子供に対してその捌け口を
五歳の幼児からすれば、大人なんてそれこそ、
<巨人>
みたいなものだからね。
しかもその巨人は、気まぐれで、怒りっぽくて、些細なことで苛立って、しかもその苛立ちが原因に対して直接向けられないとなると、子供にその捌け口を求めてきたりもする。
『仕事が大変だったから』
『家事が忙しいから』
『上司がムカつくから』
『近所のおばさんに嫌味を言われたから』
なんて理由で苛々して、<上司>や<近所のおばさん>に向けられない感情を、非力で強く歯向かえない、攻撃できない、親から見て恰好の<捌け口>である子供(主人公)に向けるんだよね。
「なんでこの程度のこともできないんだ!」
みたいにさ。
さらには、周囲の大人達も、実際にはただの八つ当たり・憂さ晴らしとしてやってるだけのそれを、
『親だから当然のこと』
『そうするのが子供のためだから』
とか言って擁護すんの。
でもね、親がいっつもぐちぐちと愚痴をこぼしてるのを主人公は見てるから、それがただの八つ当たり・憂さ晴らしでしかないことを察しちゃうんだよね。
主人公は、転生前は、陰キャだけど真面目で、親にそんなに強く反抗するわけでもない<いい子>だったんだよ。思春期にはありがちな(と言われる)、自分でもよく分からない不安感や焦燥感や苛立ちみたいなものも抱えてたりはしてたけどね。
だけど、こうして転生して、多少は物事が分かるようになってから改めて幼児の時点からやり直してみて、自分の<苛立ち>の正体に気付いちゃうんだ。
それが、幼稚で自分勝手で嘘吐きな親や大人に対する憤りだったってことにさ。
加えて、五歳の子供の体。大人との<力の差>を思い知らされる。そして、そんんな非力な子供相手でも自分の憂さ晴らしに利用する卑劣さが鮮明になる。
そうなるともう、<いい子>ではいられない。
隠しておくつもりだった<魔法の才能>を発揮して、親や大人を見返し始めるんだよ。
すると親を筆頭に、大人達が主人公をちやほやし始めるんだ。それまでは、
『失敗作だな』
的に見下していたのにさ。
これに対して、主人公も、
『現金な奴らだな……』
って冷めた視線を向けながらも、胸がドキドキするのも感じるんだ。それまで親や周囲の大人から軽んじてこられた五歳の子供だったからね。いくら記憶や感性が前世のそれと結合したからといって、<五歳の子供としての記憶>も消えたわけじゃない。親から見下されてきた寂しさも、無意識のレベルで刻み込まれている。
それらが<身体的な反応>として現れて、主人公に影響を与えていくんだ。
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