第7話「幼馴染は、放課後デートをする②」
「――さて、着いたよ! ここ、ここに来たくって!」
「…………えぇー」
学校を出て最初に向かったのは駅前の広場。
そこには、1つのキャンピングカーが停車しており、その前で制服を着た学生達(圧倒的女子率の高さ)が列を作り並んでいた。もうこれを見ただけで帰りたくなってきた……。
「そんなに渋滞してないでしょ? ま、そんなこと言っても晴斗のことだろうから、私が代わりに買ってきてあげる。何食べたい?」
「…………
「後払いに決まってるでしょ?」
「ですよね」
淡い希望は呆気なく銀河の
キャンピングカーで販売しているのは、如何にも女子高生ウケしそうなクレープだ。それも様々な種類が売っているらしく、見たこともないトッピングまであった。
女子はこういうのを漫勉もなく買っていくんだろうな。インスタ映えだとか、そんな
僕はそういうことに興味を持たないし、きっと渚もそうだろう。
前提として、渚自身あまりスマホを活用しない。それなのに、休み時間中には僕を叩き起こそうとメッセージの波が途絶えることなく送ってくる。……寝かせてくださいお願いします。
「……じゃあ、チョコバナナで」
「了解! んじゃ、ちょっと待っててね。近くのベンチ確保しといて!」
「……ん」
キャンピングカーの方へと注文しに行った渚は、他の学校の女子の後方へと並ぶ。……うん、やっぱり目立つなあいつ。
離れて見るのも
けれど陽キャの割に半分ぐらい陰キャな性格を持ち合わせている渚だ。
絶対に「……む、無理ですぅ~~!!」とか言って逃げ出しそう……。簡単に想像出来てしまうのが恐ろしい。
「…………」
僕は言われた通り近くのベンチに腰掛ける。
そしてそのまま鞄から小説を取り出し読み始める。
……周りからしたら今の僕って、さぞかし浮いて見えるんだろうなぁ。
ほら、噂をすれば何とやら、こっちを指し示す他校の女子高生達がいるではないか。そして互いにゼロ距離でコソコソと苦笑いを浮かべているではないか。はぁ、辛っ……。
どうせ似合わないだとか、何でこんなとこに場違いな陰キャがだとか、そんないつもの陰口みたいなこと言われてんだろうな。
……自分でも思うが、何とも卑屈な考えをするようになったもんだ。
あいつと幼馴染だった頃もそうだったが、恋人同士になってからより一層、周りに対して敏感になってるような気がしないでもない。
「……まぁ、気にしても仕方ないんだけど」
そう、所詮気にしたってどうしようもない。
彼女がどこにでもいる女子高生ではないのだから、それに付き添っている僕は立場が違うとか、現代社会における差別待遇を受けることになるのは確定事項なのだから。
たとえ僕と渚の約束が交わさったからと言って、それが世間に反映されるわけじゃない。
だからこそ気にしたって意味がない。
そう心の中で強く訴え続け、彼女達から視線を逸らして、再び読書へと戻ろうとした。
――そんなときだった。
「――あ、あの……少しいいですか?」
「…………」
……今何か、他人から話しかけられた気がするんだけど。
いや、自意識過剰は良くない。もしこれで違っていたら完全に変な人になってしまう。ただでさえ今も浮いてる存在かもしれないのに、これ以上浮わつく訳にはいかない。
よってここで取る選択肢は1つ――『無視』一択。これだけだ。
「あ、あのぉ~~……」
「………………」
「き、聞こえてますか? ……そこの、読書してるあなたに言っているのですが」
「…………………………」
……あぁ、なるほどね。要はこの場にある意味場違いなイケメンが他にもいるってわけね。
と、そんな言い逃れしたいのだが、そうもいかなくなってしまった。
僕が本から視線を少し上げると、僕の前に少し前屈みになった先程の女子高生がいたのだ。えぇっと……これは一体、どういう状況でしょうか。何で先程僕のことを笑めかしていた女子高生が、僕の目の前に? ……WHY?
「えっと……何か用ですか?」
「あっ、やぁ~っと気づいてくれたぁ! あのぉ、お隣座ってもいいですか?」
「……え、はい」
「やったぁ~! ありがとうございます!」
僕にそう訊ねてくると、女子高生達は僕の隣へと腰を掛けた。
……なるほど、場所取りに来たってことか。話しかけられはしたものの、中身に関しては完全に自意識過剰だったな。これは後でグーパンで現実世界に呼び戻す必要がありそうだ。
「ところで、あのぉ~……」
……要件終わったんじゃないの?
場所取りを終えたはずの女子高生2人組はどうしてか、広い円形ベンチであるにも関わらず僕の真隣に座り、そしてお互いの距離を徐々に縮めつつあった。
「今日は、誰か一緒だったりしますか? も、もし一人だったら、その……私達とこれから一緒に“放課後デート”しませんか?」
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