ロボット探査艇、翻弄される
<カルキノス02>を
<コンクィジータ社>
の、オーナー兼オペレーターのディミトリス・メルクーリだった。
職業ダイバーでもあり、単に筋肉質なだけではない、筋力とスタミナを同時に備えているであろうと推測できる、程よく脂肪も乗った肉体も持つその男は、ここまでクグリの捜索にも何度も参加した人物でもある。
いかにもラテン系のノリのいい陽気さを前面に押し出しつつ、一方で、その目は常に眼前の状況を油断なく見通そうとする抜け目ない一面も覗かせていた彼に、千堂も、
「協力感謝する」
とがっしりと握手を交わした。
こうして、改めて<カルキノス02>と
同時に、軍は改めてロボット探査艇を目的の海域に接近させた。
しかしやはりその海域は、<激流>と表現するしかない潮の流れがあり、全長八メートル、全幅五メートル、総重量十トンを超え、非常に高性能なジャイロセンサーと姿勢制御システムを備えたロボット探査艇でさえ木の葉のように翻弄される。
本来ならば、多少の波では確実に水平を保ち、『嵐の中でもコップに満たされた水さえこぼさない』といわれるそれでさえこの有様である。
<激流下り>といったアクティビティならば為す術なく流されることそのものを楽しめばいいのだろうが、調査や探査といったものではそういうわけにはいかない。
海底の地形、水温の違い、元々の潮流、その他諸々の条件が複雑に絡み合いこのような常軌を逸した潮流が発生している。
かつては海底の地形を整備することで和らげようという計画が持ち上がったこともあったものの、潮力発電所が建設されそれが非常に高い効率を発揮している事実から現在ではそちらが優先されているという形だった。
ロボット探査艇を可能な限り接近させ、そこから小型ロボット探査機(プローブ)を放つ。
が、重量五十キロを超える、プローブとしては比較的大型に当たるものでさえ、姿勢制御すらままならなかった。
単体ではただ流されるだけなのでロボット探査艇とワイヤーで繋ぎ徐々に接近するものの、遺体が発見された周囲に来るとそれこそ流れが複雑になって機体がぐるぐると激しく回転してしまう。
すると、ワイヤーが捻られて破断。一機が流され、漁礁に衝突。全機能停止と共に流されていったのだった。
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