自体がもはや軍隊レベルの戦力を持ってるらしいんだけど)が付近に潜伏してるって情報がもたらされたことで、百年以上戦争がなかったこの国の軍隊にも緊張が走った。
もっとも、戦争はなくてもその手の犯罪集団の類はやっぱり現れたりはするから、<戦闘>についてはまったくの素人ってわけでもなかったりもする。
そんな軍に十五歳で正式に入隊できた主人公は、早速、武装強盗団への警戒のための哨戒に当たる部隊に配属されるんだ。
そうして哨戒任務に当たりながら思うんだよ。
『俺でさえ、以前に比べればキレることもなくなってきた……それなのに、強盗なんかやってる奴らはなんでそんなこと続けてるんだ……?』
主人公の疑問は当然だよね。彼は、<今の人生>を冷静に振り返ると、今までしつこくキレ倒してたのが不思議なくらい、恵まれた人生だった。両親以外の回りの人間からは疎まれもしたものの、それは結局、自分が勝手に噛み付いて招いた<自業自得>でしかなかった。
普通の十五歳くらいだとまだまだ精神的に不安定な時期だけにそこまで考えられないかもしれないけど、主人公の場合は前世と合わせると三十年以上生きてきたわけだから、さすがにちょっと違ってるんだよ。
そんなことを考えてると、ついに強盗団が現れて。
主人公の部隊が一番近かったから迎撃に向かうんだけど、彼がそこで見たのは、<強盗団>と言うよりは、明らかにただ自分の欲求を満たしたいだけの、
<快楽殺人者の群れ>
だった。
そいつらはそれこそ、手当たり次第、幼い子供どころか、庇おうとした母親ごと赤ん坊まで殺していく。
その光景を見て、主人公は思い知らされる。
『俺がやろうとしてたのは、こういうことだったのか……』
ってさ。
そして、主人公の目の前でまた、幼い子供が殺されようとしてて、
「……!!」
反射的に剣を構えて突撃するんだ。訓練どおり、一切声も上げず、相手の死角から一切の躊躇なく。
主人公自身、自分も同じく<殺戮者>になろうと腹を括ってただけに、容赦はなかった。
そいつらは確かに相手が軍隊だろうと恐れずに掛かってくる連中だったけど、それはただヤケクソ気味に突っ込んでくるだけの<特攻>で、
『こいつら、殺したいだけじゃなくて、<死にたがり>だ……!』
とも悟ってしまったり。
そう、この<武装強盗団>は、とにかく多くの人間を道連れにして死にたいだけの、
<通り魔の群れ>
でもあったんだ。
群れてるけど実は仲間意識があるわけでもない、連携が取れてるわけでもない、
<壊れた奴らの集まり>
その姿に自分を重ねてしまって、主人公はもうとにかく腹が立って腹が立って仕方なかったんだよね。
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