千堂アリシア、本来の目的を果たす

なお、コデットらが駆けていく際、


「ところで、あれ、誰?」


かほりがそう問い掛けると、


「ロボット探偵さん。一緒にナニーニ探してもらってたんだ」


コデットが応え、さらに結愛ゆなが、


「ナニーニだったら、朝、うちでゴハン食べてったよ」


と応えるという、会話が届いてきた。


『ああ…それならもう、安心ですね』


もし、このまま、ナニーニの捜索が終了したとしても、そんなに問題にならないと思われる。


とはいえ、もし、コデットが続けたいと言うのであれば、もちろんアリシアは協力するものの、取り敢えず今は、二時間弱の時間が空いてしまったので、先に、本来の目的を果たすことにした。


<火星京極通り>にあるというスーパー、<SHOP西條>へ向い、タブレットを購入するのだ。


目的のスーパーは、歩いても十五分程度の距離だった。それを、アリシアは、街の様子も堪能しながら、歩いて向かった。


バス通りであってもそれほど人通りがなかったのが、<火星京極通り>へと近付くにつれ人の姿が増え、賑わい始める。


<火星京極通り>は、様々な専門店が数多く建ち並ぶ、<カルチャーの発信拠点>という形で、地元の人間のみならず、<都市としてのJAPAN-2ジャパンセカンド>はおろか、火星全土から多くの観光客が集まる場所でもあった。ゆえに、この周辺では、さすがにライフラインの更新も進み、ほぼ最新のものとなっている。


しかし、だからこそ逆に、<火星京極通り>の周辺以外のいわゆる<住宅街>においては、昔ながらの暮らしを望む住人も多く、結果として、設備の更新も進まないという状況も生み出しているのだが。


さりとて、今のアリシアには関係ない話なので、大変な賑わいを見せる<火星京極通り>へと到着すると、人の流れに紛れ、今度は、<SHOP西條>を目指す。


<SHOP西條>は、<火星京極通り>が誕生した当初から店を構える、個人経営のそれとしては異例とも言える規模を持つものだった。


基本的な業態としては、生鮮食品を主とした<スーパー>であるものの、実際には<小規模な百貨店>と言ってもいいほどに多種多様な商品を扱う店舗であり、人によっては、


<生鮮食品も扱っている家電量販店>


と思っている者もいるという。


大きな看板を掲げたそれは、地図などなくとも、<火星京極通り>さえ分かれば、誰でも難なく辿り着けるようなものであった。


こうしてアリシアは、<SHOP西條>にて、ロブソン社製のタブレット<TE507SU>とその周辺機器を、購入資金として三百火星$マーズドル分の電子マネーが入った専用のカードを使い、購入したのだった。


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