捜査に当たった警官、嘲笑う

こうしてアリシアが散歩に出た頃、<メイトギアショー>の会場では、ロボットを総動員し、くまなく爆発物等の捜索を行っていた。


『こちらSE885、不審物を発見』


『こちらEW235、不審物を発見』


これにより、ゴミ箱に捨てられた菓子の箱に隠されたC-7爆薬がいくつも見付かったものの、ゴミ箱のゴミは必ず回収する上に開場前でも改めて確認するため、およそ成功するような手口ではなかった。


しかも、使われているC-7の量があまりにも少なくて、これでは精々ゴミ箱が破裂して中のゴミを散乱させる程度の威力しか望めない。本当に、<爆竹>一つ分程度の量なのだ。それでも、C-7爆薬の威力があればこそ、一発でゴミ箱を破裂させる程度のことはできるが。


一方、自動車が爆発した方では、C-7爆薬の他にも、アルミ粉末が封入された箱とペットボトルが一緒に設置されていたと見られ、C-7爆薬の量が少ないのを補うためにいわゆる<テルミット反応>および<水蒸気爆発>を利用して爆発力を上げようとしたと推測された。


つまり、


『入手できたC-7の量がそもそも少なく、それを着火剤代わりにして、科学の知識さえあれば小学生でも作れる程度の<爆弾>でテロを行おうとしていた』


と推測できるのである。


これは何より、<人類の夜明け戦線R(リベンジ)>のテロ組織としての能力を表すものと考えて差し支えないだろう。


なので、捜査に当たった警官達には、


「ガキの悪戯じゃねえか」


「やれやれ、落ちぶれたテロリストってのは本当に哀れだな」


と嘲笑われる始末だったという。


が、いくら大した威力はなくても、至近距離で爆発すれば生身の人間ならば怪我をする可能性は十分にあるので、徹底した対処が行われる。


あと、使われているC-7の量があまりに少なすぎるということは、それを感知する警備ロボットにも捉えられにくいという面も実はあった。事実、警備ロボットは自動車に仕掛けられていた<爆弾>を察知できなかったのだ。C-7の他には、アルミの粉末が封入された箱と水が入ったペットボトルがあるだけだったので、<爆発物>としては検出できないのである。


また、C-7の発火に利用された<雷管>自体も、知識のある者が自分で工作したと思しきものだったと見られ、一般的にテロなどに用いられる種類の<時限式雷管>や<無線式雷管>が発する種類の微弱な信号を探知するロボットのセンサーにも引っかからないものであった。


なので、とにかく人海戦術よろしく、会場の隅々まで多数のロボットで検索する必要があったのだった。


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