同じ失敗をしないために
この世にはさ、自分のやり方がそもそも適切じゃないから上手くいかないのに、その上手くいかない原因を相手の所為にしようとするのが本当に多いよね。
『親の所為にするな!』
ってこの言葉、前にも言ったように子供の立場で言ってるならまだ分かるんだけど、もし親の側が言ってるなら、要するに自分の失敗を、『子供の所為』に、『相手の所為』にしようとしてるだけじゃん。
しかも、主人公の娘を妊娠させた元顧問は、
『自分はハメられた! 誘ったのは女子生徒の方だ!!』
的なことをネットで発信し始めるんだよね。すると、
『もう高校生にもなったら嫌なら拒否だってできるはずだ!』
『顧問の所為にするな!』
『女はいくらでも嘘を吐く!』
てなことを言うのが同調し始めて、変な方向に盛り上がり始めてさ。
だけど、主人公はもう、顧問のことは『どうでもいい』と切り離すんだ。
どうせそういう奴に責任取らせようとしたって延々自己弁護に終始して平行線を辿るだけで身のある話し合いなんてできないし、そっちは弁護士に任せてね。
もちろん、感情の上では、
『目にモノ見せてやりたい!』
って考えたりはするよ? だけどさ、現実問題としてそういうタイプって、『懲りる』とかあると思う? まっとうに懲りるタイプなら、顧問を罷免され教師としてさえ解雇された時点で『大変なことをしてしまった』って思って懲りるんじゃないの?
そこで懲りるどころか、<ネット世論>の一部を味方につけて逆ギレだからね。そんなのまともに相手したって神経が磨り減るだけだよ。
『こんなクソ野郎を野放しにするのか!?』
って言うかもだけど、実際に相手して神経をすり減らすのは<『こんなクソ野郎を野放しにするのか!?』って言ってる人>じゃなくて、主人公達なんだよ?
『ロクでもない奴が痛い目を見る<勧善懲悪アニメ>を見る感覚で自分は何のリスクも負わずにスカッとしたい』
なんて輩の要望になんで応えなきゃいけないのさ?
そんなことよりも、娘の<心>を守るのが大事だと主人公は考えるんだよ。
自分の勝手でこの世に送り出してしまった娘のことを最優先にするんだ。
『娘に手を出したクソ野郎に目にもの見せてやる!』
的に、『自分の感情を優先する』んじゃなくてさ。
結局、<自分の感情こそを最優先する奴>が、今回、やらかしたってわけでしょ?
だったら、自分の感情を何より優先するのがどんな結果を生むのかこれで分かるってもんじゃん。
主人公はそれが分かるからこそ、『娘に手を出したクソ野郎に目にもの見せてやる!』っていう自分の感情を敢えて抑えるんだよ。
元顧問と同じ失敗をしないためにね。
今、大事なのは、娘の心と、生まれてくる子供の命。
それをわきまえてるってこと。
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