勇者アリシア、ゴーレムと対峙する

初期状態でも非常に強力な能力を持つ<主人公キャラクター>ではあるものの、さすがにこのサイズのゴーレムが思い切り振り下ろした拳をそのまま受け止めるというのは、普通ではできない芸当だった。


躱すだけなら余裕なのだが。


この辺りは、プレイヤー自身の能力も加味されるからこそのものだった。


現在、<ORE-TUEEE!>にアクセスしているアリシア2234-HHCは、一般仕様のメイトギアなので、要人警護仕様のそれに比べれば比較することさえ無意味なほどにパワーに差があるものの、一般仕様であってもメイトギアは介護のために百二十キロの人間を軽々と抱え上げられる程度のパワーは備えている。


なので、それが反映されているということだ。


「なんだと……っ!?」


さすがのラウルでさえ、これには驚愕していた。


肉体強化系の魔術を使ってもこれだけのものはそうそう見られないがゆえに。


しかもアリシアは、ひらりと体を翻して落ちていた剣を拾い、再び拳を叩きつけてきたゴーレムのそれを躱して、逆に剣を腕に叩きつけた。


バキン!と音を立てて剣が一撃で折れたものの、同時に、ゴーレムの腕も砕け散り、数百キロはあるであろうそれが、ゴゴン!と地響きを立てながら地面に落ちて、元の破片へと戻る。


斬撃の威力もさることながら、同時に、抗魔術も発動させて、ゴーレムの体を作り上げていた魔術を無効化したのだ。


しかし、ゴーレムを運用するには、魔術を掛け続けなければいけない。その中で一時、魔術を無効化されたとしても、掛け続けていることですぐさま復帰する。


事実、この時のゴーレムの腕も、見る間に形を取り戻して復元された。


が、『魔術を掛け続ける』ということは魔術師にかかる負担も大変なものになるわけで、さすがのラウルも疲労の色が見え始めていた。


にも拘らず彼は、さらに魔術を発動させた。


ゴーレムの体から、無数の石礫がアリシア目掛けて猛スピードで飛ぶ。


本当にとんでもない連続攻撃である。


とは言え、ラウルとしても、ゴーレムによる一撃で終わらせるつもりだった。終わらせられるはずだった。


なのに……


「バケモノめ!」


思わずそう口にしたのも、無理はないのかもしれない。




なお、ゴーレムについては、一度魔術を発動させるだけで一定期間、改めて魔術を発動させなくても維持することもできるものの、そうするには事前の準備が必須だったために、いかなラウルでもそこまでの準備はできていなかった。


一方、アリシアの方は、自身に迫る無数の石礫に対し、


固き拒絶ズィム=ニー!!』


魔術の障壁を展開、完全に防いでみせたのだった。


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