宿角森厳、意義を語る
『いかにロボットに頼らずに人間らしく生きるか?』
それがこの集落、
<
が目指すものだった。
それについて、
「ここはな。第一次火星大戦の際に、わしの両親が疎開した場所だったんだ。戦略上何の価値もない僻地だったことで戦火を免れた場所でもある。
でも、戦況も趨勢が見えてきて休戦の機運が生まれた頃、突然、ロボットを引き連れた部隊が降下してきてここを拠点にしようとした。地理的にはあまり意味のない場所のはずだったんだが、奴らはだからこそ戦術自衛軍の裏をかけると思ったんだろう。
しかし、ここに疎開していた者達の中に退役した戦術自衛軍の元軍人がいて、敵の指揮官を拘束、作戦の即時中止を要求したんだ。その指揮官は要求に応じて作戦の停止を約束したが、この時、連れてきていたロボット共は、その指揮官こそを<本来の命令を破壊するために送り込まれた敵の工作員>とその場で判断して、掃討作戦を始めたんだ。ロボットを作った奴らがそう設定していた。わしの両親、つまりお前さん方の曽祖父母もその時に亡くなった。
こんな風に、ロボットというのは、命令一つで、その命令がいかに非合理的で非人道的であろうとも実行できてしまうものなんだ。今のロボットはそういう部分も考えられて安全になったと言うが、当時を知るわしらとしては、とても信じることはできん。
とは言え、今はもう人間は科学技術なしではまともに生きていくことができないのも分かってる。だからこそわしらは、ロボットに頼り切らずにその上で上手く科学技術を使いこなすことで生きていくのを目指してるんだ」
そう冷静に語る通り、森厳らは決して、
<AIおよびロボットの排斥>
を訴えているわけではない。<人類の夜明け戦線>や<人類の夜明け戦線R(リベンジ)>のように、テロ行為で社会の変革を狙っているわけでもない。ただ、今の社会とは別のアプローチで、人間らしく穏当に生きていくことを目指しているだけだ。
だから結愛の両親も、
「おっしゃりたいことは分かります。僕達はここよりはロボットに頼っていますけど、それでも節度をわきまえたいとは考えています」
「そうです。私もこの子も、自分が人間だということは忘れないようにと思ってるんです」
娘を見詰めつつ、そう応えたのだった。
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