治安担当者とネットワーク担当者、対立する

サイボーグの男が警官を追い返した上に警察用メイトギア二機を破壊したことにより、遂に軍に応援要請が出された。とは言え、軍も市街地で大型火砲を用いた戦闘をするわけにもいかないので、テイザー銃やライアットガン、放水銃を装備した軍用レイバーギアを展開することになる。


だが、今度は、郊外にある、


<アメリカ軍ニューオクラホマ市駐屯所>


からさほど離れていない区域でも火柱が上がる。<人類の夜明け戦線R(リベンジ)>が仕掛けた発火装置だった。


いずれも<爆発物>や<爆薬>には当たらない薬品や物質同士を反応させて炎を上げるものであり、携帯端末に信号を送ることで発火させるというものだった。


このため、一つ一つの威力は大したことがないものの、近くに生身の人間がいれば少なからず負傷する程度のものではあるので、軍としても無視はできない。


「部隊をそちらに向かわせろ!」


と、まずは手近なところから対処することとなった。これも、<人類の夜明け戦線R(リベンジ)>の戦略なのだろう。わざと時間差で発火させて、対応を難しくしようとしているのだ。


ニューオクラホマ市の治安当局も、対応に追われた。


「テロリストは、ネットワークを通じて発火装置を作動させていると思われる! 全ネットワークの遮断が必要だ!」


と、通信事業者に要請しようとするものの、ネットワークを担当する部署からは、


「そんなことはできません! 金融、医療、その他重要なライフラインにどれほどの影響が出ると思うんですか!? この程度の<子供の悪戯>では済まない大変な被害が出ますよ!!」


反発を受ける。確かに、現在のネットワークは単なる<通信インフラ>にとどまらず、金融市場の根幹を為すシステムでもあり、離れた場所での手術など医療とも切っても切れないものであり、いわば火星の各都市そのものを生かす<中枢神経そのもの>とも言えるものであった。だからそれを遮断するということは、致命的なダメージを与えるに等しい話なのだ。


「では、どうしろと言うんだ!?」


そう詰め寄る治安担当者に対し、ネットワークの担当者は、


「とにかく、当該信号を発信する端末を個別に遮断します!」


AIを用いて、発火装置への信号と思われるものを発している端末を次々にネットワークから締め出していく。


ただ、この方法では、よく似た信号を発信している端末まで締め出してしまうので、


「おえ? なんだ? 繋がらない?」


「なんでござるか!? ラグでござるか!?」


「ちょっと、勘弁してよ~」


と、まったく無関係な使用者の端末がネットワークに繋がらなくなるという事態も発生したのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る