勇者アリシア、育児シミュレーションを堪能したい
と、コデットの育児シミュレーションも堪能したかったが、今はそれどころじゃないので、信頼度については必要最低限を保ちつつ先に進める。
ボーマの街に到着しても、ナニーニとコデットはぶつかり合っていた。コデットの態度が改まらないからだ。
「アリシア様! こいつ、全然反省なんてしてませんよ!」
そう不満をブチ撒けるナニーニに、アリシアは、
「そうかもしれませんね。でも、それは私の監督不行き届きなだけです。彼女には責任はありません」
と微笑むだけだった。
けれどナニーニはそれでは納得できない。
「そんなわけ……!」
と言い掛けて、さすがに自分が失礼なことをしていることに気付いて唇を噛んだ。
するとアリシアは、
「じゃあ、気晴らしに剣の稽古でもしますか?」
と声を掛ける。
「え…あ、はい!」
こうして、ナニーニに稽古をつける毎日が続いた。
けれどその一方で、コデットの方も、信頼度が低いと先にも言ったように何度も所持金を持ち逃げしたり、スティールを悪用して盗みを働こうとするのだが、アリシアはその度にコデットの先回りをして決定的な<悪さ>を封じただけだった。
怒鳴らず、叩かず、淡々と。
自分の方が何枚も上手であることを彼女に分からせるために。
本当は、もっと丁寧に接することで急激に信頼度を上げることもできるものの、今はとにかく進行を優先する。
なお、ここまでで現実世界では八時間が経過していた。
「アリシアくん、人間のスタッフの方はこれ以上の勤務はさせられないので、今日のところはこれくらいにしておこう」
「はい、分かりました。お疲れ様でした」
そう応えるものの、アリシアは、アリシア2234-HHC側と<ORE-TUEEE!>のリンクが切れないので、このままプレイを続行する。
「一応、当直のスタッフもいるので、何か問題があれば連絡が入ることになっている。明日以降については、こちらも体制を整えて、二十四時間、万全の状態でモニターすることを約束しよう。
今夜のところは、ストーリーを進行させなければ何をしてもらってても構わない。まあ、多少なら進めても構わないが、先程セーブした部分からやり直すことになるのは承知しておいてくれ」
「はい、承知しています」
淡々と応えるだけだった。
一方、<千堂アリシア(アリシア2234-LMN-UNIQUE000)>の方も、メイトギア課での仕事を終え、アリシア2234-HHCとのリンクはそのままにして
その途中の自動車の中で、これまでの経緯を説明。
「やはり、アリシア2234-HHCを間に立てたのは正解だったか」
と、彼を唸らせたのだった。
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