勇者アリシア、ちやほやされる
ファリ=ファールが寂しそうだったということで寂しそうな表情になったリティーレに、
「優しいですね」
とアリシアは声を掛けていた。
するとリティーレは、
「えへへ♡」
と照れくさそうに
とは言え、彼女はAIが演じているキャラクター。感情のように見えるものもすべてが<演出>だ。アリシアに名前を尋ねた村人は実に簡易なキャラクターだったのに比べてリティーレは序盤にプレイヤーのモチベーションを上げるために用意されたキャラクターでもあるので、かなりのリソースが割かれていた。
ちなみに、この種のVRアトラクションを制御するAIは、アリシアのようなロボットに搭載されているものに比べて性能としては数倍のものであったりする。
が、基本的には自分の機体だけを制御していればいいロボット用のAIと違い、多数のキャラクター及び舞台そのものを制御しなければならないため、キャラクターの重要度に合わせて割かれるリソースも差があるのが普通であった。
それでも、キャラクターの数が多いので、それぞれの<性格>等の作り込みはメイトギアほどではない。
メイトギアには感情はないものの、人間の傍で人間に仕えるためには非常に繊細な制御が必要なので、限られたシーンで決められたことを言えばいいだけのアトラクション内のキャラクターよりは高度な制御が行われているのは事実である。
とは言え、リティーレのキャラクターはとても愛らしく、よくできているといえるだろう。
ついつい情が移ってしまう程度には。
その後、睡眠についてはスキップして、翌朝、ファリ=ファールについて情報を集めるため、村を探索する。
もちろん、集めるまでもなく情報は持っているものの、いくつか立てておかないと次に進めないフラグがあるため、分かっていても村人に訊いて回る。
が、魔獣を倒した<勇者様>のことは知れ渡っており、行く先々で賞賛を浴び、人々は跪いた。
さりとて、<ORE-TUEEE!>は、とにかくこうやってちやほやされることを楽しむアトラクション。大袈裟だという印象もありつつ、『そういうもの』として素直に楽しむのがコツなのだろう。
それが自分に合わないと思うのなら、他のアトラクションを選べばいい。そもそも、用意されるアトラクションがすべて自分の好みに合わせたものであるべきと考えるのは、傲慢が過ぎないか?
とは、この時はアリシアもそこまで考えてはいなかったものの、自分の好みに合わないアトラクションに対してひたすら難癖を付ける者達を見ていると、悲しくなってしまうのも事実なのだった。
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