岩丸ゆかり、言われたとおりに助けを待つ
とは言え、本来の<アリシア2234-HHC>はあくまで標準仕様機なので、ここまで見せたような芸当は、さすがにできない。間違いなく、
<アリシア2234-HHCの外見を持つ要人警護仕様機>
であった。
が、岩丸ゆかりは、『アリシア2234-HHCという機種が存在する』ことは知っていても、そこまでは詳しくない。
なのでその辺りは疑問にも思わず、言われたとおりにビルの屋上で伏せて助けを待った。
一方、彼女を<人類の夜明け戦線R(リベンジ)>のアジトから救い出した<アリシア2234-HHCの外見を持つ要人警護仕様機>は、ビルの屋上から身を躍らせた直後に姿が見えなくなった。それこそ幻のように。
この時、別の場所では、<人類の夜明け戦線R(リベンジ)>のアジトを目指していたパトカーの前に一人の巨漢の男が立ちはだかり、急停車したパトカーのボンネットに拳を叩きつけて破壊した。あのサイボーグの男であった。
「本部! こちらPC202! 容疑者の仲間と思しきサイボーグと遭遇! PCが破壊された! 至急応援を乞う!!」
警官が通信で本部に連絡を入れる。
と同時に、パトカーに乗り込んでいた警察用のメイトギア(男性型)が危機対応モードに移行、対処に当たる。
かつて、戦闘モードに入った<アリシア2234-LMN-UNIQUE000>(当時は単にアリシア2234-LMNの一機だったが)が、違法改造されたサイボーグを圧倒してみせたものの、あちらは<戦闘モード>を起動していた上に、<CSK-305>という、純粋に戦闘目的で作られたランドギアが有していた戦闘データをコピーした状態だったことによるもので(無論、それを活かせるだけの高い潜在能力があってのことだが)、警察用のメイトギアは、そこまでの戦闘力は与えられていない。基本的には、容疑者をなるべく傷付けずに制圧することが第一義だからというのもあるからだ。
なにより、都市としての
『人間の警官の盾となること』
『人間の警官のサポート』
であって、容疑者の制圧はその『ついで』なのだ。ゆえに<戦闘モード>は持たない。これは火星の他の都市でもおおむね共通している運用方法である。
だから、非常事態が想定される場合には、最初から軍用の戦闘用レイバーギアや同じく戦闘用メイトギア、さらにはアームドエージェントが配置されることも多い。
今回はまだ警察で対応している状態だが、さらに状況が深刻であると判断された場合には軍が対応することになるだろう。
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