コデット、好きに注文する
こうして正式にコデットの身元引受人となったアリシアは、彼女とナニーニを伴って宿屋へと向かった。そこは食堂も兼ねた、と言うか、<宿屋を兼ねた食堂>という形の施設だった。
なので、食堂の方でまずは夕食にする。
「何でも好きなものを頼んでいいですよ」
アリシアが言うと、コデットは、
「ホントに何でもいいんだな!?」
念を押してくる。
「はい、何でも構いません」
アリシアが返した途端に、
「じゃあ、この店で一番高いのから順番に持ってこい!」
給仕の女性に命じた。
「アリシア様……! いいんですか? こんな……!」
ナニーニは慌てるが、アリシアは笑顔で、
「資金は十分にあります。問題ありません」
と応えた。
「でも、だからって……」
ナニーニは、凡庸かつ真面目にそれまでの人生を送ってきただけに、子供とはいえ<盗賊の一味>がこうして大きな態度を取っていることが許せなかった。
アリシアはナニーニがそのように考えていることは察している。現実の世界でもよく聞かれる意見であるがゆえに。
けれど、メイトギアであり人間に関する様々なデータに簡単に触れることができるアリシアには、苛烈な環境に育った子供が<普通>に生きられる事例には相応の理由があることが理解できてしまう。
よく、
『虐待された子供が全員、犯罪者になるわけじゃない』
的なことが言われるが、それが回避されるだけの要因が、<犯罪に走らなかった事例>にはあるというだけなのが実情である。逆なのだ。
ゆえに、<回避される要因>がない環境であれば、それこそ犯罪集団の中などで育てば、<他の生き方>などそもそも選べない。
それで子供に<責任>を問うのは、あまりにアンフェアではないか?
だからこそ、しっかりした身元引受人がおり、更生を約束すれば刑の執行が猶予されるのである。
とは言え、更生が果たせず再び罪を犯す者が少なからずいることもまた事実。
その一方、実は、コデットについては、<育児シミュレーション>要素も盛り込まれている。物語の本筋には直接関係ないものの、信頼度のパラメータが高ければ高いほど彼女の基本ステータスも高くなり、ある水準を超えると<
もっとも、<ある条件をクリアすると解放される別シナリオ>についてはパーティメンバー全員に用意されており、コデットに限ったことではないが。
それは当然、ナニーニも同じ。ちなみに彼女の場合は、雑魚敵を五十体倒した上で中ボスのとどめを彼女で行うと、専用シナリオが解放される。
ただ残念ながらコデットのシナリオのプレイ率が三十パーセントを超えているのに対し、ナニーニは自身の人気のなさが影響してか、十五パーセント以下にとどまっているという……
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