千堂アリシア、チェックインする

ホテルに到着した千堂京一せんどうけいいちと千堂アリシアは、チェックインを済ませ部屋へと案内された。人間のホテルマンが対応してくれる、グレードの高いホテルだった。


これが、一般向けの中でも低料金を売りにしているホテルだとメイトギアになり、さらにバックパッカー的な格安旅行を旨としている者を主なターゲットにしている格安ホテルなどになると、もはやメイトギアでもレイバーギアでもなく、ホテル自体が一個のロボットであり、ディスプレイに<係員のアバター>が表示され対応するというだけのものになったりもする。『ホテル自体が一個のロボット』というのは上のグレードのホテルでも同じだが、<ホテルマン>を廃することでコストを下げているわけだ。


そういうところは、料金は先払いであり、料金を払うとカードキーが出てきて、最初の予定を超えて連泊する場合にはさらに追加料金を払うことでカードキーが改めて有効になるという形式が多いそうだ。


ちなみに、カードキーが持ち去られたとしてもそれ自体にチップが埋め込まれており位置情報が送られるので、すぐさま追跡されるという。もちろんそれらセキュリティーを突破する方法はあるらしいが、なにもそこまでして格安ホテルに泊まる必要もないだろう。そんなことをするのは、足跡を残したくないテロリストや指名手配犯くらいのものだ。なので、不正が検出されると直ちに警察に通報されてしまう。


などと文字通り機械的な対応になるが、それ自体、


『人間のホテルマンに気遣われるのは苦手』


というタイプの人間にとっては逆に気楽なため、敢えてそういうホテルを選ぶ者もいるのだとか。


そんな余談はさておいて、二人が案内されたのは、このホテルでは一般的なスイートだった。もっと上等な部屋もあるものの、千堂自身はあまり拘りがないので特に問題もない。


「どうする? 私はこれから人に会いに行くが」


問い掛ける千堂に、アリシアは応える。


「私は……このままタラントゥリバヤさんのお墓に行きたいと思います。今この段階で出向かないと、もう足が向かなくなってしまいそうなので……」


そうだ。変に腰を落ち着けてしまったら決意が揺らぎそうな気がした。<心>というのはそういうものだ。だからアリシアも、気持ちが維持できている間にまずと思った。


「分かった。では、準備をしよう。もし私より先に戻ってきた時には、ロビーで待っていてくれ」


カードキーは、さすがに人間のみにしか渡されない。なので、千堂と一緒でないと部屋の出入りはできないのだ。


こればかりは彼女がロボットある以上、やむを得ない。


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