第60話「僕は、友達に自身の想いを暴露する」
◆凪宮 晴斗◆
『なるほど。つまりお前は真実を告げたくないあまりにその場で『嘘』をついてきたわけか。最低だな、お前』
まさかこいつに「最低だな」と
「何でそうなる。お前だって納得して今回の件に協力してくれたんだろうが」
『まぁ確かに。無駄な心配をかけたくないっていう、お前のその気遣いに賛同するか否かと問いただされたら協力するさ、親友だしな。でもねぇ~?』
「……何だ、その意味深は
『……あのな、お前って人間はどこまで天然なんだよ! お前からの説明を聞いておおよそ状況はわかった。要するに、一之瀬はお前が隠し事をしていることを勘付いて、それを聞きたかったってことだろ? 別にオレはいいと思うけど? 話してやっても』
「……無理だ。このことは話さないって決めてる」
『決めてるもくそもねぇだろ。……じゃなきゃ、一之瀬から離れてくぞ』
「………………」
画面先から聞こえてくる透の正論に何も反論の余地は無かった。
電話越しから語られる透の言葉1つ1つが、全てを論破してしまっている以上、それは即ち――図星を突かれたのと同じことだ。
昼間の様子を見るに、渚は確かに何かを勘付いていた。
あの手紙にまで真相は辿り着いていないだろうが、それも時間の問題となってしまうだろう。
――だがそれでも、僕がやるべきことは変わらない。
ラブレターの件も、昨日の放課後にケリをつけた。これ以上この件にあいつを深入りさせる必要などどこにもない。だから周期が去るのを、ひたすら待てばいい。
と、これが僕の意見だった。
……だったのだが、本当にそれでいいのだろうか。今の透からの言葉もそうだが、あの渚の顔を見たら隠すことは正しい選択なのか……わからなくなってしまった。
余計な心配はさせたくない。
無駄な嫉妬は抱かせたくない。――だから、隠していたというのに……。
――何で、話してくれないの?
あのときの……今にも渚が崩れてしまいそうな、あんな辛そうな顔は紛れもなく僕が原因で作ってしまったものだ。
守ろうとしていた笑顔を、僕が自分のエゴで消してしまった……。
『ほらな? やっぱ言わなかったこと、後悔してるんじゃねぇか?』
「…………してない」
『ほぉ? そこまで意地を張るっていうなら、今の返事の間に出来た“空白”を説明してもらおうか? それも、オレが納得出来なきゃ即却下させてもらうような説明をな!』
「それ、どう考えたってお前の方に軍配上がりすぎてるだろ……」
仕組まれている。これは、透の挑発だ。
こいつはわかっている。だから敢えて、僕に『説明をしろ』なんて要求をしてきたんだ。
いくら嘘をつくのが上手い僕でも、このリア充を納得させるなんて巧みなスキルが、僕にあるわけがない。
それに……元々こいつには、僕の嘘は通用しない。常に周りに目を配り、他人のことを把握することが得意なこいつに挑むなんて――最初から、無謀なのだ。
「………………」
『おやおや。オレを納得させられるような説明、してくれないのかな。はーるーとー』
「……わかってるくせに。……負けでいいよ」
『やっぱり、か。……で? 正直お前は、一之瀬のことどう思ってんだよ』
「どう……って?」
『この鈍感製造マシンめ……!! ……いいか? 出来るだけ簡単に言うぞ? 普段お前らが互いを思ってやっていることの数々は、最早“幼馴染だから”っていうレベルじゃ片付かないんだよ! 単刀直入に言えば、お前らの言動はオレと美穂以上にイチャついてるようにしか見えねぇんだよ』
「はぁああ――――っ!?」
僕は思わずベッドに転がっていた身体を起こした。
い、いきなり何言いだすんだよこいつ!! お前と佐倉さん、つまりリアルリア充よりイチャついてる、だと……!?
……というか、何でこんなに動揺してるんだ僕は。いつもだったら軽く受け流すか、冗談だろとか言って無視してるのに。
いつものように、嫌味気分で言われてるだけだというのに……何故かいつものように、受け流せない。それどころか妙に言葉が身に
この何とも言えない気持ちを抱いたまま、僕は透に先程の問いを返答することにした。
「ど、どうって。そりゃあ……幼馴染として――」
『だーかーらー! そんなありきたりな理由だけじゃ説明つかねぇんだって言ってんだろうがさっきから! いい加減自分の気持ちに素直になりやがれ!』
透の真っ直ぐで、透き取った大声。
耳の中で反芻するその声は呆れから出た言葉なのだとすぐに悟った。
……素直になる、か。
「……素直も何も――」
『ん、どうした?』
「……僕はお前じゃないから。お前みたいに、何でもすぐに言えるような関係じゃないんだ、あいつとは。離れた距離があるから……その分僕は、余計に気を遣う……」
『……っ!?』
「……どうしたんだよ、急に黙り込んで」
『え、あ、いや……。お前がオレにそんな弱音吐いたの、初めてだったからさ。少し驚いただけだ』
「失礼な奴だな、まったく……」
僕は再びベッドの上で横になる。
勢いよく倒れた影響でベッドの上に無造作に置かれたラノベが揺れる。
そんな僕と本を照らしてくれるのは、天井に取り付けられた1つの照明。そこから、今の僕には眩しすぎる光が放たれていた。額の腕を乗せ、照明が視界に入らぬよう目元を
まるで、いつも隣にいるあいつみたいで――。
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