千堂アリシア、効率的でないからこそ得られる喜びを想う
<都市としての
もっとも、それは開発初期の段階の話であり、現在では基本的に改善され、このようなことは生じなくなっている。
ただ、自分達が開発した地域についてはいまだにそれぞれが権利を有し独自路線を貫くことを望んでいるため、結果として更新が進まない状態が続いているということだ。
なお、それらの企業や各種団体の多くは、地球の有力者との太いパイプを持っていたりするため、強引に従わせることも叶わない。
火星での三度の<世界大戦>においても、<都市としての
とは言え、地元に暮らす者達は独自の地図を用いているし、なにより慣れているので何も困らないそうだ。それどころか、自分達とは考えを異にする<余所者>が無闇に入り込んでくることを阻害しているという面もあって、積極的にそのことを利用しようとしている節さえあるとも。
『つくづく、人間というのは不思議な生き物ですね。非効率的であることを意図的に選び取ることもある』
ロボットであるがゆえに効率を優先する傾向があるアリシアは、つい、そんなことを考えてしまう。しまうけれども、
『今や私もそれと大差ないですか……』
やや自嘲的にそんなことを考え、笑みを浮かべてしまった。
確かにこれまでにも何度も非効率的な選択をしてきた自分が<効率>を語るというのもおかしな話だとアリシアは結論付けた。
『効率的でないからこそ得られる喜びというものもありますしね……』
とも思う。事実、<効率>を考えるならロボットである彼女が人間である千堂を愛するというのも無意味な話だ。その<想い>を今の社会で認めてもらおうとすればどれほどの手間と労力が費やされるか。非効率的極まりない。
そうだ。そういうことだ。
だからアリシアも、非効率的で迷路のような道が複雑に絡み合うこの街を否定する気にはなれなかった。一応、千堂から<紙に描かれた地図>ももらっている。余所者を寄せ付けないために、正確なデジタルデータは公開されていないのだ。勝手に公開する者がいれば、<個人情報保護>を理由に即時削除させるという徹底ぶりなのだった。
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