ディミトリス・メルクーリ、女性を励ます
そうしてディミトリスが救助を行っていると、若い女性が、頭から血を流しながら、
「私、死ぬの……? イヤだ、死にたくない……」
ボロボロと涙を溢しながら訴えてきた。けれど、ディミトリスは、そんな女性に対し、
「バカ言うな! 人間はこのくらいじゃ死なねーぜ!」
イタリア男らしい陽気な笑顔を浮かべて軽い調子で言った。さらに、
「だからよ、怪我が治ったら快気祝いに俺とデートしようぜ!」
などと軽口を叩く。すると女性は
「冗談…! 私、フィアンセがいるのよ」
と少しだけ笑顔になった。
「そりゃ、残念だ。でも、この出会いを大切にしたいね」
と言いつつ、女性に肩を貸しつつ階段を上る。そうして救急隊員に彼女を預け、ウインクを贈って見せた。
それからもクンタッチLP400Sと共に次々とを怪我人を運び出し、さらにそこに、通り掛かったメイトギアらも駆け付ける。近所の住人達が、事態を察し、メイトギアを連れてきたのだ。今では当たり前の光景である。
人間なら素人が下手に手出しをするとかえって邪魔になることもあるかもしれないものの、ロボットであれば、互いに通信で常時連絡を取り合い、有機的に連携して対処できるがゆえに、大変な力になる。しかもレスキュー用のメイトギアが指揮をすれば、ベテランのレスキュー隊員すら顔負けの働きさえできるのだから。
こうなると、生身の人間であり、レスキューに関しては所詮は素人のディミトリスではかえって邪魔になる。
なので後は、メイトギアらと連携もできるクンタッチLP400Sに任せ、自分は港で待機しているスタッフらに連絡を取り、無事であることを伝えた。
「ボス! 無事でよかった!」
「また無茶してるんじゃないかとヒヤヒヤでしたよ!」
当然、仲間達も、ニュースで事情を知ってヤキモキしていた。聞き慣れたそんな声を聞いて、ディミトリスもホッとする。
「はっ! ヘマとかするかよ! この俺を誰だと思ってんだ! <絶海の貴公子>ディミトリス・メルクーリ様だぞ!?」
軽口も絶好調だ。そんな彼に対して仲間達も、
「はあ? そんなの初めて聞きましたよ」
「調子こいてないでとっととこっちに来てくださいよ。カルキノスの奴も待ちくたびれてますぜ」
軽口を返す。本当に気の置けない仲間達なのだと分かる。
「まあ、そうしたいのはヤマヤマだけどよ、もうちょっとこっちで作業してから行くわ。そっちはお前らに任せた。カルキノスにもよろしく言っといてくれ」
「しょうがねえなあ」
「ボスの悪い癖が出たぜ」
「まったく。金にもならねえのによ」
呆れた様子ながらも、その声はあたたかみを感じさせるものなのだった。
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