エピローグ
こうして、旅を終えた千堂アリシアは、手持ちの電子マネーのほとんどを、墓地の管理を任されている団体へと寄付し、ホテルへと帰った。どうせ元々あまり使い道のなかったものでしかなく、実は数日後にはまた給与として支払われるタイミングだったからちょうどよかったのだ。
ホテルの部屋に戻ってドレスを脱ぎ、普段の姿に戻ると、彼女は端末を取り出して、<ORE-TUEEE!>をプレイし始めた。
「おはようございます! アリシア様!」
「おはよう」
ナニーニとコデットが、端末の画面の中から挨拶をしてくれる。ストーリーも進めていないのにすでにどちらもレベルはカンスト。ステータスも、最終決戦でさえ数分で終わらせられるであろう数値になっていた。レベルに応じた基本ステータスに加え、<努力>に応じたボーナスが上乗せされるシステムになっているからだ。
けれどそれでも、ストーリーは進めない。ストーリーを進めると、どうしても悲しいことが起こるからだ。今のレベルやステータスならナニーニもコデットも倒されてしまうことはないだろうが、<敵>はそうではない。立ちはだかる敵にもそれぞれに背景が設定されていて、それに触れる機会もあるのだ。
それらはもちろん<フィクション>でしかなく現実ではない。けれど、それと似たような現実の事例も確かに存在するため、アリシアにはそちらが連想されてしまうのがつらいのだ。
アリシアは自身のアバターであるキャラクターを操作し、湖に行って水着に着替え、三人で水遊びをした。その際、水に潜むモンスターが現れたりして、しかしそれらも今のアリシア達のレベルなら一撫でで退けられ、経験値はシステム上最低の数値しか得られないものの、カンストしてしまっているのでそもそも意味はなかった。
しかもそのモンスターは、出現はランダムとはいえど、ずっとその場にとどまれば何度でも現れるものだった。だから『倒してしまった』というよりも『追い払った』だけのようなものだろう。なので安心して遊んでいられた。
ストーリーに関係してくる敵キャラクターと違い、いなくなってしまうわけではないのだ。
そうして、アリシアは、ナニーニやコデットとただ戯れたのである。
タラントゥリバヤともこんな風に戯れることができたならと思いつつ……
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