サイボーグの男、感情を燃え上がらせる
仲間のサイボーグも死亡。サイボーグが全滅したことを悟った生き残りのゲリラ達も脱兎のごとく逃走。それを見送った自分達を倒したメイトギアが動きを止めた瞬間、ゲイツは自身にできる最大稼働でそいつに掴みかかろうとした。
『ロボットは<油断>しない』
そんなことはゲイツも分かっている。しかし、状況が終了したと判断し戦闘モードから通常モードに切り替わった場合、再び戦闘モードに切り替わるまでにはほんのわずかなタイムラグがある。ゲイツはそれに賭けたのだ。
だが、この時のゲイツの判断も、それまでのダメージの影響もあってか、狂いが生じていたのかもしれない。そのメイトギアは掴みかかってきた彼をふわりと躱し、その視界から消え失せた。胴体部に設置されたカメラは、あくまで非常時用の予備でしかなく、戦闘に耐えられるような性能ではなかったのだ。
「!?」
立ち上がった自身の両肩に荷重がかかったことをゲイツが察した時には、もうすでに手遅れだった。
ヴーッッ!!
という、エンジン音のような銃声が響いた瞬間、彼の意識は何もない暗闇へと落ちていった。
百発以上の弾丸が、破壊された頭の部分からボディ内へと撃ち込まれ、しかも、なまじそれなりの防弾性能も備えたボディだったことで銃弾が内部で何度も跳弾し、脳を含めたあらゆるものをズタズタに引き裂き、破壊したのだ。
脳が破壊されてしまっては、どんな強力なサイボーグであろうとも、死ぬ。そして、ゲイツも死んだ。数多くの命を奪ってきた最後に、自分も銃弾を浴びて死んだ。
まぎれもなく、自らが招いた結末だっただろう。
こうしてゲイツが死んだことを知らされた<サイボーグの男>は怒り狂い、復讐を誓い、いつかそれを果たすための準備期間として、テロリストとして活動を始めたのだった。
そして今、警察用のメイトギアを相手に、憂さを晴らしていたところなのだ。
が、そんな<サイボーグの男>の前に、新たな人影。
いや、メイトギアだった。メイトギアが立ちはだかったのだ。
それは、アリシア2234-HHCであった。
「!? 貴様あっっ!!」
サイボーグの男は、まるで瞬間湯沸かし器のように一瞬で感情を燃え上がらせた。何しろ、<ゲイツ>を殺害したのはアリシア2234-HHCの外見を持つメイトギアであったことを、逃げ帰ったゲリラ達の証言から知っていたからだ。
もっとも、その<証言>そのものも、あくまで人を通しての又聞きであったのだが。
しかし、その証言が正しいかどうかなど、サイボーグの男にとってはどうでもよかったのだった。
要するに、自身の感情の矛先さえ見付けられればそれでよかったのだ。
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