千堂アリシア、オックスフォード・スクエアを堪能する

夕方。<オックスフォード・スクエア>にタクシーでやってきた千堂アリシア(がリンクしているドロシーmk‐6)は、多くの人間が行き交うそこに降り立ち、それこそ人間達の様子を見て回った。


イギリスにおいてはプロンプトン・ロードに本店が今なお存在、創業六百年を誇る老舗中の老舗百貨店<ハロッズ>の支店を中心に数々の百貨店がしのぎを削り、超有名ブランドの直営店が並び、いくつもの劇場が点在、商業のみならず芸能・芸術の中心地でもある。


特に<ハロッズ>は、もはやそれ自体がテーマパークのごとく巨大な、そして今なお広がりつつある、売り場面積が十万平方メートルにも達する本店に迫る九万平方メートル(実は二十一世紀初頭のハロッズ本店の売り場面積と同等)という途轍もない規模の百貨店であった。ちなみに東京ディズニーランドの広さが五十一万平方メートルなので、実にそれの六分の一を大きく上回る広さであり、その巨大さが想像できるだろうか。


アルビオンを建設する際にも、ハロッズは協賛企業の一つとして名を連ねている。これだけの売り場面積を確保できたのも、それだけ協力したというのを表してもいるのだろう。


正直、ハロッズ一つあれば、日常的に必要になるもののほとんどが手に入るのだが、他の百貨店や商店なども、それぞれの特色を出したり、専門店としての品揃えを充実させたりという形で競い合っている。


千堂アリシアは、そんなバリエーション豊かな商店を見て回った。かつて<ニューカイロ>でアレキサンドロ・マカトーニとフローリアM9がドレスアップのために立ち寄ったブランドショップの支店もあった。


それだけじゃない。


「この店は……!」


なんと、あの時、千堂京一せんどうけいいちがアリシアのためにドレスを買ってくれたショップの支店までもが存在したのだ。決して大きなブランドショップではなかったのに、こうして支店が存在するということは、それだけファンがいるということなのだろう。しかも、アリシアが着たドレスの最新バージョンと思しきものがショーウインドウに飾られてもいた。


「ああ……」


アリシアは、千堂にドレスを買ってもらってときめいた時のことを思い出し、見惚れてしまう。


実はあの時のドレスについては、クグリが扮していたと思しき酔客によって破られてしまったものの、その後、JAPAN-2ジャパンセカンドの衣類リペア専門部署に持ち込まれ、何と繊維単位で繋ぎ合わされて本来の姿を取り戻し、今も千堂邸のアリシアの部屋のクローゼットに大切に保管されていたのだった。


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