千堂アリシア、なんとなく察する
こうして、ジョン・
とは言え、これといった収穫もない。ジョン・
ただ、クローゼットの中に、猫用の缶詰が一ダース入る空箱が残されていたので、そうやってまとめ買いしてナニーニに与えていたのだろうというのは窺えた。
そして同時に、その箱には、手書きで乱雑に、
『ナニーニ』
『コデット』
とだけ小さく書かれていた。
それを見付けた刑事が、
「これは……?」
と呟いた時に、その文字を見たアリシアが、思わず、
「ゲームのキャラクターの名前に同じものがあります」
と口にしてしまったので、
「ああ……」
刑事が明らかにがっかりしたように声を漏らした。『何かの暗号かもしれない』と思ったようだ。
けれど、アリシアはそれを見て、なんとなく察してしまった。
『ここにいたジョン・
無論、それは、何の根拠もない、<推測>と呼ぶにも程遠い、<憶測><想像><妄想>の類でしかなかったものの、アリシアにとってはそう考えると納得ができてしまった。
それが事実かどうかはともかくとして、後の聞き込みで、この部屋の住人が、窓から、
「ナニーニ!」
と声を上げて猫を呼んでいた姿が目撃されていたことが分かった。ただし、その時の風貌は、指名手配の写真とは似ても似つかない、スキンヘッドでいくつものピアスを付けた、やや強面のそれだったらしいが。
<変装>なのか、事件を起こしたことで何かが吹っ切れてしまったのかは分からないものの、これにより、周辺の住人にも<ジョン・
かように、目立った成果はなかったものの、警察としては、
<『ナニーニ』『コデット』と記された空き箱>
が本当に他に何か意味を持つものではないかどうかを確認するために、証拠品として押収することにしたのだった。
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