安藤桃香、要請を受諾する
翌日、エリナ・バーンズは、
「協力費をご用意しますので、ご協力をお願いできませんでしょうか?」
と、アンドゥの経営者であり
「え? ああ、え…と、どうしましょう……」
酷く戸惑っていた。と言うのも、桃香は、パン作りの腕は一流であるものの、その一方で、それ以外のことについては本当に疎いタイプだったのだ。そこで、紫音の婚約者である
実はアンドゥ起業までの一切合切をしてくれたのが良純だったのである。
良純の両親は第三次火星大戦の際に死亡しており、その後、桃香に引き取られ、紫音とは兄妹同然で育ってきた仲だった。また、桃香の夫も同じく第三次火星大戦で亡くなっている。
つまり、紫音も良純も第三次火星大戦の際には生まれていたわけなので実年齢はそういうことではあるものの、老化抑制技術の実用化によりそれ以降に生まれた世代の場合は、処置さえ受けていれば実年齢のざっと半分くらいの肉体年齢であり、加えて実を言うと紫音も良純もエリナよりも年上だったりもするのだが、その辺りはあまり気にしても仕方ないだろう。以前にも触れたとおり、現在では<年齢>は重要な情報ではなくなっている。成人した後においては。
その紫音の母親である桃香も、まあ、そういうことだ。外見だけで見れば、老化抑制技術が実用化される以前の三十代半ばくらいにしか思えない。
なのでそれは脇に置くとして、良純が代わりにエリナらと協議、
「分かりました。ご協力いたします」
と承諾してくれた。
こうして、翌日には、
「今日からよろしくお願いします♡」
白百合2139-PB(仮)の姿でそう挨拶した千堂アリシアに、
「こちらこそよろしくお願いしますね」
紫音は笑顔で応じた。
ちなみに、メイトギア課第一ラボから支払われる<協力金>の額は、一日ごとに一万五千円となっている。アンドゥ側からすれば、協力金がもらえて人手も確保できるということで、まったく損のない話だった。
また、メイトギア課第一ラボとしても、当てもなくただ会議室で『ああでもない』『こうでもない』と頭をひねっているよりは有意義であろうことから、双方共に<利>のある話ではある。
そして早速、
「いらっしゃいませ♡」
お客を迎えてアリシアが笑顔を浮かべると、
「あ、ロボットを入れたんですか?」
若い女性客がすぐに白百合2139-PB(仮)をロボットだと見抜き、紫音にそう問い掛けてきた。対して紫音は、
「いえ、メイトギア課の新商品の開発に協力してるんです」
正直に応えたのであった。
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